〇八、酒宴
タァミャがワゴンに途轍もなく
『本日のおすすめニャ』と、タァミャは俺とキュハァスへそれを取り分けて皿に盛る。
うん、盛ったな。壮観な盛り具合。夫々俺たち二人の前に皿が置かれる。まだ、本体には大部分の身が残っている。
続いて碗に飯が盛られる。それらが俺たちへ配膳される。
次に汁物が配られる。最後に手元に
「いただきます」と、唱えて箸に手を伸ばす。
先ずは、汁物から。澄まし汁だ。磯野かおりが鼻孔をつく。前に飲んだぬるいお茶とは異なり、程よく温かい。おぉ、あらか何かのだしなのか。うまい。
続いて、途轍もなくデカい魚の身の盛り。箸の先でほろほろと身が崩れる。その身を口に運ぶ。身を味わう。淡白ではあるが確りとした塩味、そして香草の香りが鼻孔を抜ける。あのデカい魚の身を堪能し、俺は飯が盛られた碗へ手を伸ばす。
よく見ると、薄っすらとした桃色がかった米粒。これまで食した米より粒が大きい。もっちりとした触感と噛むごとにうっすらとした米の甘みを感じる。再び、魚の身の盛りへ箸を伸ばす。そして、メシ。もう箸が止まらない。
『どうニャ。うまいニャン』と、タァミャの声。俺は大きく頷き応える。
と、そこへ黒い一団が食堂へ入ってくる。何やら騒がしい。俺はその一団へ眼をやる。いかにも野性味あふれる肉体派戦闘種族とか、冷淡な頭脳派戦闘種族といった一団だ。よく見ると女性もいるようだ。キュハァスも騒がしい一団へ振り向く。その一団の先頭の男が此方に向かってくる。
「キュハァス。首尾はどうだ」と、肉体派の男。
その男、鋭い眼光で俺を見下ろす。額、広ぉ。
さらには、楔帷子上の帯を右肩から左腰に掛け背中に三日月状の大きな刃を背負っている。いかにも戦闘種族らしい外見。って、バトゥラフかよ。てか、バトゥラフってなんだよ。
「クゥィングォ殿。では、ヒトロク様へ紹介いたしましょう」と、キュハァスが俺に向く。
「ヒトロク様、この方はクゥィングォ殿。この地の守護する兵衆の百衛士の長です」
「クゥィングォだ」と、歩み出る。
「ヒトロクと呼ばれている。あまり自覚は無いが」と、俺は立ち上が右手を差し出す。
「ほぉ、それは異なことを」と、言って俺の右手に視線を落とす。
「これは挨拶の仕草だ」と、更に右手を差し出す。クゥィングォが徐に右手を出した所に、力強く握って上下に軽く振る。が、更にその上の力で握り返してくる。
「クゥィングォ、いてぇよ。ソゲェ、力いっぱい握らんでもヨカロォモン」
「ほぉっ、ほっ、ほぉ。これはすまぬ。そういう挨拶かと思ってな」
「サンタかよっ。鬼サンタ。で、そちらの方々は?」と、俺たちの周りに肉体派と知能派の一団が集まっている。
「一度、言葉を交わしたな。手前はルォゥミュと申す。蛮族どもを屠った手腕、見事だ」と、右頬に三つ編みを垂らす男が
「頭を覆う外套の人かぁ?、判らなかった。ヒトロクと呼ばれている。大男達の事なら図体が大きいのと、ましてや動きがないからな。幸運だった」と、ルォゥミュにならって頭を下げる。
それからクゥィングォの腹心やら、ルォゥミュの配下の者たちと挨拶を交わす。名刺の交換も無に立て続けに。覚えられるかっ。
俺の中では、肉体派系と頭脳派系しか区別が付かん。肉体派の第一印象は褐色の鬼、赤鬼だな。頭脳派系は額がこめかみに向かってやや隆起していて青白い肌、こっちは青鬼だな。
皆夫々の系統で特徴が分かれるが、夫々の系統で同じ顔に見える。三つ編みをどちらに垂らしているかどうかで、辛うじてクゥィングォとルォゥミュは識別可能という感じだ。
一通りの挨拶を済ますと、途轍もなくデカい魚を中心に卓を寄せて席につく。そして、口々に「ロミェール」と叫ぶ。合唱が始まる。
「キュハァス、ロミェールって何だ?」
「それは、ロム族の強い酒です」と、キュハァスは外套を纏う集団へ眼を向ける。
「こんな明るいうちから飲むのか?」
「クル族も、ロム族も皆一様に酒に強いのです。また、ロミェールには回復効果があると言われています。もっともわたくしサク族にはただの強い酒でしかありませんが」
給仕たちが、ワゴンに沢山の大きな盃をのせて運んでくる。それを見て、俺も試してみたくなる。いやぁ、それは試すしかないだろ。俺は給仕のひとりに声を掛ける。
「あぁ、俺もロミェールをもらえるか」と、盃を指さす。すると、給仕の口角が上がる。すると、
「先ずは、此方をどうぞ」と、盃を差し出す。
「有難う」と、俺は立ち上がり、差し出された盃を手にする。心なしか周りからの視線が集まっている。キュハァスに目をやるとやや不安な目をしている。
「ささ、どうぞ」と、俺に盃をさし出した青鬼が言う。よく見るとボーイッシュな女性の様だ。皆、短髪で額を見せる様に前髪を切りそろえている。目が心なしか嗤っている。これは試しているのだと思い、俺は手にした盃を一気に呷る。
口に拡がる弱い発泡感、ほんのりと甘みが拡がる。ショウガかぁ?、なんかジンジャーエール割じゃね?っみたいな味。まぁ、これはこれでありだな。のど越しは爽快。周りの鬼どもは固唾を飲んで注目している様子。
名前の響きから辛口って感じの味を思い浮かべていたが、飲みやすい。と思い、喉を鳴らして流し込む。最後の一滴まで飲み干す。空いた盃を返すと、周りの鬼どもから歓声が上がる。って、それほどの酒なのかぁ?
「のど越しがいいね。まだまだいける」と、俺。
「そう言っていただけると、盃も喜んでいるでしょう。さぁ、此方へ」と、ボーイッシュな青鬼が笑みを浮かべ俺の手り、彼らの卓へ誘う。
それからは、
やっぱ酒は酒だな。確かに気持ちよく酔いが回っている。何だかよくわからい内に誰が一番酒が強いか大会になってきている。まぁ、気分が良いからいいのだが…。
差し込む陽の光の温かさに目が覚める。再び、「
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