第4話 異端の魔法使い③
「この異様な魔力、ヴァーミリオンだな」
ヴァールハイトは深々とローブを着た人間にそう言い放った。
「やぁ、ご無沙汰ね、ヴァールハイト、何十年ぶりかしら」
女の声だ。
何十年ぶり?ヴァールハイトもヴァーミリオンと呼ばれた女の声もそんなに歳を重ねているように思えないとウェールスは思った。
「あなたには死んでもらうわ、ヴァールハイト!!」
ヴァーミリオンがおそらく魔法を放った、それに対してヴァールハイトも何か魔法を使ったのだろう、強い爆風が吹き荒れる。
しかし、相打ちにみえたが、結果はヴァーミリオンが優勢だったようだ。ヴァールハイトは右腕を抑えている。
「ウェールス、いいか、よく聞け、君はこの国の全ての人が魔法を使えるように頑張るんだ、そのために全力で逃げろ!」
そう言い終えるとヴァールハイトは、洞窟の天井に向けて魔法を放った。
崩れた洞窟の一部である瓦礫が道を塞いで、ウェールスはヴァーミリオンとヴァールハイトからは分断されてしまう。
「ヴァールハイト!!!」
ウェールスはまだ魔法は見習いで、未熟だが、ヴァーミリオンという女の異様な魔力の膨大さはわかった。
おそらく、勝ち目のない戦いとヴァールハイトは悟り、ウェールスを逃してくれたのだと痛感した。
ウェールスには瓦礫を一気にどかすすべはなかった。
ウェールスは逃げなかった。
ひとりでも一つずつ瓦礫をどかしていった。
それはとても骨の折れる作業だった。
よくやく瓦礫をどかして向こう側に到達した時には何時間経っていたかわからなかった。
そこには、ボロボロになって破れたヴァールハイトの衣服が落ちていた。
ヴァールハイトの遺体らしいものはすでになかった。ウェールスはヴァールハイトと過ごした魔法を学んだ日々を思い出し、不思議と涙が出てきた。
「ヴァールハイト...........」
ウェールスは涙を拭き、ヴァールハイトの服を手に取ろうとした時、そこに、鳥がいた。
オウムのような見た目で、ヴァールハイトの服の中をガサゴソしていた。この辺では見られないオウムであり、ヴァールハイトの服の中で食べ物を探しているようだった。
「何もないよ。食べ物は」
喋りかけても語ることのない鳥に話しかけた。
「何言ってんだ。くぅわー」
「うゎーオウムが喋った」
喋るはずもないオウムが喋っていた。
「何驚いているんだ。喋る鳥もいるだろう。ここに」
オウムは頭をくるくるさせて、ウェールスの頭の上に乗り、顔を覗き込んでいた。
「お前はここで何をしていたんだ?」
「それはお前に答えるつもりはない」
ウェールスはオウムの挑発に乗りそうになったが、相手は鳥なので冷静になる。
「お前こそ、何やってたんだくぅわー」
「それはお前が隠れていたところの服あるだろう」
「あるな」
「その服を着ていた人物を探しているんだ」
オウムはウェールスの頭の上で首を傾げながら、答えた。
「誰も見てない。くぅわー。お前にとって大事な人間だったのか?」
自分の頬を見るとまた涙が少し溢れていた。
「そうだ。大事な人だ」
「そうか。お前にとって大事な人間だったのか。それなら、探してやってもいいぞ。その人間」
オウムの思ってのいない提案に驚きを隠せなかった。
「いいのか。お前?」
「しょうがない」
やれやれというポーズで、オウムが了承する。
「俺の名前はウェールス。お前の名前は?」
「スターリンだくぅわー」
ここから長い旅路がはじまるとは、思わないのであった。
「こういう話だ」
ウェールスのは自分たちのことを詳しく話すことはなかったため、照れくさく思った。
「スターリン。あなた。お人好しね」
ソフィアは微笑んで、口元に手を添えた。いつも、真面目な顔をしているソフィアが微笑むとより綺麗に見える。
珍しく褒められたスターリンは驚いて、ソフィアの頭の上に乗った。
「人じゃない。くぅわー」
「本当にこりなのね」
火の魔法を詠唱し、スターリンの羽が発火する。
スターリンは、余計なあげ足取りのせいで焼き鳥になりかけたのであった。
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