~学園生活編~

第67話 王都第三学園

 神霊亀戦、そして技工士のランク上げを終えて、セージは王都に向かった。

 神霊亀戦ではレベルも上がらないためほとんどステータスに変化はなく、ランクも生産職しか上がっていない。ただ、技工士のマスターによって新たな上級職が現れた。


 セージ Age 12 種族:人 職業:勇者

 Lv. 51

 HP 1996/1996

 MP 8606/8606

 STR 261

 DEX 429

 VIT 238

 AGI 253

 INT 999

 MND 943


 戦闘・支援職

 下級職 中級職 マスター

 戦士 魔法士 武闘士 狩人 聖職者 盗賊 祈祷士 旅人 商人 聖騎士 魔導士 暗殺者 探検家


 上級職

 勇者  ランク5

 精霊士 ランク70 マスター

 探究者 ランク1

 


 生産職一覧

 下級職 マスター

 木工師 鍛冶師 薬師 細工師 服飾師 調理師 農業師


 中級職

 錬金術師 ランク50 マスター

 魔道具師 ランク28

 技工師  ランク50 マスター

 賭博師  ランク50 マスター


 セージは王都で馬車に揺られながら、自分のステータスを覗いてニマニマしていた。


(とうとう生産系中級職のマスターに目処がついてきたな。いやー、思ったより上手くいった。王都なら魔導具の材料も手に入りそうだし。学園生活がどんな感じかわからないけどランク上げが捗るといいなぁ)


 セージが王都にやって来たのは学園に呼び出されたためである。

 寮のことや学園生活の説明があるのかなと思っていた。ただ、学園生活が始まるまであと一ヶ月もある。セージは手紙をしばらくの間無視していたが、実際に呼ばれたのは2ヶ月も前のことだ。そこに関しては不思議に思っていた。


 第三学園への道のりはしっかり覚えている。まだ半年も経っていないが懐かしく感じられた。


(久しぶりだな。この間来たばっかりだけど。いろいろあったからなぁ)


 第三学園は外から見ると石造りの小学校だが、さすがに中身は異なる。

 廊下には赤い絨毯が敷かれており、城の様なイメージの方が近い。赤い絨毯とは言っても古く汚れているので色は茶色に近いが、それでも立派なものである。


 試験を受けた場所は扇状に机が配置された大教室で、後は会議室や救護室、教官の個室とその教室などがある。

 ちなみに教官の個室の隣に教室があり、授業を受ける場合は生徒がその教室に行くというスタイルである。


 ちらりと中を覗いたが職員室という部屋もなく、どこに言ったら良いかわからないので、学園の受付で聞こうとそちらに向かう。すると、試験の時にいた生徒、ベンが歩いているのを発見した。

 ちょうどいいと思って話しかけようと近づく。すると、ベンがセージに気づいた瞬間に目を見開いた。


「あー!!!」


 指を指して叫んだかと思うと脱兎のごとく走り去った。


(えっ? なに? 俺が何かした?)


 セージは呆然としながらそれを見送る。


(どうしたんだろ。うーん。とりあえず受付に行くしかないか。でも受付で誰に取り次いでもらえばいいんだろ。教官の名前なんて知らないし。そういえば手紙って誰から送られたんだっけ?)


 受付の近くでガサゴソと鞄をあさっていると、一人の教官がやってきた。四十才は過ぎているが、体格が良く爽やかな顔立ちをしている。


(おっちょうどいいところに、ってあれは?)


 教官の後ろからベンがついて来ていた。


(何かありそうだなー。逃げたい)


「君がセージだね?」


「……はい、そうですが。何でしょうか?」


「俺は教官のサイラスだ。君に伝えたい事がある。時間があるなら教官室まで来てもらえないか?」


「構いませんが、どういった内容ですか?」


「悪いことではないぞ。少し提案があるだけだ。歩きながら話そうか」


(提案ってなんだ? 面倒なことじゃないといいんだけど)


 セージは疑問を持ちながらも教官について行く。


「まずはこの学園に来た理由を聞きたいのだ」


「学園に来た理由ですか?」


「君ほどの者がわざわざこの学園に来て騎士になろうとするだろうかと思ってね」


「大した者ではありませんよ。ただの平民ですからね」


(まぁ騎士にはなりたくないけど)


 セージは騎士になる気は全くない。学園に来たのは本を読むためと近接戦闘を学ぶためである。


「言っておくが第三学園では十二歳で入学は珍しい。だいたいが十四歳だからな。それなのに、実技では上級生が手も足も出ず、座学では歴代最高という圧倒的な成績で首席だ。さらに推薦者は貴族の当主。これのどこがただの平民だ?」


「えーっと、まぁ試験の時は運が良かったですね」


(うーん、やっぱりやり過ぎたか。でもちょっと不安だったんだよな。推薦を貰っておいて落ちましたって帰るわけにもいかないし。というか全員十二歳なんじゃなかったのか。道理で入学試験のとき明らかに周りが十二歳に見えなかったよ。ルシィに騙された)


 学園は十二歳から十四歳までの者を受け付けているが、第一学園は貴族、第二学園は王都の騎士の子供など高位の者しかいないので全員十二歳で受けて合格する。

 もちろんルシールは貴族なので十二歳で入るのが当たり前である。


 第三騎士学園も十二歳で入れるが、実際は十四歳が多い。それは第三騎士学園のみが実力で入れるところであるからだ。

 十二歳ではなかなか試験に通らないので、必然的に十四歳の入学生がほとんどになる。

 学園を薦めたルシールは第一学園に通っていたため忘れていたのだが、第三学園でセージのように十二歳での入学は珍しかった。


 ちなみに、学園では騎士になるための基礎訓練や戦闘指南はもちろん、モンスター行動学などの座学、野営の基礎、武具の手入れ方法まで広く学ぶ事ができる。王都にいる騎士の多くは学園を卒業した者達だ。


 卒業後、第一学園の学生はエリートで小隊長補佐官など士官候補生として始まる。

 第二学園の学生は一番下から二番目の階級から始まるのが一般的で、優秀な者はさらに上の階級からになる。

 第三学園は一番下から始まるのだが、一番下とはいえ騎士である。騎士の下に兵士がいて、扱いは全く異なる。平民にとって騎士になるというだけで特別なことであり、人気は高い。


 ただ、学園での規律や昇級試験の難しさは平民には厳しいものだ。

 どの学園も前期と後期に分かれており、年間二回の昇級試験がある。全てに一発合格すると一年半で卒業できるのだが、そう簡単にはいかない。


 実技は昇級試験だが、座学は単位制で必要な単位数をとらなければならない。

 半年では必要な授業数を受けられないが、授業を受けずに試験だけ受けることも可能であり、評価は試験の成績がすべてである。つまり、一切授業に出なくても試験だけ受けて通る実力があれば進級することが出来る。


 とはいえ、このときの座学は入学試験と異なり重要である。座学が得意な者などほとんどおらず、むしろ油断して落ちる学生が多いのだ。

 モンスター行動学や魔法学など戦いで大切な知識だと言われていても、これまで勉強なんてしてこなかった平民にとっては厳しいものである。


 結局卒業できなかったり、騎士の堅苦しさに嫌けがさしたりして退学し、冒険者になる者も三割近くいる。卒業生が入学生の半分になることもあったくらいだ。


 教官から学園の話を聞きながらサイラスの個室に辿り着く。

 ベンはいつの間にかいなくなっていた。サイラスとセージの二人で個室に入り、向かい合って座る。


(質実剛健って感じの部屋だな。意外と立派だし)


 部屋には机とソファー、執務机、小さな本棚一つしかなく装飾品は何もないが、武器類は置いてあった。


「話というのは、学園対抗試合についてだ。是非、君に出てもらいたいと思っている」


 サイラスは早速本題の提案を話し始めた。

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