家族(殺害)計画

鳳つなし

第1話 兄 考察

 僕の名前は久留美秀人。

 兄の名前は久留美憲治。

 二歳年上の兄は久留米家の一人目の子供である。

 だからなのか、両親は教育を熱心に行い、多少厳しく躾をしたらしい。

 憲治も怒られるのを恐れてか、それとも両親の期待に応えるためか、努力できる子に育ったという。

 その成果もしっかり出て、運動神経はいまいちなものの、なんでも努力してできるようになる、勤勉な人になっていった。

 二年の間を置き生まれた僕に、憲治は言葉に出さないが嫉妬していた、と母は語っていた。

 「お兄ちゃんなんだから」が枕詞になって続く両親の言葉に、僕の存在を意識せざるを得なかっただろう。

 そんな憲治は学校へ通うようになると、いじめを受けた。

 努力ができ、我慢できる子は、大抵いじめられる。

 憲治もそれは例外ではない。

 勉強ができ、先生の言うことを真面目に聞き、優等生と言えた憲治は、格好の標的になった。

 面倒なことは全て押し付けられ、なにかあるとすぐに茶化され、それでも我慢し、努力を怠らなかった。

 けれど、ストレスの行き場は僕に向かった。

 別に暴力を振るわれるなどのあからさまなものではなかったが、僕と比べ、自分が優れていることを実感し、優越感に浸っていた。

 二年の歳の差がある。僕より優れていて当たり前だ。

 僕ができないことをやってのける。それが気持ちよかったのだろう。

 憲治の自慢げな表情を見て、悔しくて泣いていた記憶ばかりが思い出される。

 そうやって、憲治は努力することで喜びを得ていた。

 それがその後の人生にも大きな影響を与えた。

 成績はぐんぐん伸び、高校、大学受験と成功し、就職も難なくできた。

 交遊関係は一切不明。小学校高学年になる頃には二人で遊ぶことはなくなり、家で顔を合わせても、挨拶さえ交わさないようになった。だからどんな人と関わっているのかなんて、知るよしもない。

 今は親元を離れ、職場近くの社宅で一人暮らしをしている。

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