第2話 私について 2

そして、現在16歳の私、榊原 桃香は高校には進学せず、ただただ呆然と生活を送っていた。

趣味も無ければ、友人もおらず、しかし、生活には困らないと言った具合。この様な生き方をしていると、どうも具合が悪い。何も考えることが出来なくなり、本当にただ生きているだけ。死ぬ理由がないから、生きていると言う状態であった。



しかし、そんな私にも、僅かに興味が出る事があった。それは、深夜帯にやっていた、小さな枠のテレビ番組で知ることとなった。タイトルは「オートバイ、ひとり旅」。そのタイトルの通り、オートバイというタイヤが2つ付いた乗り物で、ひとり旅をすると言う内容であった。

たった15分の番組。平日の深夜に細々と放送されていたその番組に、私は妙に惹かれた。


早速、スマホでオートバイについて調べる。2032年のインターネットでは簡単にあっさりと情報を探し出すことが出来た。

まず、第1に、オートバイに乗るためには、免許が必要であると言う事。第2にオートバイにもいくつかの種類がある事。第3にオートバイでのひとり旅は、一昔前に比べ、危険であると言う事。


しかし、いずれの事も、私にはそれ程気になる事では無かった。免許証は教習所に通うことで、取得が可能であるし、オートバイについては「オートバイ、ひとり旅」で使用されていた物と同じ物を購入しようと思っていた。

そして3つ目の「ひとり旅の危険」についても、生きているのか死んでいるのか分からない私に取っては大した障害とはならなかった。


そうなると、後は行動するのみと。まずは教習所へ。身長が高い為か、噂に聞く程の難易度では無く、あっさりと卒業。学科の方も、地頭の良さからか、あっさりと合格。

して、無事に免許を取得し、オートバイ選びへ。こちらも、欲しい車種は決まっていたため、探し始めてから一月もしないで、納車となった。




この様に、簡単に旅の主役となるオートバイを手にした私だったが、実際にまともに「旅」を出来るようになるまでにはそれなりに時間が掛かってしまった。運転技術、旅に必要となる道具や工具等など。ひとり旅はそう簡単に行える物ではない。まして、一月前まで何も知らなかった少女である。簡単な気持ち、準備で出発しても苦い思い出と共に引き返すことは目に見えていた。

そうならない為に、準備は入念に行った。


そして、2032年9月、ひとりの少女が晴れて「ひとり旅」を行う事になったのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る