2-1

 駐車場に赤い車が止まった。クレムソンレーキのような色だけれど、ちょっとピンクがかっているようにも見える。中からはおそろいのタートルネックのセーターを着たカップルが降りてきて、男のほうがセーターのまま少し小走りで店の中に入ってきた。女はセーターの上に白っぽいダウンを羽織りながらゆっくりと歩いてくる。

「いらっしゃいませ、こんにちは」店に入ってきた男にヒロが声をかける。

 一瞬ヒロのほうを見た男は、入口のところで店の中をゆっくりと見まわしてる。 

 商品を探している様子はない。

「いないのかな」男が後から入ってきた女にそう言う。

「エミさんはいますか」

 女のほうがレジにいるヒロにきいた。

 ヒロが答える前にエミが事務室から出てくる。

「マサミ」

 エミは自信なさそうに、女のほうを向いて言った。

「エミ、久しぶり。元気だった」

「トシユキさん」エミが男の顔をじっと見ている。

「昔の上司の顔は忘れないでくれよ、エミちゃん」

 男はそう言って、エミのほうに近づいてくる。

「いつ帰ってきたんですか。たしかカナダに」

「ひと月前に」

「一時帰国ですか」

「エミさん、店のほうは大丈夫ですから」レジでずっと話を聞いていたヒロがエミに言う。

「そうね」

 エミは二人を事務室のほうに案内する。

「ずいぶん早かったですね」事務室に入っていった二人はほんの数分で出てくると、店を出て行ってしまった。

「しばらくこっちにいるらしいの。明日の夜ホテルで会うことになったから」

「子どもたちも連れて来てって言われた」 

 エミがうれしそうに言う。

「あいつら喜びますね」

「同じ会社にいた人ですか」

「そう、昔お世話になって」

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