先祖話
ブログにのせる、ある猟奇的な事件を起こした私の先祖の話を思い出さなければならない。
江戸時代中期のことだ。
一人の女がいた。名前はおはな。
町でも噂が起こるほどの美人で、器量もよく、料理も裁縫も上手かった。
当然言い寄ってくる男はたくさんいた。しかし、おはなは誰のお誘いも受けなかった。
不思議に思ったおはなの友人の何人かが跡をつけたところ、面白いことが判明した。
おはなは仕事終わりにいつもある場所に行くのだ。
それは町で一番大きな馬小屋だった。
おはなはその中でもとびきり美しい馬を愛していたのである。
しかし、ある日おはなに求愛して玉砕した武家の男がその馬を斬り殺してしまう。
おはなの姿はショックのあまり、変貌した。
顔は泣き腫れ、髪は抜け落ち、骨の浮き出た体になってしまった。幽霊のように。
男達も友人達もおはなの美貌がなくなると、別人のように冷たくあしらった。誰にも相手にされなくなったおはなの心は、だんだん荒んでいき、怒りの矛先は世界に向けられた。
ある夜ついにおはなは研いだ包丁を懐に忍ばせ、赤い空の中で武家の男を刺し殺してしまった。
目に留まった人間を誰かれ構わず刺し殺していく。真っ赤なしぶきが空に上がり、血の染み込んだ地面は紫に変色した。
その夜、町は何十もの死体を出した。
狂気じみたおはなの目は、奇しく歪んでいたという。
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