生徒会長編5-4
「神無、どこ行くの?」
「パソコン室」
「パソコンで作るの?でも僕そこまで得意じゃないんだけど」
ワードで文章を書くくらいならできるけどパワーポイントやイラストレーターなどはよくわからない。
「私がやる。優は見てて」
神無が自信満々に言っていたのでとりあえず任せることにした。
少しの間見ていると神無は普段見たこともないスピードで次々とポスターを作成していく。
普段はゆっくりしているけど、朝の準備が速かったり、こういう時は俊敏に動いたりするからギャップがすごいな。
僕が手伝う隙など全く無く、いつのまにかポスターが完成した。いや、そもそも手伝うと悪化しそうなので何もすることができなかった。
僕の作ろうとしていた小学生レベルのポスターとは比べるのも失礼なほどのポスターができていた。文字のフォントや見せ方、全体のレイアウトなどが素人から見てもきれいにできていて公約や名前が自然に目につく。
神無は30分くらいで作っていたがまじで仕事にできるレベルなんじゃないか。
「すごいね。神無ってこんな才能あったんだ」
「適当にやっただけ。他の人に見せるとパソコン部とか美術部に誘われるから、めんどくさくてあまりやらない」
たしかにこのレベルでできるならどこからも引っ張りだこだろう。
なるほど、だから二人でやりたかったのか。誰だ僕に気があるとか言ったやつ。
無論僕だった。
まあそうだよな。今の僕と神無は女の子同士だし。いや、男の状態の僕だとしても、こんな美少女に好意を抱かれるなんてことは無いだろう。
もう勘違いするのはやめよう。これ以上期待すると心が折れる。
何日か経ち廊下にポスターが張り出される。
生徒会長に立候補する全員が出揃っているようだ。
やはり生徒会長の見立てどおり今回も10人いた。
ポスターはどれも完成度が高く、それぞれの良さがわかるようなデキになっていた。
しかし、その中でも僕のポスターもとい神無が作ったポスターは群を抜いていた。
本当に神無がやってくれて良かった。僕が書いていたら別の意味で目立っていたのは必然だっただろう。
僕のセンスでポスターを書いていたら生徒会長からの呼び出しは避けられなかっただろう。
神無にはお礼としてコンビニでチョコでも買ってあげよう。
僕が廊下でポスターを見てると生徒会長が遠くから手招きしているのが見えた。
そういえば、生徒会長には神無に頼むときに助けてもらったお礼をまだしていない。まずはそのお礼をしてからポスターの感想でも聞こう。
「僕が言う前に神無に頼んでくれてありがとうございました」
「ええ、頼んで良かったでしょう。やっぱり彼女はこういうセンスが良いわね」
「ええ、プロ並みですよね。神無があんなに上手いの初めて知りました」
「プロ並みって彼女はれっきとしたプロよ」
「え?」
「私の配信のサムネも作ってもらっているし、私の知り合いのvtuberも何人か彼女に依頼しているのよ。もちろん私も他のvtuberもお金は払っているしプロと言って、何の差し支えもないわ」
そんな人に学校の選挙のポスターをタダで書いてもらっていたのか。
今日の放課後にケーキ屋でも行って高いチョコケーキでも買いにいこうかな。
「そういえば、なんで僕を呼んだんですか?」
呼ばれていたのに先に僕から話してしまったので、まだ生徒会長の用件を聞いてなかった。
「そうそう、忘れてたわ。GW明けに放送演説と選挙があるけど大丈夫なの?」
「練習はしているんですけど、あまり自信はないです」
「じゃあGWに合宿しましょう。まあ、合宿といっても寮でひたすら練習するだけだけどね」
「合宿は僕と生徒会長と神無でやるんですか」
「いいえ、十川さんはやらないわ。GWは実家に帰るみたい」
「そうなんですか、よく神無の予定を知ってましたね」
「ええ、仕事の依頼をしたんだけどGWは実家に帰るからって断られちゃってね」
「なるほど」
「だから、みっちり1対1で指導してあげるわ」
顔は笑っているのに目が笑っていない。これは頑張らないと死ぬかもしれない…
「噛みすぎ、話しのテンポが悪い、もう一回さっきのところからやるよ」
今日はGWが終わる2日前だ。GW最終日はともかく今日は学生が遊んだり、普段長期連休の取れない社会人が家族サービスをする日のはずだ。
こんな、地獄であるはずがない。
「生徒会長、ちょっと休ませてくださいよ」
ガラガラ声で僕は言うが全く聞き耳を持たない。
「大丈夫よ、1日あれば声は治るから放送演説に影響はないわ」
「そういう意味じゃないんですけど」
もうかれこれ8時間ほどぶっとうしで練習をしている。彼女は僕との練習の前に配信をしていたし、僕の練習を見ながら神無に依頼する予定だったサムネ作りもやっている。
体力は僕もあるほうだと思っていたけど、彼女の体力は僕とはレベルが違う。
「まあ、少しはましになったし、しばらく休憩にしましょう」
そういうと、彼女はサムネ作りの作業に戻った。
「生徒会長は休憩しないんですか」
「ええ、明日配信する分のものが終わってないからね」
「十川さんと違って私にはセンスがないから時間かけてでも納得できるものを作らないとね」
やっぱりすごいなこの人は。僕から見たら今作っているものはもう完成品として出してもいいくらいの物に見える。ここで満足しないでより良いものを作ろうとしているところにプロ意識を感じる。
僕も負けないように頑張らないとな。というかこんな忙しいのに手伝ってくれた生徒会長のためにも休んでる訳にはいかない。
その後、すぐに休憩するのをやめて僕は演説の練習、生徒会長はサムネ作りを延々とした。
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