有翼民86人に対する公衆衛生学を用いた疫病へのアプローチ

ふぃふてぃ

プロローグ

第1話 大開拓時代

人の知的好奇心は、いつの時代も尽きる事がない。特に太陽遍歴1600年初頭から100年程続いたゴールド・ラッシュは開拓時代の賜物と言っても過言ではない。

西の大海、ピグリム海峡を横断すると言う快挙は世界を震撼させた。

王都バビロムから出港し、150人を乗せた大型開拓船カリメリア号は、66日と言う厳しい航海の果て、遂に未開の地へと足を乗せた。

先住民との激しい攻防の末、植民地化に成功を果たす。その半年後には未開の地に要塞を築き、ピグリム要塞と名付けた。

更に進行を揺るがすことのない、バビロム軍は植民地を広げ、数多くの金鉱山を発掘する事に成功する。

しかし、ゴールドラッシュの開拓の最中、王国軍は謎の疫病により、ピグリムからの撤退を余儀なくされる。

それを皮切りに、資産家達はこぞって開拓に資金を注ぎ込み、金と権利であらゆる文化を根こそぎ奪い取り、知的好奇心を満たす事に躍起になっていった。


王国軍の撤退後も、疫病は緩ぐ事なくゆっくりと蔓延し、更には海を渡り、本土に到達すると、ピグリム病と罵り無関心を決め込んでいた上流貴族でさえ、無視できない程に被害が王都バビロムを襲う。

それでも、人々はゴールドラッシュで経済的急成長を遂げた王都バビロムを、手放す事はおろか、出稼ぎに人々が押し寄せていた。

遂に王都は有識者を集め、疫病対策に乗り出す。

疫病の元凶は匂いによるものだと仮説が打ち出される。

王都はゴールドラッシュの急成長に整備は間に合わず、特に疫病の被害の多い市街地では、家が乱立し下水道の整備が間に合わず、異臭を放っていた。

この異臭を封じ込める事が出来れば、疫病を絶つ事が出来ると考えられた。

そこで、有識者の考案で、今まで埋め立てられていた排泄物の排除と消臭缶による異臭の除去が実行されたが実りは薄かった。

その考案に異議を唱えた一人の若者医師がいた。名はルーベン・ブラウン博士。異例の飛び級による最年少で博士号を取るも、家族が疫病で死に絶え、父という後ろ盾を失った没落貴族の長男。ルーベン博士は有識者達に弾かれ、彼の政策を棄却される。

そして、知的好奇心に毒された資産家や王族は検証もせず、有識者に従い、彼の立案に耳を貸そうとはしなかった。逆に彼の行いは王都を混乱に貶めたとし、医師免許を剥奪したのだった。




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