第14話 理解者

   ◆◆◆


 な……んだ……この腹の衝撃は……!? おかげで眠気が吹っ飛んだんだけど……。

 目を開けて衝撃を与えた原因を確認する。と……腹の上に幼女がいた。

 …………。


「え、事案?」

「雪和くん、何言ってるの?」


 ……あぇ? 咲良? ……何で咲良の顔が俺の真上に?

 ……いや、待てこの状況は何だ?

 俺は寝ている。

 腹の上には満面の笑みを浮かべている幼女がいる。

 見上げると咲良が心配そうに見下ろしている。

 そして後頭部にはモチモチで柔らかな感触がある。


 …………。


「俺達、いつ結婚して子供作ったっけ?」

「ふぇ!? そ、そそそそそんなことしてないよ! まだ早いよ!?」


 え、あぁ、うん。そうだよな。まだ全然早いよな。

 ……え、じゃあ誰この子?


「どーなつにーちゃん、おっはー」

「え……おっはー……?」


 ……俺をそういう風に言うのは……。


「れ、レイカ、ちゃん……?」


 てことは……。

 必死に思考をフル回転させていると、誰かがレイカちゃんの襟首を掴んで持ち上げた。


「こらっ、レイカ! そんな風に起こしちゃダメじゃないか!」

「えへへー、ごめんね〜」


 ……この声……。


「す、数寄屋……? どうしてお前がここに……?」

「あ、やあユキカズ。僕とレイカは散歩に来てたんだけど……まさかユキカズとサクラさんが、こんなにも仲がいいなんてねぇ……あ、いや気にしないで。兄妹仲がいいのはいいことだから」


 ……あっ、この体勢……!

 慌てて起き上がり、咳払いを一つ。


「でも、兄妹で子供っていうのは流石の僕も受け入れ難いなぁ。妹がいる身として、共感しづらい」

「あ、あれはその……ち、違うんだ、本当に」

「ああ、安心してよ。ユキカズがそんな妄想をする変態だとしても、僕はずっとユキカズの友達だから!」

「分かってない! お前は何も分かってないぞ!」

「妹を愛してる気持ちはよく分かるよ。僕も妹は可愛くて仕方ないからね。シスコンと言うなら呼んでくれ、僕もそう言わせてもらうから」

「だから違うんだってば!」

「大丈夫。誰がどう見ても、ユキカズは立派なシスコンさ!」

「お前話し聞けよ!?」


   ◆◆◆


 咲良とレイカちゃんが一緒に手遊びしてるのを見ながら、俺は数寄屋を隣に座らせて今までの経緯を話した。

 だって話すしかないじゃない。あのままだと勘違いしたまま高校生活を送ることになるし。


 ある程度のことを数寄屋に話すと、数寄屋は手を口に当てて首を傾げた。


「おかしいな。僕はエロゲの話しをしてたつもりはないんだけど」

「俺もそんな話しをしてるつもりはない」


 と言うか、こいつもエロゲとか知ってるのね。人は見かけによらないな。


「まあ冗談はこれくらいにして、そろそろ本当のことを話して欲しいかな」

「いや、マジ」

「……マ?」

「マ」

「……まぁ〜」


 そんな口を押えてマダムみたいな驚き方されても。


「へぇ。面白いこともあるもんだね」

「念を押しておくが、誰にも言うなよ?」

「大丈夫大丈夫。その辺の分別はついてるから。流石に友達のプライベート関係を暴露するほど、クズじゃないよ」

「本音は?」

「めっちゃ言いたい」

「テメェ……」

「冗談、ジョーダンだよ(笑)」

「(笑)を付けるな!」


 ったくこいつは……どこまでマジなのかイマイチ分からん。

 俺は適当に紙コップにオレンジジュースを入れると、数寄屋とレイカちゃんに手渡した。


「ありがとう、気が利くね」

「あーりーがーとー!」

「気にすんな」


 俺と咲良も、自分の紙コップに入っているオレンジジュースで喉を潤す。ぷはっ、うめぇ。


「ユキカズ」

「何だ?」

「安心してよ、僕は君達の味方だし、何か悩みがあれば相談に乗るからさ」


 にこやかに笑う数寄屋。レイカちゃんと似た笑顔だ……やっぱり、本当の兄妹だな、二人は。


「さて、僕達はもう行くよ。ユキカズ、明日駅前で」

「あ、おう。またな」

「レイカ、行くよ」

「あーい!」


 数寄屋とレイカちゃんは靴を履くと、俺達に手を振って去っていった。

 はぁ……まさかこんな所で数寄屋に会うなんてな……。


「……あ、悪い咲良。俺達のこと……」

「ううん、大丈夫。それに……雪和くんが信用して話したなら、私も信じるよ」


 咲良……ほんといい子……!

 だけど……ま、数寄屋なら大丈夫だろ。何となくだけど、そんな感じがする。


「さてと……どうする咲良? 腹ごなしに散歩でも行くか?」

「そうだねぇ……何だか今日はもうこのままでもいい気がしてきた」

「あ、やっぱり? 俺も、今日はここでのんびりしたいって思ってたんだよ」

「膝枕しようか?」

「そ、それは意識があると恥ずかしいので……」


 結局この日は、花見をしながらずっと他愛もないことを駄弁って終わりとなった。


 ……俺達、枯れてんのかなぁ?


   ◆◆◆


【咲良・紅葉・夏海LIMEグループ】


 紅葉『咲良っち、進捗よろ』

 咲良『とても進展しました』

 夏海『処女卒業おめ(*´ω`*)』

 咲良『違うもん! なんと……膝枕してあげました!』

 紅葉『おおっ、やるじゃん!』

 夏海『手を繋いで、膝枕と来たらあとはその先だね!(`・ω・´)』

 咲良『あ』

 紅葉『ん?』

 夏海『ん?(・ω・)』

 咲良『……手、繋ぐの忘れてた』

 紅葉『オゥ……』

 夏海『咲良ちん、残念な子(´・ω・`)』

 紅葉『よしっ、月曜日の昼に作戦会議だ!』

 夏海『おー!\(^o^)/』

 咲良『お、おー!』

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