ある車掌

ゆき

第1話

蓮 side



「ふわぁ〜」

欠伸が出てしまう。毎朝の"満員電車"には骨が折れる。今日は"優先席"しか空いてないくらいの混み具合だったから、座ってしまったけど……"優先"とはいえ、やっぱり掲示してある対象の人に座って欲しいよなぁ。高齢者,妊婦さん,障害のある人……そう思っていると次の駅で杖をついている女の子が乗って来た。代わろう!

「すみませーん。すみませーん。」

「……はい?どうされました?」

「あのー……もしよろしければ、こちら座ってください。」

勇気を出して、そう言うと

「ありがとうございます😊 助かります。」

彼女はそう言ってくれて、ニコッとした。か、可愛い😍 理由はわからないケド、何か障害があるんだよな……一見普通の子に見えるケド、杖をついているし(苦笑) 

「すみませんっ。」

偶然降りる駅が同じだったので、思い切って声を掛けてみた。

「はい?……あ、先程はどうも。代わっていただいたので、次の駅で降りるのかと思っちゃいました(笑) ……こちらの駅を利用されているんですか?」

「あ、はい。この近くの会社なんです。」

そう言って、社名を伝える。

「あ、そうなんですね。私は××図書館に勤めてます。……と言っても、この状態なんで"裏方"なんですけどね(苦笑)」

「えと……貴女はいつもさっきの車両なんですか?」

「はい、降りる駅で"エレベーター"が近いので(苦笑) 」

彼女はそう言って、指差した。

「あ、そうなんですね。俺もよくあの車両に乗っています。……あ、すみません。自分の名前も名乗ってないのに、先に会社名をお伝えしちゃって(苦笑) 俺、月本蓮(つきもとれん)って言います。」

「ふふふっ、月本さん。私は三枝日陽(さえぐさひなた)です。曜日の"日"に太陽の"陽"。」

「あ、俺は花の"蓮"です。"ハス"とも読むヤツ。……あのー、連絡先教えてもらっても良いっすか?」

"唐突"に聞いてしまった。

「え?……あ、はい。LINEで良いですか?」

日陽ちゃんは怪訝そうにしていたケド、教えてくれた。交換していると……

「わっ、時間ヤバい。あの……一緒にエレベーター乗って行きますか?」

と言われた。

「あ、俺もヤバいです(苦笑) 一緒して良いですか?」

そう言って、一緒にエレベーターへ乗り込んだ。

「月本さんって……」

「あ、蓮で良いですよ。なんですか?日陽さん?」

「蓮さんって、普段は"優先席"に座るような人じゃないですよね?」

え?

「あ、はい。今日は車内も混んでたし、席が空いてたので、邪魔にならないよーに座ったほうが良いかなぁ?って。……何かありました?」

「あ……気に障ったのなら、すみません。私、毎朝あの時間に乗っているんですけど……"優先席"って、たまーにしか代わってもらえないんです。皆さん、これからの仕事に備えて……座ってらして。座って、携帯使っているかたが多いかなぁ?」

「ふっ、そうなんですね(苦笑) 俺は"優先席"とはいえ、やっぱり掲示してある対象の人に座って欲しいよなぁって思っていたんです。高齢者,妊婦さん,障害のある人……そう考えていたら、日陽さんが乗って来て。」 

「ふふふっ、そうなんですね。"優先席"には座っても良いんですけど、"携帯"の使用は(苦笑) 私、前に"優先席"に座れたトキに"携帯"いじっていたら……年配の女性に注意されちゃったコトがあったんです(苦笑) 一緒に居た母が『"優先席"はペースメーカーを付けているヒトも使うから、狂わせちゃうのもいけないでしょ?』って言っていました。」

「あ、そうなんですね。俺は……そもそも、"優先席"には座らないし(苦笑) ……じゃあ、俺はこっちなんで。また明日。」

彼女は『え?』という顔をしながら、

「はい、また明日。」

と言ってくれて、改札を出たところで別れた。ひとりで歩いていると

「先輩っ、ちーっす。」

と職場の後輩の小林に後ろから声を掛けられた。はぁー……

「おぅ、おはよ。」

「先輩、可愛い女性と一緒じゃなかったですか?杖をついた……」

「あー、電車内で席を譲った縁でな。」

「そうなんですねぇ。彼女、一見普通そうなんですけど……杖ついてたってコトは何か障害が?」

「みてぇだな(苦笑) 俺も今日知り合ったばっかだから、よく知らんわ。」

「そうなんすね(苦笑) 先輩……もしや、"一目惚れ"しちゃった系ですか?」

え?なぜ今の話の流れでそうゆう話になる?

「や……気になってはいる。けどなぁ、相手居ないとも限らないんじゃ?」

「あー、そうですよね……」

そう話していると会社に着いた。

「じゃあ、この話はココで終了。仕事頑張るか!」

「そうですよね。頑張りましょう♪」



日陽 side



「ひーな、おはよう。」

職場に着くと、同期が抱きついて来た。

「莉花、おはよう。今日も児童?」

「うん、そう。ん?なんか笑顔ね。なんかあった?」

莉花にそう聞かれて、

「うん、今日電車内でね……」

そう言って、月本さんとのコトを話した。

「ふーん……もしかして、惚れちゃった系?」

え?どうしてそうなる?(笑)

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