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エミとマサミは同期入社ではあったが、それほど親しい友人ではなかった。それでも職場が近かったこともあって、エミはマサミの結婚式に招待された。
他の友人を呼ぶ都合上、エミを無視できなかったという事情もあったようだ。
その後トシユキがエミの上司になり、近くに住んでいたこともあってエミとマサミは親しく付き合うようになった。
「いいなあ、こんなかわいい子がいて」
マサミはケンタとサキを見て少しうらやましそうに言う。
「ママのお友だちと会うの」
ケンタとサキはうれしそうについてきた。
「いいお兄ちゃんね」
ケンタがサキの様子を見てトイレに連れていく。
「近くに同じくらいの子がいないからいつも二人でいるの」
エミとマサミは二人の小さな後姿を目で追っている。
「お店に行ってきたのよ」
マサミが小さな声でいう。トシユキもエミを見てうなずいている。
「彼はもともと都会にいたわけじゃないんでしょう」
「意地があったのかな」
「男だからね」
「仕事までやめて、エミのところに来たのに」
「これでいいのよ。あの人もちゃんとやっているみたいだから」
「いい店だったよ。お客もついているようだし」
トシユキがマサミに同意を求めるように笑顔で言った。雰囲気が少しだけなごむ。
その時、サキの手を引いてケンタが戻ってくる。
「おじさんはパパのお友だち」
サキが突然トシユキにそう言う。ケンタがサキの手を強く握って、それからエミのほうを見た。
「そうだよ」
「サキちゃんはパパが好きなんだ」
「パパとママはケンカなんかしてないよ。とっても仲がいいの」
サキの言葉にエミは言葉を失った。
ケンタは口を閉じたままエミを見ている。
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