疾走

私は脱走した……つまり「駆けた」のだ。時分は夜にした。しかし問題は、暗がりの時間には「並走者」がいないことだったのだ。私は一人で駆けた。申し分のない疾走、誰も私を目で追うことはできない。鷹よりも速いのだ!雀など目ではない、そういうものは食われて終わり、暗がりでは梟が食う役目になっている。しかし私は一人で駆けた。電信柱が今どれだけ走ったかを教えてくれた。電線が月明かりに妙に赤々しく輝いて、血たけ足たけとなり私に活力を与えてくれた。こんなにも走ったのは初めてだ……いや、これが最初の「走り」ではなかったろうか……?


私の駆けて通った道は、すべて怒りに燃えていた。振り返るのは、君たちの仕事だ……私は足が焼け尽きるまで走る、そういうことになっているのだ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る