異世界転移したら魔法学校を創ることになりました。
生田戸肖+山田かける
第1話 ボーイミーツガール
ソフィアはため息をついた。跡取りとして父の代わりに付き合いのある公爵家に寄った帰りの馬車に揺られながら、帰る途中であった。
「はぁーたいつくだわ」
「お嬢様。そのようなことを言うものではありません。このような、お伺いも、ヴァイスガーデン家では重要なお仕事なのですよ」
メイド長兼、私の身の回りを世話をするリリ。ソフィアと同い年であるが、童顔でチンチクリンなのにしっかりしてるメイド長だ。
「お嬢様聞いているのです...ぐぷわ」
リリの顔をつまんで、変な顔にしてあげた。
「お嬢様・な・に・をするのですか」
必死に抵抗するも何もできない小動物のようで、いつもソフィアは、リリをおもちゃにしている。こういう時だけしか、癒されないのである。
急に馬車が止まった。ほっぺたを引っ張っていたソフィアの手は、リリの顔の横を叩いて、壁ドンの状態になってしまい、自然とソフィアとリリの唇が接近したように思えた。
「お嬢様。こーういーうことは、お屋敷に帰ってから・・・」
「バカ違うわよ。御者のステファンに何かあったようだわ」
急いで馬車から降りる。すると、ステファンが肩をおさえながら近づいてくる。肩をおさえる手には血がついている。
「何があったのステファン!」
「お嬢様お逃げください!」
次の瞬間ステファンの腹に剣が突き通る。
後ろに目をやるとは黒いローブをまとった二人組の男が立っていた。
そのうちの片方が手に握った剣をステファンに突き立てていた。
「お嬢様といっていた、この女がソフィア・ヴァイスガーデンだ!やれ!」
剣を突き刺していない方の男が、片手を突き出し呪文を唱えた。
「アイスショット!」
突然のことで反応ができなかったが、護身用の魔法石がファイアウォールを発動した。魔法の衝撃で私は体勢を崩してしまう。魔法石に込められた魔力は魔法の発動一回分だ。次はない。すぐに起き上がるが、魔法を放った男も衝撃に体勢を崩していた。しかし二人いた男の一人がいない。
「抵抗はやめろ!さもなくばメイドを殺す」
ステファンに剣を突き立てていた方の男が、馬車から出てきたリリの後ろにまわり、首筋に剣を突き立てる。
「待ちなさい。あなたたち、ソフィアがヴァイスガーデンの娘と知った上での行いね。これはただですまないわよ」
すると突然、声が割って入ってきた。
「ちょっと待った」
「それ、俺のセリフ」
二人の男の声が聞こえたが、そこには鳥を肩に乗せた青年しかいなかった。
「おいおい、困るぜ。スターリング。かっこいい登場が台無し、じゃないか」
「ウェールスばかりにいいところを見せられない。くぅわー」
男が二人ではなく、青年と鳥が喧嘩をしていた。
突然のことに、二人組の男も、リリもソフィアも唖然とするしかなかった。
リリを人質にとった男は苛立っていた。
「おい貴様、なんだ!邪魔だ。すっこんでろ大道芸人!」
「大道芸、ちゃうわ。俺は君を助けに来たのさ」
キザに決めたのかもしれないけど、ソフィアは生理的に受けつけたれそうになかった。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。この隙きにリリを助けねばいけないと思った。
すると、青年は素早い動きで、リリを人質にした剣の男に、手をかざした。
「スタンライトニング!」
男は崩れさるように倒れた。もう一人の男が驚く。
「なぜ魔法が使える!」
開放されたリリに対して、鳥にウェールスと呼ばれる青年は声をかける。
「こいつを預かっててね」
ウェールスの肩からリリの肩の上に鳥が乗りうつる。
「どうも、我が名はスターリングで〜す。お嬢ちゃん、べっぴんさんやな」
「鳥が喋ってる…」
リリは驚きを隠せておらず、緊張して背筋を伸ばした状況だった。
「お嬢ちゃんのほっぺすべすべや」
スターリングはリリの顔に自分の顔を押しつけて、すりすりをしていた。
ウェールスはリリとスターリングの光景を見て、不満そうにじたんだを踏んでいた。
・・・この青年と鳥は本当に大丈夫かしら。
「ふざけてんじゃねぇ!」
騒ぎ出すもう一人の男。
「人質がいなくなったのなら、私が始末するわ」
「お嬢さん、俺を無視しないで。俺は助けに来たの?わかる?言葉?理解できる?ここは任せて?」
ソフィアはいかにも怪しいウェールスに対して、いっそう、目つきが悪くなる。ソフィアは知っている、この手のタイプは話さないと引き下がらない。ため息をついて、ウェールスと話をすることにした。
「じゃあ、やってみなさいよ」
「驚くほど、あっさりなんですね」
「めんどくさいの嫌いなの。ほら早く」
ウェールスは罰が悪そうに頭をかきながら、話しはじめた。
「すいません。助けるのにも、無料というわけではなくて、報酬とか褒美とかをもらいたいんですね。はい」
ソフィアに向かって本当にごまをするような手の動きをしながら、話す。
「お金を取るわけ?」
ソフィアはこの世で最も醜い者を見たような視線でウェールスを見た。あれだけ、格好をつけて登場したわりには、お金目当てだったらしい。
「そうですね」
「じゃあ、いらないわ」
キッパリとこの得体の知れないウェールスを切り捨てようとしたが、あの鳥がまた、ウェールスの肩にのった。
「お嬢さん。お嬢さん」
「な、何かしら」
不覚にも鳥に返事をしてしまった。
「今回はこのウェールスに任せてもらえないでしょうか?」
スターリングが丁寧に翼を掲げて、お辞儀をする。
「でも、お金を取るんでしょう?」
「いいえ、今回はいただきません。鳥の誇りにちかって、お金はいただけません」
自信満々にスターリングが答える。
「おいおい、何を言い出すんだよ。そうに言っていつも、可愛い女の子を見たら、見栄を張るのやめてくれない?」
ウェールスは鳥のスターリングの言葉を遮る。すかさず、スターリングはウェールスに耳打ちをした。
「ウェールス、この手の女は、プライドが高い。いかにも高圧的な態度だ。だけど」
「だけど?」
ウェールスが聞き返す。
「こういう奴に限って、借りを作るのを嫌うもんだ。そこに付け入って、金品をせしめる。このアイデアいかすだろ?ウェールス」
・・・残念ながら、鳥の声は丸聞こえで、ソフィアに筒抜けだった。
ソフィアはこいつらは本当におバカなやつだと心底思った。こいつらに裁きのための魔力をため込む。
「すいません、何をやっているんでしょうか?お嬢さん?」
ソフィアは手をかざし、ウェールスと男へ炎の魔法を炸裂させた。
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