2-3

「クリスマスなのに休めないんだ」

「そもそもクリスマスは祝日じゃないし」

「イヴの前日は祝日だけどね」

「それにカオルだって休めないだろう」

「それはそうだけど」

「イヴの日ってお店混んでるの」

「それなりにはね」

「俺がそっちに行ってもいいかな」

「やめてよ。タカシが来たって相手できないよ」

「そうか。フライドチキンでも持って行こうと思ったんだけど」

「チキンならあたしが貰ってくるよ。朝になっちゃうけれど、多分余るから」

「お客さんとかが持ってきて」

「そうかな。お店でも用意するけど」

 カオルはタカシと話しているあいだ、ずっとパソコンを見ている。

「そんなにパソコンばかり見てたら、目を悪くするんじゃない」

「そうね、少し疲れたかな」

「てきとうに休まなきゃ」

「ついつい見ちゃうのよね」

 本当に欲しいものならいくら買ってもかまわないのだろうけど、何となく買わされちゃっているような気がする。送料が無料になるからといって必要以上に買うことはないだろうし。タカシはカオルの背中を見ながらそんなことを考えていた。

「ウインドウショッピングのほうが楽しくない」

「それはそうだけど。タカシあたしと買い物行くの、嫌がってたじゃない」

 たしかにカオルの買い物に付き合うには相当忍耐が必要だ。迷ったあげく何も買わないこともよくあったし。

 そういえばあの頃はそんなにお金使ってなかったよな。きれいに片付いていた部屋も、今では段ボールの箱が積まれて放置されたままになっている。その中には空箱だけでなく、まだ開けていない箱もある。空箱だけでも片付けないと。

「同じものならネットのほうが断然安いの」

 いくら安くても。タカシは思わず口から出そうになった言葉を飲みこんだ。

「欲望って際限がないっていうけれど、それ本当なのかな」

 カオルの言った言葉に驚きながら、タカシは部屋を出る準備をはじめた。

「あたしね、そうじゃないんじゃないかって、最近思うの」

「こうしてパソコン見ていても、欲しいと思わない自分を感じるの」

「とにかく、あんまり見てばかりいないで寝た方がいいよ」

「ごはんちゃんと食べた」

 タカシは朝帰りにもかかわらず、朝食を用意してくれるカオルに感謝していた。

「食べたよ」

「あたしもシャワー浴びたら寝るから」

「行ってらっしゃい」

 タカシはカオルの声に押し出されるように部屋を出ていく。そしていつものように心がなごんでいく自分を感じた。

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