第24話 国境付近の問題

 私とリンドラ様は、今日も執務室で仕事をしていた。


「む?」

「あら?」


 そんな時、執務室の戸が叩かれた。

 誰か来たようだ。


「開いている。入ってくれ」

「失礼します」


 リンドラ様が合図を出すと、戸が開かれた。

 その後、メイドのラルリアさんが執務室に入って来る。


「ラルリアか、何かあったのか?」

「はい。バルデス王国から緊急の知らせがありました」

「緊急の知らせ……?」


 ラルリアさんから放たれた言葉に、私もリンドラ様も驚いた。

 どうやら、隣国のバルデス王国で何か知らせがあったらしい。


「一体、どのような知らせだ?」

「殺人を起こした犯罪者が、国境付近に逃げたらしいのです。その犯罪者を探すために、協力して欲しいとの要請があったそうです」

「なるほど……そういうことか」


 バルデス王国からの知らせは、そのようなものだった。

 犯罪者が逃げたため、協力を要請してきたのだ。

 国同士の争いのようなことでなかったことはよかったが、犯罪者の存在は恐ろしいものである。


「わかった。その要請には応えよう。書類は改めて送ってもらえるな」

「はい。早急に判断が必要なため、伝えて欲しいということでしたので、正式な申請などは後になると思います」

「ここで、協力を惜しめば、市民に大きな不安を与えることになる。ここは私の責任で、要請を受け入れよう。国境付近の兵士達には、そのように返してくれ」

「わかりました。それでは、私は失礼します」

「ああ、頼むぞ」


 リンドラ様の言葉で、ラルリアさんは執務室から出ていった。

 恐らく、話しを通しに行ったのだろう。


「なんだか、大変なことになっていますね……」

「ええ、そのようですね。ですが、大丈夫です。国境付近の兵士達は優秀です。きっと、すぐに犯罪者を見つけるでしょう」

「そうですよね……」


 私はかなり焦っているが、リンドラ様は冷静だった。

 このような問題にも、慣れているのだろう。


「国同士の問題は、国境では多いのですか?」

「ええ、まあ、国境付近は色々と起こりやすいですね。その判断は、私に一任されていますが色々と大変ですよ」


 私の質問に、リンドラ様はそう答えてくれた。

 冷静そうに見えるが、大変なのは大変らしい。

 国境付近の問題は、中々繊細だ。そのため、かなり神経を使うだろう。

 そんな仕事をしていて、平気な訳はないのだ。冷静に見えるのは、他者に不安を与えないためなのだろう。

 私は、そんなリンドラ様を支えられるようにならなければいけないのだ。

 そんな風に考えながら、私は仕事を続けるのだった。

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