3
男が家に帰るとめずらしく彼女が家にいた。
「早かったのね」女が男に言った。
「いつもと変りないよ」男が答える。
男はふと、彼女はいつもこの時間より遅くに家に帰ってくることに気づく。
当たり前のことだけれど、気にもしていなかった。そして彼は、この状況に違和感を感じる。
男は冷蔵庫から冷凍食品を出して電子レンジの中へ。
そしてボタンを押す。電子レンジがオレンジ色に光り、鈍い音を立てて回転する。
「飲みたければどうぞ」
彼は缶ビールを開けたあと彼女にそう言った。
「それじゃ、あたしももらおうかしら」
女が立ち上がる。
彼はマンションを見上げながら、駅に向かって歩きはじめる。
ガード下でタバコをふかしている女。まるで娼婦のようだと男は思った。
「今どきそんな女なんているのかい」
彼女の声が聞こえる。
行きかう人に紛れて彼女も駅のほうに歩きはじめる。
「どこに行ってたの」女が男に尋ねる。
男は黙って通り過ぎようとする。
「別れるのはつらいよね」
「あたしもさびしいの」
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