第14話 それぞれの出発
「それじゃ、お願いね。ハク」
『ああ、心得ている。
アンに〔鑑定〕を頼み、その返事をもらうだだ。そのくらいならすぐ済む』
「アンの仕事の具合もあるからすぐ済むかは…ちょっとわからないよ?
でも、もし早く済めば合流してほしいかな。あ、でもでも、無理はしないで!
その瓶は、鑑定料代わりにアンにあげるって伝えてね!」
(セージの強さは認めているとはいえ、何日も2人きりにするのは…心配だ……)
『わかった。
もちろん無理はしない(が、最短で)。
我が早かったら(いや、早く片付けて絶対に)、追いかけて合流しよう』
お願いね。とハグをされ、ああ。と頬擦りを返して出発した。
マリーと何日も離れるのはいつぶりだろうか?
今までマリーと一緒に出掛けることはよくあるが、お使いに出ることはほとんどない。
それは、マリーを守ることが我の一番の仕事だからなのだが、今回は特別だ。
依頼者のセージの状態は、我が見る限り芳しくない。
今は、一時的に好転してるように見えているが出来ることならなるべく早く解呪したほうがいい。
早く解呪するには…と考えるまでもなく、我は先代のアンの所にお使いに出て、マリーはユニコーンのシルヴィアの所に行くのが効率的だ。
しかし、……心配なのだ。
往復で最短5日、天候が悪いともっとかかる。
マリーも妙齢だ。普通なら結婚していてもおかしくないのに、まだシルヴィアのヤツが目を光らせている。普通、妙齢になるとユニコーンも離れて行くのに…
まぁ、マリーも仕事ばかりで出会いもないからそっち方面はさっぱりなのも原因ではあるが…
セージがマリーに好意を持っているのはわかっている。
しかし、セージはそれを努めて表に出さないようにしているようだ。自分の状態をわかっているからなのだろう。
だが、若い2人だ。
セージの胸に秘めている感情が制御出来なくなるかもしれないし、マリーも何かのきっかけでセージを意識しだすかもしれない。
(アイツ、強いし、気遣いもできるし、
その気になられたら、マリーはきっと…)
いやいや、まだおきてもいない事にやきもきしててもしょうがない。まずは急いでアンの所まで行こう。
(大丈夫。アンのことだ。
たとえ忙しくても絶対〔鑑定〕する!
なんたってS級の〔鑑定〕だからな。急ぎの仕事があったとしても優先してくれるさ)
最短距離を〔隠密〕で突風のようにかけていく。行き交う人や、馬車を追い越して。
*
「では、私達も行きましょう」
ハクを見送った後、私とセージさんもユニコーンのシルヴィアの住む森へと出発した。
「シルヴィア様の森までは、馬を使って2日くらいかかるのでしたね」
「ええ、隣のシオール領の近くの森です。
でも、それは天気が良ければなので、もう少しかかると思っておいた方がいいかもしれません」
「わかりました。
シオール領の近くなんですか?
シオール領は、何度か滞在したこともありますよ」
懐かしそうに、いくつかエピソードを話してくれた。
話を聞いているうちに、気にしてなかったけど、もしかしたら彼に王都の
(話の内容からかなり親しそうな感じだし、十分ありえる)
そう考えていると、…あ、あのマリーさん
と遠慮がちに声を掛けられた。
「ちょっと提案があるんだけど…もしよければ、もう少しくだけた感じで話さない?
年もあまり変わらないし、向こうの世界の話もしたいし…さ。どうかな…?」
少し緊張気味な面持ちで私に提案する。
(ああ、やっちゃった…。
私が仕事用で接してると、気が休まらないし、気軽に話もできないよね…)
「も、もちろん大丈夫です。
すみません、私がそこに気が付かないといけないのに…話しかけづらかったですよね。
もし、まだ気になった事とかお願い事とか何かあったら遠慮せず言ってください。
あ、敬語は、徐々に直すので今はこのままでもいい…ですか?」
申し訳ない気持ちで頭を下げ、尋ねた。
すると、彼はホッとしたのか表情が緩み、
「もちろん、徐々にでいいよ。
ごめんね、わがまま言って。
依頼者だからさ、俺に気を使うのは仕方ないって思ってたんだけど、でも、やっぱり気軽にも話したくて。
解呪にどのくらいかかるか俺にはわからないけど、同じ家に住んで一緒に行動することが多いから、お互い外面だと疲れるだろう?
これまではハクもいたからよかったけど、今日からは2人きりだしと思ったんだ。
で、わがままついでにお願い聞いてもらっても良いかな?」
「そんなこと、全然わがままじゃないです。
普通なら私が気遣わないといけないことです…ごめんなさい、気を遣わせてしまって。
どんなお願いですか?私にできることなら何でも聞きますよ」
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