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棘だ。
巨大な棘が、部屋の中に出現した。それはギラギラとした鋒で、私の胸を目掛けて、とんできたように見えた。
「危ない!」
ランスロットが私を抱き抱えて逃げる。
棘はどんどん追ってくる。エリザベスがそれを凍らせる0,1秒前に、ランスロットが棘を燃やしてしまう。エリザベスが私を抱えて逃げる。走る。彼女の呼吸が乱れないのがわかる。伊達に陸上部だったわけじゃない。凍らせた棘の上を渡っていく。ざくざくと音がする。ブーツが氷の表面に刺さる。ランスロットが並走している。
「ランスロット!」
攻撃を捌ききれなくなって、エリザベスはランスロットに私を預ける。
「おう!」
彼は威勢よく声をあげる。棘を燃やして燃やして燃やし尽くす。棘の上にたんと乗り上げ、絶妙に乗り場を調節しながら走る様は、まるでパルクールのようだ。少しだけ呼吸が乱れているのがわかる。彼は勉強ばかりしているから体力がないのだ。
逃げている最中、私は彼の腕のあたたかさに思わず眠ってしまうところだった。
その時は、まさかこうなるとは思ってなかった。
やがて棘の攻撃は止まった。二人は「噂は本当だったんだ」と呟いた。
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