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    PM 11:37への応援コメント

     本作も楽しく読ませていただきました。
     『珈琲は月の下で』の後に改めて読むと、細かい仕掛けに気付くことができて楽しいです。

     それにしても、今回も難しいお題ですよね。小説のタイトルになるのですからこれくらい詩的でないと書く方も困る、といったところかもしれませんが、仮に僕が書くならそれこそ友達以上恋人未満の2人や不倫している男女がちょっと切ない夜を過ごす話にしかならなさそうです(というか僕の場合はまず短編を書くこと自体が苦手なのですが)。それをまさかこんな話にしてしまうとは、感服いたします。
     高橋さんのいとこ雪音さんの話はちょっと不意打ちな感じはしましたが、その話を聞いた立石くんが調子はずれな楽観論や正論を言わずに、彼なりに雪音さんと高橋さんの痛みを受け止めようとしていたのは、好感が持てました。立石くんのレポート、間に合うといいですね。

     全体的なところで気になったことを挙げると、僕の読み込みが足りないのかもしれませんが、「愛と呼べない夜を越えたい」というフレーズは娘さん(仮説によれば藍ちゃん)の名前と何を掛けているのか、最後まで分かりにくいように思いました。仮に作中世界で『愛と呼べない夜を越えたい』というタイトルの映画や小説がヒットしていて、そのフレーズが人々にとって耳馴染みのあるものだったなら、同僚も「何上手いこと言おうとしてんだよ。しかも、あんまり上手くないし」と返せると思いますが、ミドリさんが単に娘さんの名前から詩的なフレーズを思いついただけなら、同僚としては「え、急に何?」という話になりそうな気がします。まあ、夜9時に2人でコンビニに来るくらいなので、飲み会帰りで変なノリだった可能性もありますが。

     以下、細かいところについて失礼します。

    第1話

    「私の高校の同級生で、ここの【コンビ】のアルバイターだ」
    →【コンビニ】

    「と言って、左手に持ったスマホの画面を見せてくれた。確かに、そこには字がびっしり打ち込まれている。あとで、Wordにでも【移す】のだろう」
    →【写す】
     テキストをネットに上げてからWordにコピーするなら「移す」でも良さそうな気もしなくはないですが、一般的には文面を複写するのは「写す」という字を使うものではないかと思います。

    「【それでも、肯定せずに】立石の目を見続けていると、立石は私の視線から逃れるようにふいっと目を逸らしてから言った」
    →【私が無言で】
     「それでも」は逆接の接続詞です。逆接の接続詞は直前の文と直後の文(特に用言)をつなぐので、本文の場合は「今の私は頭がどうかしているのだ」と「肯定せずに」をつなぐことになると思いますが、両者の関係は噛み合いません。こういう場合、思い切って接続詞自体を削るのが良いと思います。
     「肯定せずに」に関して言えば、高橋さんは肯定(同意)していない代わりに否定もしていないので、そこに特別な含意がないなら「無言で」あるいは「何も言わずに」、「黙って」、「返答しかねて」、「もの思いにふけりながら」などと言い換えた方が自然だと判断しました。

    「立石は【自信満々に】そう言うと、レジを打ち込む手を止めて、言い放った」
    →【(なぜか)誇らしげに】あるいは【(なぜか)自慢げに】
     高橋さんを喜ばせる、あるいは彼女の興味を引く自信があるという状況なら「自信満々」でもしっくりきますが、仮にそうなら前後の記述に少し調整を入れてもらった方が良いように思います。

    「私はそのワードに少し顔をしかめた。今、あまり聞きたくなかった言葉【だった】」
    →「言葉【だ】」
     「だった」はもちろん過去形ですが、「聞きたくなかった」も過去形なので過去形が重複してしまいます。また、文頭に「今、」とあるので、文末「だった」を現在形「だ」に修正するのが自然でしょう。

    「差し出されたレシートを見ながら訊くと、立石は少し【考える風で切り出す】」
    →【考えてから話し始めた】
     この場合の「切り出す」は「(本題ではない話の後に)本題を切り出す」といった使い方をする言葉ですが、謎解きの話は既に切り出されているので、この表現は使わないのが無難だと思います。

    立石くんの台詞「いや、【 】商品の陳列してた時」
    →「いや、【俺が】商品の陳列してた時」
     直前の立石くんの台詞ではミドリさんが動作主だったので、ここで「俺が」という主語を省略してしまうと何の話か分かりづらくなってしまうと思います。

    「時間帯から考えて、そのサラリーマン達は【 】夕飯を買いに来たのだろうか」
    →「【遅めの】夕飯を」
     これは本当に一応という感じですね。

    「【と、】立石はさらりと【言った】」
    →(「と、」を削り)「【 】立石はさらりと【答えた】」
     文頭の「と」は「すると」といった意味だと思いますが、単に「と」を置いてしまうと直前の台詞を引用する、つまり直前の台詞を立石くんが言ったことになってしまいます。その上で、表現をコンパクトにすることを考えたらわざわざ「すると」を付けるような文脈ではありません。ということで、修正案ではどちらも削っています。
     原文の「言った」は別にそのままでも良いのですが、本作を含む会話文を主体とした小説だと「言った」が多用されがちなので、ワンパターンを避けることを考えて「答えた」という言い方をしても良いと思いました。


    「私はそこで一旦固まった。知らない単語が一つ紛れ込んでいる」
    → 後半の1文「知らない単語が一つ紛れ込んでいる」を削る。
     この直後に高橋さんが疑問を口にするので、わざわざ「知らない単語が(略)」と書く必要はないと思います。

    「やり方が卑怯だ。誘導尋問ダメ絶対」
    → 2文をどちらも丸々削る。
     個人的には、「やり方が卑怯だ」はあまりしっくりきませんでした。「やることが意地悪だ」、あるいは「意地悪なことをするものだ」ならまだ分からなくもないですが。
     「誘導尋問」という語は、直後にもう一度書かれるので、ここでは削って良いと思います。

    立石くんの台詞「会話の感じから、もう今は働かずに家庭に【入ったっぽかった】」
    →【入ったっぽい】
     これはそのままでも良いかもしれませんが、「~っぽい」という予想をしているのは会話を聞いた時点だけでなく高橋さんと話している「今」も変わらないはずですし、同じ文の中でも「もう今は」と言っているので、「家庭に入ったっぽい」とした方が良いと思います。

    第2話

    「【状況の確認と情報の提示】が終わった後、立石はそう口を開いた」
    →【情報(の)共有】
     基本的には「情報共有が終わった」と言えば情報の提示も状況の確認も終わったことになるでしょうから、シンプルな表現を目指してよいと思います。

    立石くんの台詞「名前は呼ぶものって、相場【は】決まってるし」
    →「相場【が】決まってるし」
     「相場が決まっている」という言い回しは前日譚である『珈琲は月の下で』にも出てきましたね。あちらは別に問題ないと思いますが、ここで同じようにこの言い回しをするのは少し違和感があります。というか、「珈琲は飲むもの」に比べて「名前は呼ぶもの」という考え方がしっくりこないんですよね。文脈から考えて、「人の名前なら『愛がない』ではなく『愛と呼べない』じゃないと逆に不自然になる」という意味でしょうから、立石くんにそう言わせるか、他の台詞をそのニュアンスを調整して補うかした方がよいと思います。

    「「それは、【物理的な理由】と【心理的な理由】ってこと?」」
    →「【社会ルール上の理由】と【人間関係上の理由】」あるいは「【場所的な理由】と【社会状況的な理由】」
     ここはどちらも迷いどころです。「心理的な理由」は「人間関係的な理由」に言い換えた方が良い、という発想は割とすぐに出てくるのですが、「物理的な理由」をどう言い換えるかはかなり微妙です(そもそもが専門分野も明らかにされていない大学生2人の会話なのでそういう厳密なところにこだわるべきではないのかもしれませんが、まあ、その場合はこのコメントをスルーしていただければと思います)。
     誰かを「愛」と呼べない「物理的な理由」というとき、普通連想されるのは物理学の法則が制約となって「呼べない」という状況でしょう。つまり、物理的な距離が遠すぎるとか、空気や水などの音を媒介する物質がないから声が届かなくて「呼べない」という状況です。当然ながら本文で言われているのはそういうことではないので(図書館や映画館で大声で私語ができないと感じるのは人間が社会的な文脈の中に生きる動物だからです)、これは他の言葉で言い換える必要があります。とはいえ、図書館や映画館といった場を理由にして「愛と呼べない」という状況を、人間関係上の理由と区別しながら言い表す端的な表現となると、残念ながら僕にはぱっと思いつきませんでした。ということで、苦肉の策が修正案です。

    「男性でも《愛》【と言う】人はいるかもしれないが、女性の方が圧倒的多数だと思う」
    →「《愛》【という名前の】人は」
     「名詞Aという名詞B」と書くとき、「と言う」という漢字を使うことは辞書的には間違いではありません。ただ、僕個人としては、発言するという意味の「言う」と区別することを考えると、ひらがなにした方が良いと思っています。

    「やっぱりそう来たか。【薄々途中で気づいていては】いたけれど」
    →「【途中で薄々気づいては】いたけれど」
     「薄々」は副詞なので、体言(名詞)以外の何かを修飾すると考えられます。ここでは当然「気づいて」を修飾しているのですが、少し紛らわしい気がするので、修正案では本文から語順を変えて「途中で薄々気づいてはいた」としました。
     「気づいてはいた」は、文法的に分解すると「気づいて」と「いた」の間に「は」が入ったものです。となると、「気づいていてはいた」だと「は」を除いた文が「気づいて」「いて」「いた」という不自然な形になってしまいます。「いて」を削ればすっきりするでしょう。

    立石くんの台詞「今までの話をまとめると……《ミドリ》さんは【妻】である《ユカリ》さんへの愛情はすでになく、《愛》さんに愛情を向けていて、たびたび夜に密会していた」
    →【奥さん】
     「妻」でも間違いではないのですが、これ以前の立石くんの台詞では「奥さん」と呼ばれていたので、一応。

    第3話

    高橋さんの台詞「それに、立石は例の言葉を音でしか受け取ってないんでしょ? だったら【、】」
    → 台詞を閉じる 」直前の「、」を削る。

    第4話

    「実はまだアップルパイの会計は済んでいなかったけれど、【今はそういう話ではない】」
    →【(今は)それどころではない】
     「今はそういうことにこだわるべきではない」、「今はそういう話をすべきときではない」といった言い方も考えてはみましたが、文脈上の軽さに比べて不自然に長くなってリズムが悪くなるように感じたので、修正案には短めの表現を考えてみました。

    立石くんの台詞「ほら、言ってただろ。『賛同したくない』って。【顔しかめたりとかもしてた】し、なんか理由ありそうだなーと思って」
    →【(ちょっと)マジな顔だった】
     個々人の感覚の話と言われればそれまでですが、「顔をしかめる」は小説ではよく見る表現ではあるものの、普通、目の前にいる相手に対して「今、顔をしかめてたよね?」と言うことはないと思います。「眉間にしわを寄せる」、「口角を上げる」などと同じで、「顔をしかめる」も、小説という思索的な場で微妙な仕草やその意味合いを感じ取るための表現と言えるでしょう。目の前に三次元の人間がいる状況なら、そういう観察をすっ飛ばして「今、こいつ不機嫌になったな(何か悪いこと言っちゃったかな)」とか「ニヤニヤしやがって」と感じるはずで、この文脈の立石くんもそれと同じ状況にあるはずです。ということで、修正案ではそのあたりを言い換えた、会話文として自然な表現を考えてみました。
     「マジな顔」の前に「ちょっと」を入れるかは微妙ですが、会話文なら特に意味もなく(「バカみたい!」の「みたい」と同じ婉曲の表現として)「ちょっと」を入れる人もいそうなので、( )で入れておくことにしました。

    高橋さんの台詞「『別れを切り出すと【、】私が【かわいそうだ】から、付き合い続けてるような気がする』って」
    →(「、」を削り)「切り出すと【 】私が【悲しむ】から」
     「AするとBだからC」という構文は「、」によってニュアンスが変わります。「AするとBだから、C」だと、「AするとBという良くない事態になるからCする(Aしないでおく)」という意味になりますが、本文のように「Aすると、Bだから、C」としてしまうと、「Aしたら、Bという状況が生まれたから、C」、つまり、AもBもCも既に現実化してしまったというように読めてしまいます。そのため、本文の「、」は削るのが良いと思います。
     恋人それぞれの関係性にもよりますが、僕の感覚で素直に考えるなら、「(彼氏が)別れを切り出す」ことと「私(雪音さん)がかわいそう」なことは直接的にはつながりません。「別れを切り出す」と、「私(雪音さん)が悲しむ」(二つ返事では了承してくれない)、その様子が「かわいそう」という話でしょうから、そこを補うか、話を直接的につながる範囲に収める必要があります。ということで、修正案として後者の案を考えてみました。

    「私はいとこ【――佐々木雪音】の顔を脳裏に思い描く」
    →「私はいとこ【――佐々木雪音――】の顔を脳裏に思い描く」
     僕もそこまで詳しくないのですが、「――」は( )と似たニュアンスで使われることがあり、その場合、文頭や文末に「――」がくる場合を除けば「A――B――が去った後」のように補足の部分を挟むことが一般的ではないかと思います。


     以上です。
     『珈琲は月の下で』のコメントには書き忘れましたが、僕からのコメントはこのように長くなってしまっており、他の読者の方々が作品を読むとき邪魔になりそうなので、ご確認いただいた後は削除していただいて構いません。
     長文失礼しました。

    作者からの返信

    「珈琲は月の下で」だけでなく、こちらにもコメントありがとうございます。とても嬉しいです。

    こちらのアドバイスもとても参考になりました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

    返信の内容が「珈琲は月の下で」のものの繰り返しになってしまいそうなので、こちらの返信はこれだけで失礼します。申し訳ありません。そして、本当にありがとうございました!

  • PM 11:37への応援コメント

    今回も日常系ミステリですね。

    お題がセリフとするにはかなり凝ったものなので構築が難しいと思います。
    「アイ」と呼ぶだけなら、部屋の入口辺りからならできそうです。
    最後の答え合わせシーンを変える必要がありますが、奥さんは里帰り出産中で、直接呼びかけることができないとかはどうでしょう?

    しかし、立石くんは、レポートよりも高橋さんとの会話の方が優先順位高いんですね。青春ですなあ。

    作者からの返信

    コメントありがとうございます。

    確かに、その説もありですね! 今回は二日くらいで考えたので、詰めが甘すぎました。

    立石は高橋最優先です。

    最後まで読んでくださりありがとうございました。