第17話 部室での魔王軍

 無事に部活設立とゲーム部からゲーム機を勝ち取った魔王軍(VRゲーム部)。

 彼らは現在部室で楽しくおしゃべりをしている。


「いやー。先輩がゲーム部を叩きのめしたおかげで放課後もこうして楽しく過ごせますね」


「ん。さすがはキョウ。魔王と呼ばれるだけはある」


 そんなVRゲーム部の女子たちは良を褒める言葉を並べながら話している。


「いや、お前らそれ何回目だよ。さすがに恥ずかしいからやめてくれ。それと空、あえて言わなかったが一応リアルでキャラ名出すのは……」


「別にいいだろ良。この学校の他のやつ誰もお前をSWO最強の魔王キョウだって認識してないんだから」


「そうなのですか?放送までされたのに我が魔王の名が広まってないなんて…」


 肩を落とす剣人に快は「まぁそれにも訳があるんだけどな」と説明をする。


「そもそも良含め俺たち魔王軍は二つ名があるからな。ほどんどの場合キャラ名じゃなくそっちで呼ばれることが多いんだ。だからSWO内だと恰好や二つ名が広まるだけで俺たちと交流のあるプレイヤーならまだしも交流が無いプレイヤーはキャラ名を知らないんだよ」


 快はそれに加えて「良の場合は俺たちより噂がこんがらがってるから放送したり魔王と名乗ってもSWOの最強魔王だとは思われないんだよ」と付け足す。


「なるほど。これも我が魔王の力が強すぎる故ですか」


「ま、そういうことだな」


 と剣人は快の説明で満足したようだ。

 だが当の良は肩を落としため息をつく。


「ただあの放送以降さらに人に避けられてる気がするんだよな」


 そんな良に快は「そりゃそうだろ」と返すので良はどういうことだと快に目を向ける。


「大人数を一人で蹂躙し、相手の部長をいたぶるようにぼこぼこにしたんだ。そのせいでやばい奴っていう噂が噂じゃなくて本当だってことになったからな。前より避けれるのに不思議はないだろ」


 そんな容赦のない快の言葉に良はさらに落ち込む。

 そんな良に姫と空は近づき励ましの言葉を贈る。


「先輩、落ち込むことないですよ。私たちは先輩がとっても素敵だって知ってますから!」


「ん、姫の言う通り。キョウのことを知らない人の言葉なんて気にしないで。キョウにはわたしたちがいる」


 そんな美少女二人が良を励ます姿を見る快と剣人。


「まったく、あの二人ゲームと変わらないな」


「さすがは我が魔王ですね」


「……剣人、お前も変わらないな」


 そんなリアルでもゲームでも変わらない魔王軍にあきれながらも笑う快であった。













 _____________________


「先輩!テストです」


「え?」


 いつも通り部室でだらだらと過ごしていると当然姫が言い出した。


「だから、明日からテスト期間で部活が出来ないんですよ」


「そういえば来週中間テストだったな」


 時はすでに五月に入り、今は新学年最初のテストである中間テストの時期。

 そしてその中間テストの一週間前からテスト期間となり、すべての部活は休みとなる。


「ということで明日から部室で過ごせなくなるんです」


「いや、うん。勉強しろよ。そのための部活禁止なんだからな」


 良は当然の正論を姫にぶつける。

 すると「えー」と言った風な姫が良をじっと見る。


「先輩は勉強できるんですか?」


「まぁ、そこそこだな。というか今思うと姫も剣人も去年は受験生だったんだよな。その割にはいつもゲームしていたような気がするが?」


「あー。実はですね、ゲーム中にもちょくちょく勉強していたんですよ。今はゲーム内にも勉強の道具を持ち込めますからね」


 そんな姫の答えに「全然気づかなかったな」と良は感心をする。


「剣人は?」


「我は学校にいる間に勉強をしていました。家では基本的に剣の修行があったので」


 さらに剣人はその剣の修行の時間をゲームでもできると家族を説得して時間を作り、勉強と剣を両立をしていたらしい。


「あとは、快さんと空ちゃん先輩ですが……」


「俺は基本的に教師が出しそうなとこを山張って勉強する感じだな。空さんに関しては言うことないだろ」


「そういえば空ちゃん先輩は成績優秀者ですもんね。なら勉強のコツとかはあるんですか?」


 そんな姫の質問に空は少し考え、


「一度見ればだいたい理解できる。あとは問題を解いて理解を深める。この繰り返し」


 と淡々と語る。


「おぉ。空ちゃん先輩はいわゆる努力する天才ですね。てっきり一度見れば分かるでしょ?みたいな完全天才かと思ってました。まぁ一度見てだいたい理解できるのも十分すごいですが」


 姫は空に尊敬のまなざしを送る。

 そんな姫に向けて良は「それで」と口を開く。


「何か言いたいことがあったんじゃないのか?」


 その言葉に姫はそうでしたと部室内を見渡し。


「明日からテスト期間で部室が使えないので、別の場所でみんなでテスト勉強しませんか?」


 と提案をするのだった。




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