かの世界の歴史について~魔王二世の俺が恐怖で支配していた魔王の死後、世界を平和にするまで~
のっとあいす
第1話 エピローグ
とある世界の昔話。
1000年前とある魔王によって人間は滅びの道に進んでいた。
世界には一つの巨大な大陸によって形成され、そこには最弱の知的生物と言われた人と人とは異なる外見や特定を持った亜人が住んでいた。
それまでは、間と人とは異なる外見や特性を持った亜人とで小競り合いのような戦争が続いていた。
人は亜人とは違い、魔術が使えるわけでもなく、身体的特徴でも劣っていたが、欲という点ではどの種族よりも深く大きなものを体に宿していた。
人は肉体や能力に劣る亜人に勝つために錬金術を生み出した。
一瞬にして壁を作る技術や、水から性質の持った気体に変える技術、違う世界から人を呼び出す技術までも生み出し、さらにそのころには魔術も解析され始め、亜人を圧倒し始めた。
人が大陸の大半を支配ようとしたとき、別の世界からの移住者がやってきた。彼らは自分たちのことを魔人と呼び、亜人と人の住む地を侵略し始めた。
彼らは、この世界にあふれるエネルギーに目を付け別世界から移住したのだった。
彼らの王は自らを魔王と名乗り、邪知暴虐の限りを尽くして世界を蹂躙した。
その時ばかりは、人と亜人協力して戦っていたが、その圧倒的な力を持った魔人たちは彼らの屍を踏みながら進行した。
そうして、最後の希望とばかりに違う世界から勇者を呼び出した。多くの命を犠牲にして。
勇者は強かった。人は基本一つの命しかないが、勇者には限りのある命があった。その回数は、詳しくはわかっていなかったが、死んでも呼び出された場所に戻り、また戦った。
勇者は頑張った。死の苦痛というものはあったが、以前いた世界では誰からも必要とされていないと感じていた彼は必要とされる自分がうれしかった。
勇者は仲間の命も大切にした。彼は前世でリストラされ自殺したのだ。一度自分でないがしろにした命を無下にしようとは思わなかったが、それは自分よりも他人のほうに多く降り注いでいこうと思っていた。
自分の命はいくつかあるが、彼女たちには一つしかない。彼は何度も身代わりになり、いくつもの命を助けた。
自分の命が軽くなっていることを感じたが、仲間の命を助けることが重要だと思った。
強者と当たり、戦っては殺され戦っては殺され、勇者はどんどん強くなっていった。ほとんどの魔人を殺していった。
勇者の剣が魔王の心臓を刺した。仲間は恋人以外を失ってしまったが、ついに平和は訪れる。勇者はうれしかった。仲間を失ったことはとても悲しかったが、それでもうれしかった。
振り返って恋人を見ようとしたとき、ナイフで刺された。
彼女は泣いて、抱きしめながら言った。
自分の家族が勇者を呼び出すときの代償になったこと、それが憎くて勇者一向に入ったこと、勇者のことを愛しているが憎しみには勝てなかったこと。
勇者は知らなかったのだ。自分がどんな犠牲の上に成り立っているのか。それを知らず、ただただ必要とされているから戦った。侵略してくる敵を倒せと言われたから倒した。
それが、正しいと信じていたから。
勇者は暗くなる視界の中で彼女が自分を刺したナイフで首を切るところを見た。
気が付くと、目にしみ込んだ光景が現れた。
勇者発狂す。
体は何倍にも膨れ上がり、肌は血色を失い、爪は刃物になり、背中からは翼が生えた。
体からは苦痛や憎しみの声が聞こえてきた。
自分を呼び出すために犠牲になったものだということがすぐに分かった。
彼は、大空を飛び魔人を絶滅させるために山脈を横断中だった人の王を見つけた。
手に力を籠め、出てきた球を放つと世界は光に囲まれ、山脈は不自然にえぐれてしまった。
勇者は自分のことを魔王と名乗り、自分が倒したものの椅子に座った。
圧倒的な力によって、種族間で起こる争いを一人で粛清し、人を北大陸、亜人を南大陸に分け、魔人を自らの城の近くにある南半球の西に住まわせた。
種族間の交流によって、争いが起こると考え不要な交流を厳しく制限した。
人からは錬金術の技術を制限し、王立図書館を魔王城の内部に転移させた。
亜人からは魔術の使用を人を傷つけないように使用するという制限を設け、特に種族数の多い獣人は互いに監視しあうように力で脅していった。
かつて勇者だった魔王の力は圧倒的だった。
力による恐怖で大陸からあらゆる戦争行為をなくした。
千年の間で何度も魔王を倒そうとする亜人の動きがあったがことごとく敗北し500年もすれば魔王に挑む者もいなくなった。
世界は平和になったのだ。ある種族を除けば。
それは人である。
魔王が禁止したことは種族間での戦争行為であったため、人どうしの争いをやめなかった。
いくつもの国が現れ、いくつもの国が滅び、人は生まれ、人は死んでいった。
どの種族よりも寿命が短かった人は、滅ぼされそうになった後でもどの民族よりも欲望が絶えなかったのである。
魔王は元人間であったため、果てない欲望を持った人という種族を知っていたため、どうすることもできないことを知っていた。
勇者が魔王になってから、千年がたった。魔王には一人の息子がいた。
自分と同じ別世界の住人であったとすぐに気が付いた。そうでなければ自分の城の中に突然赤ん坊がいるようなことはないだろう。
この頃自分から力がどんどん抜けていっていると感じていた。
その影響で、現れてしまったのだろう。その赤ん坊の体にはあざや根性焼のような跡が残っていた。
千年前、上司にやられたことのある魔王はその傷がどんな痛さのものか知っていた。
だからというわけではないが、人であるこの赤ん坊に最善の治療を施し、傷がなくなるように手配した。
魔王城には、魔王のほかに魔王の秘書を名乗るものと、自動人形であるメイド、元学者の骸骨が住んでいた。
学者は図書館を奪ったときについてきたものだった。
彼らは知識欲だけで今も動いている。
この世界の頭脳の至高といえるだろう、骨しか残っていないが。
彼らにとっては、赤子の傷なんて興味のないものだった。研究が一番大事。二番目も研究が大事。三番目も研究が大事。
自分の体もないがしろにしているのに他人の体なんて興味のないものだった。
しかし、赤ん坊の顔を見たとき彼らの眼窩に光が宿った。
この世にこんなにかわいい存在がいるのか。本と自分の意見にいちゃもんばかりつけてくる奴らの顔しか見ていなかった彼らはなんの難しいことの考えていない無垢な笑顔のとりこになった。
彼らは、寝ることも忘れて傷やあざを完治させる錬金術を生み出した。元から、彼らは寝る必要がない。
赤ん坊は完治した。その後骨たちが喜んだのは言うまでもない。
魔王も満足げだった。
しかし、そのころから各地に謎の建物が現れるようになった。そこから出てきた魔物やモンスターと言われた生物たちは人間たちの生活を脅かしていた。
千年間ほとんど新しい発展のないまま進んできた世界は再び血を吹き出しながら動き出そうとしていた。
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