ひとろぐ
工藤千尋(一八九三~一九六二 仏)
第1話人ログ
「なんで私の結婚にお父さんが口出すのよ!!」
「だめだ!あんな男は最低の野郎だ!!」
「お父さんに宏さんの何が分かるって言うのよ!」
「そうですよお父さん。加奈子の選んだ人なら好きにさせてやってもいいんじゃないですか?」
「お前まで何を言っている!これを見ろ!」
お父さんと呼ばれている男がスマホを取り出しある画面を二人に見せる。
『人ログ』
山田宏 二十七歳。男性。☆1・21(189件)
(子供の頃から弱いものいじめばかりしてたDQN。まっとうに働いてるようだが陰ではJKハメまくりです。私も友人も被害者)
(コンビニで店員をイラつかせるのが趣味の男。とにかく陰湿)
(金を返さない。泥棒)
「そんなのネットの情報じゃない!宏さんがそんな人じゃないことは私が一番知ってるんだから!」
「だめだ!お前も騙されてるに決まってる!なあ、母さん」
「あら…。さすがにこれは…。ちょっとお母さんも加奈子の味方は出来ないわ」
「何言ってんの!?お母さんまで!そんな評価なんてお金で操作出来るんだから!」
「いや。その証拠はあるんか?」
「だーかーらー。付き合ってきた私が一番知ってるから!宏さんは真面目で誠実な人だから!ネットの情報で何が分かるの!?」
「いや、この『人ログ』は信用できる。実際にお父さんも知人の評価を見てみたが書かれてる通りだった。なあ、母さん」
「そうですねえ。ちょっとこの結婚は考え直した方がいいわよ」
「お母さん!もういい!私勝手にするから!」
「おい!待て!絶対に許さんからな!!」
人がネットでありとあらゆるものに点数をつけるようになったこの時代。企業も人もどんどんエスカレートした。飲食店を☆で評価し。通販サイトで購入した商品を☆で評価し。他人の創作物を☆で評価し。家電も☆で評価し。人がやることにいちいち☆をつけ、それを判断材料にして。不正があろうと☆を信じる。実際に自分の目で見てなくても、手にしてなくても☆を信じる。食べてなくても☆を信じる。読んでないのに☆を信じる。人類総評論家時代。そしてとうとう『人』までも☆で評価する時代になってしまった。
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