第5話 長旅の疲れ

 私はリンドラ様との話を終えて、自室に来ていた。

 リンドラ様は、中々いい部屋を用意してくれていた。ここが、今日から私の部屋になるのだ。


「ふう……」


 私は、ベッドの上で目を瞑っていた。とりあえず、休憩しているのだ。

 この屋敷に来るまで、私はそれなりに長い距離を旅してきた。その疲れが、少し出てきたのである。


「でも、駄目よね……」


 しかし、まだ完全に眠る訳にはいかない。時間的には、まだ昼過ぎなのだ。そのような時間から寝ていては駄目だろう。

 そもそも、この後リンドラ様と再度話し合う予定だ。色々と、ここでの生活について教えてもらうのである。

 だが、それでも眠気は訪れてくる。これは、体を起こしておいた方がいいかもしれない。このままでは、眠ってしまうだろう。


「……サフィナ様」

「え?」


 そう思って体を起こした私の耳に、戸を叩く音と女性の声が聞こえてきた。

 もしかして、誰かが私を呼び出しに来たのだろうか。

 だが、約束の時間まではまだ少しあるはずだ。もしかして、時間が早まっただろうか。


「はーい」


 私が部屋の戸を開けると、そこにはメイドさんが立っていた。

 その横には、キャスターのついたワゴンがある。その上には、ティーポットのようなものが乗っている。


「失礼します。リンドラ様の指示で、サフィナ様にハーブティをお持ちしました」

「ハーブティ?」

「疲れによく効くハーブティです」


 どうやら、リンドラ様の指示でハーブティを持って来てくれたようだ。

 恐らく、リンドラ様は私が疲れていることに気づいていたのだろう。だから、メイドさんにこのようなものを持ってくるように指示したのだ。

 考えてみれば、リンドラ様は気づいていたから、休憩時間を用意してくれたのだろう。これを見て、今はそう思うのだ。


「それは、ありがとうございます。頂いてもいいですか?」

「はい、もちろんです。少し、中に入らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「あ、はい。どうぞお入りください」


 メイドさんが、ワゴンを押して部屋の中に入っていく。

 私は机の前にある椅子に座って、メイドさんがハーブティを入れてくれるのを待つ。

 リンドラ様は、かなり優しく気遣いができる人であるようだ。

 私が疲れているのに気付き、色々としてくれる。その気遣いが、本当に嬉しいと思う。

 そんな人の婚約者となれたことは、私にとって幸福なことだ。この婚約は、色々とあってのことだが、今はそう思える。

 こうして、私はハーブティを頂くのだった。

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