第15話 一方現実では

(放送部)


「う、うわぁ〜。……」


「こ、これは。……ひどいですね」


 映像を見ながら引いた声を出しているのは放送部の二人。

 映像にはキョウがゲーム部相手に無双している姿がうつしだされている。


 そして、数分後に見事キョウが勝利した姿が映し出される。


「………」


「西野さん、西野さん。放送中ですよ」


「はっ!すみません。あまりに一方的すぎてびっくりしてました。……さて、今回の勝負は見事、VRゲーム部が勝利を収めました」


「これによりVRゲーム部は正式にこの創星学園の部活動となりました。さらに事前の賭けによりゲーム部からVRゲーム機が贈られます」


「それではここで一旦休憩に入ります。引き続き、『部活動戦後時代注目の部活対決生放送』をお楽しみください」




 ―――――――――――――――――――――

(放送部舞台裏)


 一度休憩に入った放送部員2名は先のキョウ戦いについて話していた。


「ねえ東山さん。鏡さんの戦い方すごかったね」


「そうですね。西野さんのへなちょこ攻撃とは次元が違いましたね」


「むっ。それなら東山さんの盾で、あの大剣の攻撃防げたの?」


「出来るわけ無いでしょ!あれは次元が違います」


 その言葉に西野は「そんな開き直る?」と、ツッコミを入れる。


 そんな談笑をしていると、


『西野さーん、東山さーん。次の放送始まるよー』


 と、声をかけられる。


「えー。もう休憩終わりぃー」


「西野さん文句言わないでください。いきますよ」


「はーい」


 二人は放送へと向かった。





 ―――――――――――――――――――――――

(創星学園大学部)


 創星学園大学部の食堂。


 この創星学園には様々な学部と生徒が在籍しており、この食堂はどの学部の生徒でも利用できるため、大学部の生徒たちの憩いの場になっている。


 そんな食堂のとある一席。

 二人の女子大学生が向かい合いながら高等部の放送を見ている。

 二人の女子大学生の内、一人は長い金色の髪をもち優しい微笑みを浮かべている『聖女』こと、天龍美咲てんりゅうみさきだ。

 そして向かい合ってるのは『マスタースミス』こと、愛作万理奈あいさくまりな


 どちらも表には出ないが裏から皆を支える魔王軍にとって欠かせない人材だ。


 そんな二人はVRゲーム部VSゲーム部の対戦実況の放送まで待機している。


「美咲〜。どうしてこんな面白そうなことになってること早く教えてくれなかったの〜」


「逆になんで万理奈は知らなかったんですか?キョウさんから聞いたりは?」


「してないよ!私もね、なんか最近キョウくん達そわそわしてるけどなんかイベントあったかな〜?って思って声かけたけど、なんかはぐらかされちゃたんだよ!まさかこれだったとはね。というかなんで美咲は知ってたの?」


「私は空から聞いたんですよ。なんでも、キョウさんの大活躍が見れるから楽しみにしてて。と言われて」


「あ、そこは空ちゃんじゃなくて、キョウくんの活躍なんだね。にしても活躍って、いつも活躍してるだろうに。と、もう始まるね」


 二人は一旦会話を中断し放送へと目を向けるのであった。



_______


『【獄炎】』


『ウワァァ!!!』


「うわぁ〜。キョウくん容赦ないなぁ」


「ふふふ。まぁ、魔王ですからね」


 二人は画面の中で無双しているキョウを見て呆れている。


「まさか、空ちゃんが言ってたキョウくんの活躍って、キョウくんだけで相手の子たち倒すつもりなの?」


「みたいですね、ほら空たち座って何かやってますよ」


 美咲が操作をし、別のカメラを映す。

 そこには、


『はい。次、空ちゃん先輩の番です』


『ん。ここで、このカードを場に出す。これで私の兵士は強化された。次はカイの番』


『う〜ん。じゃあ俺はここで、トラップをセット。さらに……』


 と、ボードゲームで遊んでいる魔王軍の姿がある。


「ねぇ、美咲これって……」


「これは〜、遊んでますね」


 そう、遊んでいる。

 たしかこの勝敗、女子たちにとって自分たちが賭の対象となった命運をかけた試合のはずが、試合そっちのけで盛り上がっている。


『あれ、そういえばケンは?』


『あぁ、ケンならキョウを見てるよ。なんでも、魔王の活躍を目に焼き付けると約束したので。だってさ』


『ケンくんは真面目ですね。どうせ先輩が勝つのに』 


 話の内容を聞く限り、どうせキョウが勝つからそれまで暇を潰していようという感じらしい。


「いや、でも応援してあげればいいのに」


「あら、万理奈が珍しくまともな事言ってますね」


 万理奈が魔王軍の行動にため息をつくと、美咲は驚いた表情をつくる。


「え!?酷くない?」


「そんなことないですよ〜。あ、もう決まりましたね」


 そんなこんなで、キョウが勝ったという映像が映し出され、魔王軍は手を振りキョウの元へ向かっている。


「キョウくん。まさか、さっきまで試合そっちのけでボードゲームしてたとは思ってなさそうだね」


「ええ、恋する乙女の変わり身の速さはすごいですから」


 二人は呆れながらも、みんなを祝福しようと席を立った。

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