盛大な祭りを!

@ponponten

第1話 SOS

__バルオキー村__

今夜、バルオキーでは祭りが開催される。

そのため、村の人々は着々と準備をしていた。久しぶりに故郷へと戻ったアルドは村の様子を見ながら言う。


「そうか、今日はバルオキー祭か楽しみだな!

フィーネもこの祭り好きだもんな!」


「うん!私もこのお祭り大好きだから楽しみだよ。でもお兄ちゃんってば、毎年お小遣い使い切っちゃうんだから、今年は気をつけなきゃダメだよ?」


フィーネの言葉に、目を瞑り何も言い返さないアルド。隣にいたフィーネは、全くもうと呆れながらも笑い返す。

そんな2人の姿を羨ましそうに見つめるエイミ、リィカ、サイラス、ギルドナ。


「ねぇ。フィーネ、アルドそのバルオキー祭ってなんなの?」


「何やら面白そうな話をしておるな!」


「内緒話ナンテ許しマセン!!」


「貴様らだけで面白そうな事をするとはいい度胸だ。」


ムッと顔を膨らませジリジリと近づいてくる四人に、目を丸くし驚く二人。


「みんな、お、落ち着いて」


両腕を前に出し進行を食い止めようとするフィーネと焦りながら説明し始めるアルド。


「そ、そっか四人はバルオキー祭の事を知らないよな。バルオキー祭は、一年に一度開催される祭りのことだよ。毎年村の人達で主催者に相応しい人を投票し、選ばれた主催者がテーマを決めてそのテーマのもと行われるんだ。」


そう言い終わると四人は目をキラキラさせ全身が喜びに迸ったかのように次々と言葉を返した。


「そんな面白そうな祭りがあるなんて!なんで教えてくれなかったのよ。アルド、フィーネあなた達罰として、私たちに奢りなさいよね!」


「エイミサンの言う通りデス!村で一番美味しいオイル期待してイマスノデ!」


「では拙者は、村一番のお酒を頂くでござる」


「フン。暇つぶしに良いかもな。」


先程までの目の色とはうって変わり彼女らの目は怪しくギラギラと輝き始める。そんな四人に、再び焦りだすアルドとフィーネ。


「お、お兄ちゃんは私よりもお小遣い沢山貰ってるから奢ってあげなよ。ね?」


「な!そんな事言ってフィーネ、お前逃げる気だろ。させないからな!」


互いに擦り始める二人を、四人はニヤニヤと見つめていた。

数分後、アルドは「わ、分かったよ。エイミ達は客人だからな、仕方ない今日は俺が奢るよ」と良いフィーネは小さくガッツポーズをとる。四人はアルドの言葉を聞き大きくガッツポーズをとった。

はぁとため息をつき後ろを向くアルドは、目の前に自分と同じくため息つきながら、とぼとぼと歩いてくる男の姿が視界にはいった。

そんな彼にアルドは躊躇なく声をかける。


「おじさん、どうしたんだ?」


アルドの声に一瞬驚くが、歩みを止める男。


「おぉ。アルドか。久しぶりだな、、いやそれがな?今回の祭りの主催者は俺に決まったんだよ。」


「今回の主催者はおじさんなのか!凄いじゃないか!!でもなんで、ため息なんてついていたんだ?」


?を頭に浮かべるアルドに男は眉をひそめながら言葉を返す。


「いやな?俺も主催者に選ばれるなんて嬉しい限りなんだが。今年のバルオキー祭は、村の皆の夢をテーマにしたかったんだよ。」


そこまで聞いたアルドは 、


「俺が言うのもなんだけどとても楽しそうだ!きっと最高のバルオキー祭が開催されるじゃないかな。で村の皆は、なんて言ったんだ?」


おじさんは、少し間を置いてから右手で握りしめた拳を胸近くにもっていき村全体に響くような大きな声で


「「この村の誰もが見た時の無いものばかりで行う盛大な祭りにして欲しいと言われたんだ!!」」


おじさんの声のデカさと村の人達の要望に目が点になるアルド。否アルドの後ろにいたフィーネ達も目が点になっていた。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


数分時間が止まった感覚に襲われる一同。そんな空気の中、アルドは声を出した。


「お、おじさん流石に出来ないことは出来ないっていった方がいいんじゃないか??」


その台詞に頷く一同。


「そ、そうよ!もっと現実味のあるお祭りのテーマにした方がいいんじゃないかしら。ほ、ほら例えば、みんなで可愛い仮装をして美味しいものを沢山食べたり、飲んだりするとかさ??」


「エイミ殿それは、いい考えでござるな。」


話し始めるエイミに、ケロケロと頷くサイラス。しかしおじさんは、首を横に振る。


「ダメだ!おじさんは、今回皆が出してくれたテーマで行きたいんだ!!」


そう言い切るおじさんの後ろには、漫画でよくみるドドン!という効果音がみえた、、気がした。


「お願いだ。アルドとアルドのお友達。おじさんに力を貸してくれぇぇ。」


先程までの勢いとはうってかわり、今にでも泣きそうな目で手を合わせてくるおじさんに渋々了承してしまうアルド。


「わ、分かったよ。できる限りやってみるよ!だから、おじさん泣かないでくれよ」


その一言でおじさんは、一気に顔が明るくなり「ほ、本当か?!あ、あ、ああ、ありがとよぉぉぉ!君達は俺の命の恩人だぁぁ」

と嬉しさのあまりアルドに抱きつく。思いのほか力が強すぎたため、助けを乞うアルドにエイミは、「まったくお人好しなんだから」とクスリと笑う。


「でも、それがお兄ちゃんらしいんだけどね。」


「アルドサンは絶対ニ困ッテル人を放ってはおきマセン。ノデ!」


エイミの言葉にリィカもフィーネも頷く。そんな和ましい三人とは違い、サイラスとギルドナは、おじさんにアルドを離すよう促した。


「貴様そろそろアルドを離してやれ。」


「おじ殿の力でアルドが今にでも死にそうでござるよ」


二人の言葉に、おじさんは慌ててアルドを離す。


「す、すまないアルド!嬉しさのあまり、、」


「ケホッケホッ。だ、大丈夫だ。問題ないよ。」


と返すも心の中で((サイラスとギルドナが止めてくれなきゃ、危なかったけど。))と付け足した。

アルドが落ち着きを取り戻した時、リィカが頭を傾け問いかけた。


「所デ、おじさんは具体的ニどんな物ヲ用意スレバいいのデスカ??」


リィカの問いにアルドは、目を大きく開きおじさんを見る。


「そう言えば、具体的には聞いてなかったな。もう、教わった気になっていたよ。」


「おじさんも話した気になっていたよ。そうだなぁ物の殆どは、何とか揃えることが出来たんだが、最後の二つがどうしても手に入れられないものでな。」


「ならその最後の二つを俺達で揃えればいいんだな?一体なんなんだ?、、、って殆ど揃えてるのか?!」


「ああ。おじさんの知人や知人の知人の知人に力を借りてな?どうしても調達出来ないと言われたのが【恐竜からとれた脂ののった大きな肉】と【村全体を包みこむ色鮮やかな花火】がどうしても手に入れられないんだよ。」


腕を組み悩むおじさんにアルドは、(もはや知人の知人の知人って他人じゃないのか??)と頭の中で思ったが口には出さないでおいた。


「しかし、村中を包み込む色鮮やか花火か。

この時代じゃ、村中を包み込めるほどの花火は手には入れられないな。」


「そうだね。大きな恐竜のお肉もこの時代じゃ取れないと思うし。」


二人と同じようにどうしたものかと考えていると、フィーネの肩をエイミがちょんちょんと叩いた。


「あなた達、私とリィカが来た時代忘れていない?」


「忘レタなんて言ったら怒りマスヨ!」


「い、いきなりどうしたの?エイミもリィカも忘れてなんかいないよ?エルジオンでしょ?」


「アルド。拙者との出会いはどこでござったか?」


「それは、古代の人喰い沼だろ?」


「フン。なら、コイツらの共通点はなんだ?」


「何って他の時代から来た、、、」「「あっ!!」」


同時に声をあげるアルドとフィーネ。そう、三人は、別の時代から来た。エイミ達は、他の時代にならおじさんの探している物が揃えられるはずと思いアルドとフィーネにこのような質問を投げかけたのだった。


「おじさん、その二つならなんとか俺達で調達出来るかもしれない!」


その言葉を聞きおじさんは、先程よりもより一層明るい顔で一同を見る。


「本当か?!じゃあ頼んでも大丈夫なのか!!」


「ああ!任せてくれ。」


「ありがとうよ!なら俺は、こうしちゃ居られない。急いで準備をしなければ!!うおおおおおおお!!」


おじさんは、雄叫びを上げながら猛スピードで村の中心部へと走り去って行った。アルドは「おじさん一体いくつなんだ?!」とぼそりと囁きエイミも苦笑いを浮かべる。


「おじさんのためにも急いで調達した方が良さそうね」


「、、そうだな。皆、合成鬼龍へ向かおう!」


一同は、合成鬼龍が待つ方へと走り出した

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