第8話 冒険者はハイリスク3
「お…お待たせしました!」
例の受付嬢がとある男を連れてきた。シャム猫のような耳を持ち、尻尾をもつ猫獣人だ。
「待たせた・私がこのギルドのギルドマスターのホーネストだ」
こいつがギルドマスターか。うわ、なんだこの爽やかイケメンは。あ、やばい今すぐ殺したくなってきた。どうしよう、あの顔を台無しにしないとという使命感が…
「先輩、まずは落ち着いてください…気持ちはわかるから」
赤坂にあとちょっとの所で止められた。そうだな、あとでさっさと潰すか。
「君たちの能力は、正直言ってすごい。私だって職業適性は剣士でBだ。まあ、それはいいとして。このギルドに入ってくれるならそれなりのものは与えるつもりだが、正直言って国家の犬になった方が稼げるぞ?
なるほど・要は忠告に来たわけか。だが、国家の犬になるのはごめんだし、各地を回って元の世界に帰る方法が探せない。
なので、冒険者じゃないと困る。
「いや、冒険者になるつもりだ。国家の犬はごめんだ」
「そうか。なら、このギルドのギルドマスターとして君たちを歓迎しよう、将来のエース達よ」
あ、うん。はい、ムカツクわ!爽やか笑顔でそういうの言ってるのは今すぐ潰したい!
腕が勝手に…手が反射的にグーに握られてワナワナする。あ、もう我慢の限界。全国のモテない男子の敵がここにいる!
「先輩、気持ちはわかりましたから落ち着いてください!今にも殴り掛かりそうな体勢しないでください!」
今度は、新田に諭されてしまった…
〇 〇 〇
「じゃあ、ギルドの仕組みを説明しますね…」
俺たちは結局VIP待遇で応接間に通され、そこでギルドの説明を受けることになった。
「ギルドというのは、ご存じの通り冒険者の仕事を斡旋、仲介する組織です。冒険者の方々は基本、各地のギルドに登録されます。所属ギルド以外での以来の受託は普通はできません。それこそ紹介状でもないと。自由にどこのギルドでもさせたいのですが、何分冒険者というのはまとまりがないので管理し辛いのですよ」
そういうこと。あのラノベでは自由に行き来できてたけど。
「次に、ランクですね。適切な仕事を斡旋できるように、ランクをもうけさせていただいてます。ランクは上からSS、S、AA、A、B、C、D、E、F、Gです。Gは基本的に薬草採取などの非戦闘が主ですが、Fからは、戦闘も増えてきますね。例えば、ドラゴンニューとと呼ばれるトカゲを10匹倒してこいとかそういうのですね。皆さんは、ギルドマスターからの指示で、特例としてFランクからスタートになります。その代わり、訓練を強制受講ですね」
仕組みはわかったが、なんか最後にさらっと重要なこと言わなかったか?
「パーティを組まれる場合も、パーティごとにランク分けされます。ランクは個人と同じです」
あ、面倒だからってこの受付嬢省略しやがった。
「また、ギルドでは冒険者の商売を管理する商業部、魔物の使役や、新種登録を行う魔物部、土地を斡旋する土壌部などがあります。カウンターの上にちゃんと書いてありますから安心してください」
その字が読めなくてこちとら困ってるんですけど。ただ、俺の読んでたのとは違うということははっきりわかった。この世界では全て一括でやっている。どうせ分かれるのが面倒くさかっただけだと思うが。
「また、これは仕事としての決まりと言いますか。1年以内に依頼を1つでもこなさなかった場合は退会処分、10回連続で依頼を失敗しても退会…よくてランクGに逆戻りです。そのようなペナルティがあることをご留意くださいね。そうでもしないと『ひゃははは、俺は冒険者だー!』とか言って暴れる人がいるので」
そこらへんは同じなんだ。でも1年に一回やればそれで一応はいられるのか。
「では、最後に冒険者証ですね。ここには所持者のランク・職業などが表示されます。もちろん職業適性と魔法適正も余すことなくきっちりと。詐欺防止のために所持者の魔力にのみ反応するような魔術がかけてありますので。これを紛失するとかなりの金額かかることになりますので。なくさないでくださいね?」
誰が現代で言う身分証明書、家の鍵、定期、S〇ICA、マイナンバーカードに準ずるものをなくすか!そんなアホに見えます?俺たちが。
「以上で…いえ、1つ忘れていました。ギルドマスターが『エース候補』といいましたが、この【エース】というのは所属ギルドでの階級です。階級は【エース】が一番上で、【エリート】と続きます。1人のこともあれば、パーティ全体が【エース】と認定されることもあります。【エース】は基本的に所属ギルド内で一番ランクの高い、もしくは実力を持ったパーティ、人物がなります。【エース】は実質ギルドマスターとほぼ同じような立場ですね。そのギルドをまとめる役割もありますので」
最後に妙なのが出てきたな。つまり、あれだ。ここでもカーストがあるということだ。
面倒くさいな…。
こうして、人間関係だのカーストなどはこの世界にも存在することにげんなりする俺であった。
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