大地が震えている。塀が泣いている。

振り向いて、真っ赤に染まった両目を上げた。

誰か立ってる。

「こちらへおいでまし。時間じゃ」

しわがれた女の声がした。ぶくぶくと腫れた顔に、掻き毟ってほとんど残っていない髪がよく目に映る。


「死ぬ間際に、夢が見られて良かったのう」


「な、に…」


「頭を見てみろ」

震える指で頭へと手を伸ばした。

包丁の柄が触れた。

それをなぞると、刃の部分と頭がくっついているのがわかった。


「…どうりで、誰もいないわけ」



目はもう開かなかった。


代わりに、女がふっと笑った音と、救急隊員の叫び声が聞こえた。

ああ私、夢を見てたのか。



じゃあ、もしかして私が夢だと思ってたあの光景が、


現じ


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