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駐車場に赤い車が止まった。クレムソンレーキのような色だけれど、ちょっとピンクがかっているようにも見える。中からはおそろいのタートルネックのセーターを着たカップルが降りてきて、男のほうがセーターのまま少し小走りで店の中に入ってきた。女はセーターの上に白っぽいダウンを羽織りながらゆっくりと歩いてくる。
「いらっしゃいませ、こんにちは」店に入ってきた男にヒロが声をかける。
一瞬ヒロのほうを見た男は、入口のところで店の中をゆっくりと見まわしてる。
商品を探している様子はない。
「いないのかな」男が後から入ってきた女にそう言う。
「エミさんはいますか」
女のほうがレジにいるヒロにきいた。
ヒロが答える前にエミが事務室から出てくる。
「マサミ」
エミは自信なさそうに、女のほうを向いて言った。
「エミ、久しぶり。元気だった」
「トシユキさん」エミが男の顔をじっと見ている。
「昔の上司の顔は忘れないでくれよ、エミちゃん」
男はそう言って、エミのほうに近づいてくる。
「いつ帰ってきたんですか。たしかカナダに」
「ひと月前に」
「一時帰国ですか」
「エミさん、店のほうは大丈夫ですから」レジでずっと話を聞いていたヒロがエミに言う。
「そうね」
エミは二人を事務室のほうに案内する。
「ずいぶん早かったですね」事務室に入っていった二人はほんの数分で出てくると、店を出て行ってしまった。
「しばらくこっちにいるらしいの。明日の夜ホテルで会うことになったから」
「子どもたちも連れて来てって言われた」
エミがうれしそうに言う。
「あいつら喜びますね」
「同じ会社にいた人ですか」
「そう、昔お世話になって」
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