追憶の胡蝶と夢見のサナギ
柚木はる
プロローグ
遠い遠い、遥か時の彼方。
第七代ミグランス王朝の時代より800年後の未来。
――AD1100年。
人々は汚染された土地を捨て、天空の島々へと移り住んだ。
曙光都市エルジオンは、空中に浮かぶ大都市である。
プレートと呼ばれる新たなる大地の上に、見上げるほど高い白亜の建物がそびえ立つ。アルドは時空の穴を通り時を超え、この世界を目の当たりにした。バオルキーの村で普通に暮らしていたなら、決して見ることのなかった景色を。
そんな宙まで突き抜けるような蒼穹の下、足音が響く。
時空の冒険者アルドは、エルジオンのガンマ区画を駆け回っていた。
額に汗を浮かべ、街の喧騒に負けじと声を張り上げる。
「ヴァルヲー! どこにいるんだー! ……いつも食事の時間には戻ってくるはずなのに、今日はどこまで行ったんだ?」
息を切らして武器屋イシャール堂の前まで戻ると、ちょうど店の中から仲間のエイミが姿を現した。
「見つからない?」
「駄目だ。どこにもいないよ」
エイミは首を傾げた。
「もしかしたら、ガンマ区画の外に出ちゃったのかもしれないわね。アルド、手分けしましょう。私はシータ区画の方を探して来る」
亜麻色の髪と緑の髪飾りがふわりと揺れ、シャンプーの甘い匂いが風に香った。
「ああ、頼んだよエイミ。オレはカーゴ・ステーションの方を探してみる」
――再びアルドは駆け出す。こうして今日もまた、新たなクエストが幕を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます