最弱勇者の英雄譚

ギン次郎

千年の旅路

 進む。

 真っすぐと、ただ真っすぐと、闇の中を進んでいく。

 前へ、前へ、前へ。


 この旅が始まってから一体どれくらい経っただろうか。

 十年? 百年? 千年?

 ……分からない。

 もう、とうの昔に時間の感覚なんてなくなっていた。

 自分の歩みが始まってからどれくらい経ったかなんて分からないのだ。


 この旅はあとどれほど続くのだろうか?

 もう終わりはすぐそこか?

 それともまだ半分程度か?

 もしくはようやく一割程度進めたくらいか?

 ……分からない。

 最初からこの旅がどれほどの年月を有するかなんて知らなかったのだから。


 だが、そんなことは関係なかった。

 ここまでにどれほどの時間を費やしたかなど関係ない。

 あとどれくらいで終わりがやって来るのかなんてどうでもいい。

 例えここまでに千年費やしていようと、例えここがまだ旅の始まりの始まりでも。

 歩みを止める理由などにはならないのだから。


 進む。

 真っすぐと、ただ真っすぐと、闇の中を進んでいく。

 前へ、前へ、前へ。



 あの日に交わした約束を果たすために。

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