第8話 辺境伯の仕事
私がレインズス家に来て、数日が経っていた。
私も、少しだけここでの生活に慣れてきているはずだ。
「サフィナ様、おはようございます」
「おはようございます、リンドラ様」
リンドラ様の執務室まで来て、私は挨拶をする。
私の仕事は、主にリンドラ様の補助なので、ここに来ることになっているのだ。
「それでは、今日も仕事を始めていきましょうか」
「はい」
私は自分の机につき、目の前の書類を見た。
今日も、結構な量の書類が並んでいる。この書類の整備が、領主の仕事の基本だ。
ここには、色々な書類がある。領民からの要望や、資金をどう扱うかなど様々だ。
それらを的確に捌いていくことが、領主には必要なのである。
こうして、私の一日が始まるのだった。
◇◇◇
仕事を始めてから、しばらく経った頃、リンドラ様の手がゆっくりと止まった。
「少し、休憩にしましょうか?」
「あ、はい」
それは、休憩の合図だ。時間的にも、そろそろだと思っていた。
という訳で、私も手を止める。それなりに疲れているので、とりあえず伸びをしておく。
「疲れていますか?」
「え? あ、はい……まあ、それなりに……」
その様子に、リンドラ様が質問してきた。
そのことに、私は少し恥ずかしくなる。
目の前にいるのは、婚約者だ。そんな彼に、少しみっともない姿を見せてしまったかもしれない。
「慣れない土地での仕事ですから、疲れもありますよね? 体調を崩したりしていませんか?」
「あ、はい。大丈夫です」
そんな私に、リンドラ様はそう言ってきた。
かなり私のことを心配してくれているようだ。
リンドラ様は、とても優しい人である。私のことをいつも気遣ってくれて、とてもよくしてくれるのだ。
「リンドラ様は、本当に優しい方ですね?」
「そ、そうでしょうか?」
「はい、そうだと思います」
私がそう言うと、リンドラ様は少し顔を赤くする。
やはり、リンドラ様は褒められるのが少し苦手なようだ。
そういう所も、なんだか可愛く思えてくる。
決められた婚約だが、この人が婚約者でよかった。私は、だんだんとそう思い始めている。
「……もし、私が優しいと思えるなら、それはあなたのご両親のおかげだと思います」
「私の両親ですか?」
「ええ、私は二人から色々と学んできました。だから、私の根本にあるのはあの二人なのです」
「そうなんですか……」
リンドラ様の根本には、私の両親がいるらしい。
恐らく、助けてもらった際に、色々と見てきたのだろう。
だが、リンドラ様本人が優しくなければ、本当に優しくはなれないはずだ。ただ、それを言っても、リンドラ様は認めないのだろう。
そんな話をしながら、私達は休憩するのだった。
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