猫カフェ「11Cats」にようこそ
糸已 久子
第1話 家族紹介
俺の名前は「ハッピー」日本語言うなら「幸福」だね。俺のご主人様である、あんこって名前のお姉さんが付けてくれた名前で、まあまあ気に入っている。最近では「ハッピーパパ」とも呼ばれているけどな。本当のところ、体格もパパという風格だと思う。つまり、太っている…。
俺はペットショップで売られていたアメリカンショートヘア、通称アメショの雄で、毛並みはTVでよく見る黒と白とグレーの一般的な色だ。あんこが見たときは、小さくて、このまま大きくならなかったらどうしようかと心配するくらい華奢な身体だったらしい。売られていた値段は、通常の1/4位の5万円だったようで、あんこは即決だったようだ。
え?なんで値段が安かったかって?それはだね……。
俺のしっぽの先がちょっと曲がっていてさ、それで値段が安くなったらしいぞ。
いわゆる『欠陥』ってやつだ。まあ、その頃のあんこ(俺の中じゃ、あんこは呼び捨てさ)は、何かが欠落していたんじゃないかって思う。だから、心の隙間を埋めるものがほしかったんじゃないかな。
でもって、俺があんまり可愛いから、家族を作ってあげたくなって「花」ちゃんというお嫁さんを違うペットショップで購入したんだ。この花ちゃんは恐ろしく気位が高い猫で、うちに来てからずっと俺を敵視していた。
仕方ないんだけどね。花ちゃんのお父さんはどっかの展覧会でチャンピオンを取ったくらい毛並みが良くて、花ちゃん自身もアメショとは思えない程グレーのほわほわ三毛の毛並みでさ、値段だって俺の5倍はしたんじゃないかな。
家に来てから、ずーっと「フゥー」って怒っててさー。やりきれなかったよ実際…。
でも、いつの間にか仲良くなって子どもが出来て、俺らは6人(6匹)の家族になったんだ。なんとか仲良く暮らしていたんだけど、あんこは何故か俺たち夫婦に相談もなく、2匹の子猫をどっかにあげちゃったんだ。
これには、花ちゃんが参ってしまって…。
毎晩泣くんだぜ?子どもが恋しいって言ってさ。
だから、もう一回子どもを作る機会をあんこは俺たち夫婦に与えてくれたんだ。
俺、ものすごく頑張ったよ。
それで、生まれてきたんだ、7匹の可愛い子どもたちが…。
あんこは、今回は生まれる前から「絶対子ども猫たちはどこにもやらない!」って言ってたから、全員今も一緒に暮らしている。
結構壮絶だぜ?11匹も猫がいるんだからな。
じゃぁ、ちょっと紹介するな。
★ママの花ちゃん:俺の女房 グレーが主体のふわふわした三毛猫で、模様は渦巻いている。
★長男のシャーアズナブル:うす茶色と白で体格は俺と同じ位太っているが、性格は大人しい。
★長女の茶々:頭としっぽの先に茶色が入っている、三毛がはっきりした毛並みで、少しぱさぱさしている。痩せもせず、太りもせずという猫の理想体型を維持している。
この2匹が最初に生まれた子達だ。そして、次男以降は、2度目の出産で生まれてきてくれた子ども達だ。
★次男のレパード:茶色と白とグレーと黒が上手い具合に交じった、豹みたいな毛並みでつるつるして、肌触りがいい。大人しくて誰に何をされても怒らない。
★次女の橙(だい):臆病で誰にも懐かない、つまりあんこにも懐いていない。毛並みは恐ろしいくらいつやつやで茶色と黒と白の三毛だけど、右の横腹には花模様みたいなのもある。目でが大きくて、「アニメの少女」みたいな顔で美人だ。
★三男ちょび髭:白と黒の二色だけど、黒色が強くで、こいつも毛艶がかなりいい。悪戯好きで、好奇心旺盛だから突撃隊長って感じだな。鼻の左右横に黒っぽい毛が入っているからこの名前になったらしい。
★四男小夏:雄のくせにこの名前になったのは、かなりのイケメンだからだ。小さい頃から可愛くて、本当に雄なのか何度も確認したくらいだよ。甘えん坊で、可愛い声で啼くから、誰も彼もがメロメロさ。猫カフェのスターだね。
★五男ロイヤルミルクティー:俺や長男のシャーアズナブルと同じ位、いやそれ以上に体格がいい。態度もでかい。足フェチと言えるほど足が好きで、撫でられるのが嫌いという茶色と白の毛並みの子だ。長男のシャーアズナブルよりも茶色が濃いけどな。
★六男きなこ:茶色と白の毛並みだけど、一番茶色が濃いからこの名前になった。ちょっと体が小さくて、あんこのことが大好きで後追いをいつもしている。気が弱いんだよな。
★三女(末っ子)ミミ:雌の中では、一番太っているし、顔も人間のおばあさんのようなほうれい線に似た筋に見える毛が生えていて、手足も短い。俺の体形を小さくした感じだな。性格は前向きで、どっかの怪獣に似ているって言われても、へこむこともなく、誰にでも懐いていく子だ。ブサ可愛とか言われて可愛がられている。
ま、11匹の猫家族はこんな感じだな。
ここ「11Cats」っていう猫カフェはいつも10時から20時まで開いているから、良かったらお前も遊びに来いよ。場所は東横線の祐天寺の駅から5分くらいで、閑静な住宅街の隅っこにある三階建ての二階にある喫茶店だ。祐天寺は、中目黒の隣の駅だけどちょっと静かな金持ちが住んでる街で、客層もそう悪くない。
じゃあな、待ってるからな。
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