球技大会編10-4
今日は球技大会の当日。
全校生徒が体育館に集まりステージに登壇している体育委員長に注目が集まる。
「今日は待ちに待った球技大会です。2年生はまだ修学旅行がありますが1年にとっては今期最後、3年生にとっては最後の学校行事となります。フェアプレーを心掛けて怪我だけはしないように気を付けてください。皆さん最高の思い出になるような球技大会にしましょう」
体育委員長により球技大会の開始の宣言がされた。
球技大会は体育委員が主導でやる行事だが、生徒会も無関係という訳にはいかないので準備や審判などのお手伝いをすることになっている。
僕の審判の担当は一試合目のバスケか。まあ最初に終わるのはその後が楽になるからいいかな。対戦の組み合わせは3-1と3-2の3年生対決か。
3-1の方には雪さんと神崎さんも参加しているみたいだ。
雪さんがいることもあり、観客が全校生徒の半分はいるんじゃないかと思えるくらいには多い。
誤審しないように気を付けないとな。
バスケの試合が始まるとそこは地獄絵図だった。まるで部活の大会かと思うくらいのガチっぷりでディフェンスのあたりも強くファールが頻発していた。
時間の都合で1クォーター8分で合計16分、ファール3つで退場のルールにしたが、本当に良かった。これでファール5つまでオッケーにしていたら怪我人が出ていたかもしれない。
経験者や運動神経が良くないと怪我をする可能性があるとは聞いていたけどここまでとは思っていなかった。
結局試合は3-2が勝利した。
「雪さん、神崎さんお疲れ様です」
「優も審判お疲れ様」
「いやー負けちゃったね」
「まあ相手が強すぎたって。元バスケ部が三人いるのは反則ね」
「私達は負けちゃったけど、優のところも強いんだから頑張って私達のかたきを打ってね」
「3-2とは決勝までいかないと当たらないんですけど」
「順当に行けば決勝まではいけるでしょ。ウィッグが外れない程度に頑張りなさい」
「そういえば今更だけど、何で地毛を伸ばさないで切ってるの?これくらいの髪の長さなら4月から伸ばしてればウィッグ無くてもいけたんじゃない?」
たしかにウィッグありでも肩までいかないくらいの髪の長さなので、もっともな意見だった。
「モデルの活動したり、神無の家に行く時に髪が長いと色々不便で」
神無の両親にはもうばれているが、神無のお祖父さんや他の使用人は僕が普段女の格好をしてることを知らないので神無の家に行くときは少しでも男っぽくしたほうがいいからね。まあ、髪が短い状態で尚且つ男の格好をしていても、神無の家の使用人に女友達だと間違えられたことがあったからかなりショックを受けたけど。
「あーなるほど。それは仕方がないね」
「優さん、次は私達の試合っすよ~」
「うん、今行くよ」
「呼ばれたので行ってきます」
「うん、頑張って」
「はい、頑張ります!」
「とりあえず初戦勝ちましょう!」
「うん、頑張ろう」
伊織ががパスを出し、五條さんが得点を決める。外した場合でも僕と三木さんがリバウンドをしてそのまま決める。この単純かつ強い動きが決まり40対16で圧勝した。
思った以上に強い。勝ちがほぼ確定してからも全員手を抜く素振りが全くなく油断すらもない。
試合が終わり近くにいた五條さんと谷村さんとハイタッチをする。
「優ちゃん、前から上手かったけどさらに上手くなったね!」
「ありがとう、伊織のおかげだよ」
「えへへ~、それほどでも~」
「これはまじで優勝行けるかも知れないっすね!この調子で全競技勝ちますよ!」
結局その後のフットサルは一回戦で負けてしまったがバレーとバスケは決勝まで行くことができた。
バスケの決勝は3年2組との対決か。
「これは厳しいね」
「あーさっき神崎さんに元バスケ部が三人いるって聞いたよ」
「うん。しかもバスケ部の元キャプテンと副キャプテンなの」
「いや、気合いがあれば勝てるっすよ」
審判をやったときからやけに上手いと思っていたけどキャプテンと副キャプテンがいたのか。
最初の予想通り、元バスケ部の三人はやはり上手く、前の試合で活躍していた五條さんが完全に止められている。
特に副キャプテンは175cmくらいあり、リバウンド争いになると僕でもかなり負けてしまっている。
最初は苦戦したが伊織が上手く試合をコントロールして、1Qの残り10秒、点差は2点ビハインドまで追い上げた。
24秒ギリギリになったので、伊織が3ポイントシュートを打ったが無理やりシュートを打ったせいで、外れてしまう。
このリバウンドは何としても取って同点に持ち込みたい。
「ぶちっ」
鈍い痛みが髪から頭に伝わってきたが、副キャプテンとのリバウンド争いにギリギリ勝ち、リバウンドを取りそのままタップシュートを決める。
なんとか同点に持ち込み、第1クォーターが終わった。
1Q終了のブザーが鳴り終わった後も観客がざわついている。
「ごめん。それ壊れた?」
「え?」
先程までリバウンド争いをしていた3年生が僕に謝りながら地面を指差す。
そこには僕がこの学校にいる間、一度も外すことの無かったウィッグが無惨にも落ちていた。
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