海桜に雪芒と
藤泉都理
一巻 天と地のせいめい編
天と地のせいめい 一
見ていたい。
幸せになってほしい。
幸せにしたい。
何時かこの想いを言葉にして届けられる日が来るのだろうか。
『
かたり、かたります。
疫病、食糧難、異常気象、戦争、虫や動物の暴走、原因不明のナニカ。
一つの災厄が新たな災厄を呼び、時には総てを引き起こす。
そうして或る一つの大陸中に災厄が広まって数年経った或る日。
数十ある小国の内の一つ『扇晶国』の国王。
神の加護を受けた扇で以てして、数か月で災厄を薙ぎ払う。
それでも、痛ましい現実が各々を蝕む中、奮起した八ヶ国の小国、加護と幸福を受けんと国王に跪く。
どうか、私たちの国をあなたの国と統合させて下さい、と。
こうして小国九ヶ国が集まって、今の『扇晶国』となった。
小国九ヶ国は『扇晶国』に統合された後、それぞれの国名を『道名』と改め、昔の境界線をそのままにそれぞれの王族が統治しており、統合する以前、小国だった頃の『扇晶国』の領土が王都と決められた。
むかしむかしのおはなし。
いいや、昔語りとするにはまだそう時間は経っていないとか。仔細を知る者が少なくなっただけだとか。傷はまだ癒えていないとか。そう口にする者も少なからずいる時代に入った
そうそう。『扇晶国』の国民たちは生まれた時に白い扇を我が子に贈るそうだよ。
災厄除去と幸福招来の願いを込めて。
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