9 水曜日
その翌日、私の観察対象は祖母から姉兄へとうつった。もしかしたら祖母が攻撃しなかったのは、祖母は味方だと私に言おうとしていたのではないか。
そんな予感さえした。
「兄さん、姉さん」
私がちゃんとした口調で話すのはほとんどない。二人はびっくりしていた。いつもの5歳児の甘ったれた声でなかったから。
「どうしたのアリスちゃん」
姉に今日も頬をすりすりされ、兄には肩を揉まれる。
「二人の狙いは、私でしょ」
言うと、空気が止まった。
やがてまた動きだす。
「ハハハハハハ」
兄が笑いだした。
「そうだよ、君が狙いだよアリス」
姉ももう隠しきれないとばかりに笑いだした。
「お母さんとお父さんに聞いたんだ。アリスが泣くと、人が死ぬんだって」
私は絶句する。
「おじいちゃんを殺したのもアリスだって。お母さんもお父さんも、アリスのせいだって。私たち知ってるんだ」
「俺たちはアリスを心から愛してる」
兄が私の足の甲に口付けた。
「そんな少女が普通に生きられるわけはないんだ」
姉が言葉を継ぐ。
「だから。せめて私たちの手で」
私は逃げる。
自分のことが信じられなくなったのは初めてだった。
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