現想都市X

瑠百合(るゆり)

第1章 - X年後の今


   1


 春宵しゅんしょう暦147年、副島零也そえじまれいやは高校へ進学した。

 静かなそよ風が頰を優しく撫で、春の訪れを匂わせる。横にそびえるビルが500人の原石を温かく見守っているようだ。零也は軽く歩行にリズムを加え校内に入った。



   2


 ここは高日本連邦国、東京之丸ノ内市、国立灯方こくりつひがた高等学校。それぞれの中学校から白羽の矢が立った逸材が必ず通う高等学校であり、高国から毎年500人が推薦される。試験は受けるが、落ちることは無い。高国政府が認めたのだから信頼は高いのだろう。高国民全員が憧れる名門校である。

 そもそも高日本連邦国は今から180年前、地球のはるか遠くに地球とほぼ同じ惑星が発見され、地球内生命体基い人類はその地へ移住計画を進めた。この頃、世界では目紛めまぐるしい程の技術革新が飛び跳ね、1日に2つは新たな発見を見出した。特に日本は経済も突発的に急成長、数々の千疋万疋せんびきまんびきに換えられるだろうハイテク機械を世に送り出した。当時の日本は先端技術産業のレーンを独走していた。他の大国と比べるとも雲泥の差であったくらいだ。

 176年前、日本は1日で5pc(約154兆3000億km・約16. 3光年)移動可能な宇宙船を開発。全世界の人民を震え上がらせた快挙である。日本はその船で未踏の当惑星へ上陸。その地は翌年に高日本国が建った。

 高日本国が建った年、新たに春宵暦が始まり、以前のグレゴリオ暦や年号は事実上廃止となった。そして、さらに147年後、今の高日本連邦国があり、皆は高国と呼んでいる。

 本邦の歴史を話しているうちに目的地へ到着した。

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