先輩のお店にて……。
クルマ関係のエッセイで出すか迷ったんだけど、あまり車に触れない話なんでこちらに投稿します。なお、先輩のお客さん絡みな話ですから若干フェイクが入ります。
(先輩)「なぁ京、お前の知り合いでAっていたやろ? 覚えてるか?」
(京)「ええ、覚えてますよ。もう何年も会ってないですけどね」
先輩が言うAさんは知り合いです。一時期は趣味の場で顔を合わしてましたが、物事の価値観と言うか考えがあまりに違い過ぎてだんだん距離を置く様になった人です。その趣味を止めてから何年も会っていません。実はそのAさん、先輩の同期なんです。
(先)「去年の春やったかな、あいつまた事故をしよってな」
(京)「あ~、またですか。あの人は車を運転せん方が良いと思います」
そのAさん、突然発作を起こしたりするのを隠して運転免許を保持しているヤバい人です。私が知るだけで廃車レベルの事故を二回やってます。先輩が言うには「ちょっとした甲子園に出るか出られんかの学校みたいに『〇年ぶり〇度』くらいのペー
で事故って廃車して買い換えてる」とか。田舎で車は必需品です。乗らなきゃ仕事に行けないから買い換えます。となればお金も使うわけで……。
(先)「それでな、もう乗らん方がよいと判断して、思いっ切り高い見積もり出したんや」
先輩のお店は良心的なお店です。ぼったくるようなことはしません。そんな先輩ですが、二〇万円くらいの板金修理になりそうなところをフレーム修正込みの五〇万円超で見積もりを出したそうです。何度も事故を起こして車を買い換え続けているAさんにそんなお金は有りません。
(京)「う~ん、それって実質『もう乗るのはやめろ』って事ですよね?」
(先)「そうやな、あいつクルマ好きやし二〇万やったら出すかもしれんからな」
で、話がそれで終われば「ふ~ん、まぁ仕方がないな」で終わりです。ところがそういかないのがAさんのアホさ加減と言うか何と言うか。
(先)「でな、アイツ『金が無いしバイクで仕事に通うわ』って言いだしよってん」
(京)「事故ったら死にますね。で、紹介したんすか?」
私の住む町はバイク修理のお店が有りません(多分)もちろん先輩のお店もお客さんとの付き合いで仕方なく原付を修理する程度。
(先)「いや、紹介するのが怖いし『仕入れルートが無い』って断ったんや。そしたらO市(私が住む町から三十キロほど離れています)まで行って買って来よってな。ほら、一二五㏄の大きいスクーターあるやん」
(京)「あのひと自動二輪(免許)持ってたんですね。知らんかった。ええなぁビックスクーター」
Aさんが自動二輪免許を持っていたなんて初耳です。
(先)「で、年末に雪が降ったやん。その時に橋で転びよってな。後ろを走ってたクルマが救急車に連絡してくれたらしいわ……ところがなぁ」
(京)「ところが?」
先輩がガクッと項垂れました。悪いオチが待っているようです。
(先)「事故やから警察も来てな、アイツの免許を確認したらアカンかったらしいんや。『原付免許でこんな大きいバイク乗ったらアカンやん』ってなったらしい」
(京)「ファ?!」
どうやらAさん、車の免許を取る前にバイクの免許を取ってたみたいです。ただし原付免許、五〇㏄未満の原動機がついた二輪および三輪車の免許です。ビックスクーターを『スクーターは原付』と思って乗ってたみたいです。
(先)「無資格運転やから車の免許も取り消し。しかもアイツ、『要らんことしやがって』とか親切な後続車の子が悪いようなこと言うて。おもわず『お前が悪い!』って怒鳴ったわ」
(京)「運転以前の問題っすね、まぁ免許を取り上げられるんやったらある意味安心ですけど」
その後Aさんがどうなったか、詳しく知りません。ただ、先輩が言うには普通自動車免許は取消し確定。ビックスクーターは傷がついてたから相当買いたたかれつつ処分したとか。
(先)「紹介せんで良かったわ、してたら独立早々警察沙汰やで……」
(京)「欠格期間が終わっても免許の再取得は難しいでしょうねぇ、そもそも運転中に発作を起こす人が免許を取れるんかなって気がしますけど」
(先)「最近は厳しいみたいやし、無理やろうなぁ……」
正月明け早々の先輩のお店での話でした。
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