第48話 もしかしては大事

見てなかった可能性に気付いた翌日、だからと大きい変化もございませんです。まあ思うことはありますよ?そりゃ愛し合ってなかったと分かる瞬間てあれじゃないすか、しんどいじゃないすか。


[放課後暇な方々、津原よりご相談がありますがどうでしょうか。※ちなみに今の俺に会うことは、かなりデメリットを伴います。責任はおいませんピース。]


と朝にメッセージを送り、家を出て学業をこなす。昼には一人屋上で風に吹かれながらご飯を食べ、放課後はあっという間に訪れました。俺の一日何もねえな。さて図書室に行きますか。


「あっ津原くん。」


教室を出ようとする俺を止めたのは、あらあら橘さんじゃないの。最近普通に話し掛けてくる事多いな、絡むほど俺への風が強くなるってか?


「どうかしましたか。」


「ううん……津原くんこの後どうするの?」


「と言いますと、暇かどうかって聞いてるんですか。」


「そ、そうなっちゃうかな。えへへ。」


照れくさそうに笑う橘さん、その顔にクラスの男子何人かがにやけてやがる。今すぐ立ち位置変わってやるから、おらこっち来いよお前ら。


「……俺は忙しいですね。なのですみせんが、そろそろ失礼します。」


「そうなんだ、どこ行くの?」


「それを言う必要はないと思います。」


「ご、ごめんね。」


俺にしては語気が強くなった、いやもっと強い言葉使ってたわうん。さて橘さんといてもデメリットしかないんだ、さっさと去るに限る。


「「………」」


やだ着いてくる!何この人無言で着いてくるんだが。困ったな俺今日は真面目モードなのに、これじゃ全員を集めた意味が……いや待てよ。今図書室には俺の精鋭たちが揃ってて、そこに敵の総大将を連れていくと。


「あの橘さん。」


「なになに!」


うわ名前呼ぶだけで笑顔だよ、やめてくださいよキツイですって。


「俺は図書室に行くんだけど、どこまで来るんですか?」


「へ~そうなんだ。私も最近本読んでないから、迷っちゃうかもな。」


「はあそうですか。」


ナチュラルに図書室来るつもりだよこれ。あー面倒だな、あいつら巻き込んで決戦と行きますか!?おっしゃ行こうじゃねえか!


[すまん橘さんもそっち行く許せ。]


事前にお知らせだけしとく。浅原辺りは来るなら逃げなきゃだし、この邪悪と会うにはまだレベルが足りない奴がいるやもしらん。

にしても楽しそうだな当の邪悪は、何が楽しいんだよ俺には理解できねえ。そして図書室につき扉をノック、これこそ開戦の合図ってわけさ。


「さーてと。」


いつも愛用してるテーブルへと向かう俺、橘さんは本に目もくれず後ろにいる。嘘つきやがって泥棒が始まるぞ。


「おー本当にいる!」


「おい才太、それは失礼だぞ。」


[いやはや敵陣に乗り込むとはね。]


「どうするんだ津原よ……」


「おーあの人が元カノさんすか?」


「そうよ、あと一応あたしの友達。まさかこうなる日が来るなんてね。」


「……」


騒ぐ馴染みと同級生たち、無言で睨む先輩。てか浅原いるし、先輩来てくれてるしこいつら最高じゃねえか。ひとまず席に座る事にした俺、その隣に座る橘さん……ん?

何かの間違いだろう。俺は1つ横に席をずらす。すると橘さんもずれて俺の横に座る、あっこれいたちごっこだ。


「しゃーっ!!」


と威嚇しながら俺の隣を七畝さんがブロック、助かったぁ。


「どちら様ですか?」


「先輩さんと覚えたまへ、津原くんの元カノさん。」


「そうですか他人の先輩さん。」


助けて。さて机に着席してみたが、俺は七畝さんと橘さんに挟まれる。反対側に才太たち三人、そしてサイドに心咲さんと浅原だ。


「真祐美ちゃんもいたんだ。」


「ええ。この際だし知ってるでしょうけど、最近津原たちと一緒にいる機会が多いの。それで今日も集まったわ。」


「へ~真祐美ちゃんと津原くんがねえ、そっかそっか。」


「……なあ高志、俺腹痛いかもしらん!」


「逃がさないぞ才太。ここまで来たらもう、逃げ場はないと知れ。」


[まさにキャットファイト。]


「このイルカショーは見物だ。」


「お、おぉう、凄い空気っす。」


おっと朱音のコミュニケーションの為だ、と思いだし全員が覗ける机の真ん中にスマホを設置する。おい華狼自分の世界に入るな。


「津原くんどうしたの?このスマホ……あっ!連絡先の交換なら」


[違う。私の会話に、これは必要なの。]


ピコン、と通知音と共に表示される言葉。橘さんはそれを見て、自分を指差す朱音を見る。


「変わったやり方だね。」


[面倒なら無視で結構。]


「一応津原くんの友達さん?でしょ。ならちゃんと相手するよ。」


[それはどうもありがとう。]


「よし皆一回注目、はいこっち見ろよ~。」


図書室に他誰もいないのは確認済み、するとここは俺達だけの世界なわけ。なのでもう会議室です、異論は認めません。


「今日は急に来てもらって助かる、ちなみに橘さんは呼んでもいないし何故いるか分からない。俺に答えはない。」


「なんかごめんね?津原くんが図書室に行くって、私も行きたかったから着いてきただけなの。」


「けっ!どうだか。」


[あっそ。]


「偶然もあるんすね。」


「珍しいこともあるな!」


「才太静かにしておけ。」


「クラスの女神様の裏の顔……か。」


「菫に読書の趣味なんてあったかしら?」


「よぉし良いか、この状況で俺が一番困ってるんだ察してくれ。ひとまず橘さんはいないものとする。」


「酷いよ津原くん……」


そうやって泣き顔したら良いってか、残念だな俺には効かねえ。


「そうだ進士!相談てのはなんだ!」


「あ、ああそうか本題はそれだったな。」


[あまりのイベントにとんでた。]


「自分にやれることなら力になるっすよ。」


「今さら退くことはないだろう、自分も付き合う。」


「七畝さんは、ずっと味方でいるよ。」


「あたしもなんだかんだ、ここ好きだし。あんたに協力するのも義理よ、仕方なしなんだから。」


「私も話し聞いてて、何か答えれたら力になるね!」


間違いなく橘さんは力になれん、何せこの人の事を話すような機会だからな。


「俺の相談は他でもない橘さんだ、その件では七畝さんに世話になってな。」


「そのせいで私ちゃん、嫌われちゃったけど……」


「いや今は助かったと感謝してます、嫌いじゃないすから。」


「ひゅう津原くん愛してる。」


「あっはい。みんなこれまで橘さんと俺のハートフルストーリー、たっくさんお聞きいただいたかと思います。」


「自分もこないだ聞いたっす。」


「そう、これで全員が知ったわけだ。ここからが今日の議題とも言える、俺の相談になるんだが……橘さんもどうせなら正直に答えてくれ。」


「うん分かったよ!津原くんの為に頑張るね、でもハートフルストーリーって?」


ハートフル()な恋愛模様を今日まで話し、どんな状況にあったかを知るこいつら。そして当人である橘さんもちょうど確保した。

俺がこれから話し合う事、それはもちろん七畝さんとも話した忌まわしい日々。それでいて大切に仕舞ってあったあの日々だ。


「俺なりに答えは出てるんだが、この場全員の見方が欲しい。俺が一人盲目に、ただ突っ走って馬鹿な真似しないようにな。」


大きく息を吸う、一人の時は言えたのに今は中々出てこない。口にしたくないのか?怖いのか?そうだろって肯定されるのが怖いのか?今さらそんなことで、俺は悩んでるのか?


「……橘さんが、俺を、好きじゃなかったかもって話だ。」




視界の隅で橘さんがビクッと反応、もう逃げるわけにいかない。

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