生徒会長選挙編13-5
今回の話は百瀬心視点になります。
入学式から2週間が経ち、休み時間になると徐々に決まったグループで昼御飯を食べるような雰囲気になっている。
どこのグループも話している内容はだいたい同じ。話題のほとんどが生徒会選挙とミスコンのことだ。
選挙の話は役に立つ情報もあるので聞き耳を立てているが、ミスコンの話題はノイズでしかない。
ある程度静かにご飯を食べたい私にとってはいい迷惑である。
「恭ちゃんとここちゃんは相変わらずテンション低いね」
「いや、そんなことないよ」
「安西がうるさいだけ」
「そうかな?」
宮森恭歌とは出席番号が近いおかげで教室の席や体育の準備体操などて一緒になることが多く、自然とお昼ご飯を一緒に食べるくらいには仲良くなった。
宮森はややネガティブなところがあるが優しくて頭も良く、穏やかなので一緒にいて心地好い。
普段は宮森と二人で弁当を食べているが、今日は何故か安西湊もいる。
「他の人はミスコンの話で盛り上がってるんだからもっとテンション上げていこうよ」
「ミスコンなんてどうでもいい」
「一番可愛い人を決めるんだよ?なんで興味ないの?」
なんでと言われても興味が湧かないからとしか言いようがない。
「湊ちゃん、私は興味あるよ。2年は麗さんが取りそうだけど1年生は誰が取るんだろうね」
宮森は楽しそうにミスコンのことを話す。意外とこういうイベントが好きなのか。
「そりゃあ私でしょ!1位とるだけじゃなくてできるだけ票をとって神無ちゃんに勝たないとね」
なんでここで十川さんの名前が出てくるのだろう。ちょっとかまをかけて見ようかな。
「なんで十川さんに勝ちたいの?」
「ど、どうせだったら全学年で1位になりたいかなって」
二人の目がキョロキョロしている。目だけで何かがあると物語っている。
「隠さなくてもいいよ。十川さんと勝負してるんだもんね」
「「なんで知ってるの」」
「伊澤先輩に聞いたの」
「あっちゃー。なんで優くん言っちゃったんだろう。他の人にはだまっててね。神無ちゃんと優くんは学園の公認カップルみたいになってるからこんな賭けしているのがばれたらみんな神無ちゃんに入れちゃうから」
ミスコンの方でもそんなに面白いことになってるのか。
多分今の感じから推測すると安西が勝ったら別れるということだろう。
安西と十川さんが勝負するとしたら伊澤さんのことしかないと思っていたけど大正解だった。
「安西が負けた場合はどうなるの?」
「優くんに勉強を教えてもらえなくなる」
え、それだけ?一生伊澤さんに話しかけられないくらいの条件じゃないと賭けは成立しないと思うけど。
「どうやってそんな勝負を受けさせたの?」
「私の巧みな話術でかな」
安西はどや顔で自信満々に言ったが絶対嘘だ。
引っ掻けるのに自信がある私でもそんな馬鹿げた条件の勝負を受けさせることはできない。
「まあ十川さんからすれば2年連続取ってるし負けるはずが無いから受けたってことでしょ」
「そうかな?私は勝つ自信はあるよ。私の寮って結構人数多いから知り合いも増えてきてるし、放課後は色んな部活に道場破りみたいなことを仕掛けてるから顔は覚えて貰えてると思うよ」
「道場破り?」
「うん、とりあえず柔道、バド、卓球、テニスの部長には試合して勝ったよ」
「湊ちゃんってすごいんだね」
「でしょ?」
宮森は素直に感心してるけど、凄いどころの話ではない。安西って何者なのだろう。可愛くて、運動もできて誰とでも仲良くなれる。うるさいのと頭が悪そうなところ以外は完璧だ。
「安西がすごいのはわかったけどなんで部長を倒しまわってるの?」
「やっぱり知名度は必要かなって。インパクトは凄いでしょ!」
「相手からしたらインパクトどころか一生のトラウマになりそうだけどね」
「そんなことないよ。倒した部長さんとは仲良くなったし、部活にも勧誘されたよ」
「運動部ってそういうものなの?」
「うん、戦えばわかりあえるよ」
「いや、安西のコミュニケーション能力が異常なだけだと思う」
脳筋の考え方だが悪くは無い。
選挙やミスコンで一番必要なのは知名度だ。こういうイベントに興味の無い人は目立ってる人にとりあえず票を入れる傾向が強い。そこの票をとることができればかなり有利になれる。
「ミスコンまであと3週間あるしこの調子でいけば運動部は制覇できるよ!」
「普通は何ヵ月あってもできることじゃないんだけどね」
「問題は運動部以外の人だよね。二人とも頭良いんだし、何か案無い?」
さらっと難しいことを丸投げしてきた。そんな都合の良い方法があるなら選挙でも使えるし私が知りたいくらいだ。
「2、3年生の教室の前の廊下をバク転で駆け抜けるとか!」
「連バクはできるけど廊下は危ないよ。でも校門の前とかでやるならいいかもね!」
「宮森、安西には冗談通じないから」
「う、うん。しかもやろうと思えばできるんだね」
「ここちゃんは何か案無い?」
「そんな急に思い付くわけ無いでしょ…」
いや、ある。しかも私が得をできる方法が。
「安西、私の推薦人やってよ。目立てるし丁度いいんじゃない?」
安西は物怖じもしないから推薦人としてはかなり良いだろう。お互いの得になる。
「おーここちゃんは選挙出るんだね!もちろんいいよ!推薦人って何をすればいいの?」
「本番のスピーチだけしてくれればいいよ」
「本当はポスターとかも手伝ってほしいけど苦手そうだから頼まない」
「ここちゃんって私のことスポーツできるだけで他は全然駄目だと思ってるよね?」
「じゃあ中学の時の美術の成績は?」
「5段階中4」
「ほらどや顔で言うほどじゃないじゃん。宮森は?」
「4」
宮森は目線を背けて安西と同じ数字を口にする。
「ほら普通は4だとこのくらいの反応なの」
「えー4って結構いいと思うけど。じゃあここちゃんは?」
「5に決まってるでしょう」
「ぐっ、負けた」
そもそも私は体育以外は全て5なので負けるわけがない。
「でも、この学校の選挙ポスターってかなりレベル高いらしいから私一人でやるのもちょっとね」
他の人が話していた情報によると伊澤さんのポスターは十川さんが作った物でクオリティが凄かったらしい。
頑張って作れば一人だけ酷すぎて浮くということはなさそうだが、埋もれるのは間違いないだろう。
「まあその辺りもこれから聞きにいってこようかな」
こういうのはうまい人に聞くのが一番手っ取り早い。
「えっ、どこか行くの?」
「うん、三年生の教室」
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