03

 帰り道も、同じ。


 いつも通りの左側。彼がいる。


「授業中さ、俺、おまえの夢について考えてたんだ」


「暇だな」


「暇だよ。授業つまんないし。それでさ」


 彼の口調が、ちょっと乗り気。


「落ちてくる空は、どんな感じだった?」


「空の感じか」


 わからない。

 空が落ちてくるという感覚だけがあって、他のことは覚えていなかった。


「空の感じなんて、考えたこともなかったな。今日は、それについて考えながら寝るよ」


 左腕を。掴まれる。


「あんまり、深く入り込みすぎるなよ」


「ああ。善処するよ」


 夢のなかから、なかなか出てこれなかったことがある。数日眠り続けて、しぬ間際のところで彼に起こされた。

 彼が起こしてくれなければ、しんでいた。それ以降、彼は自分の夢について、よく訊くようになった。訊かれたことは、覚えているかぎりなるべく正確に応えるようにしている。

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