夢分析シリーズ

堀川士朗

第一夜 「一万円の使い方」


 第一夜

 「一万円の使い方」


      堀川士朗



親からお小遣いに一万円を渡されたので中華屋「桂林厨房飯店」に魯肉飯(ルーローはん)を食べに行った。

八角の効いた豚バラ肉の食感が舌の上でプリプリと心地良くとても美味しかった。

800円の勘定を払う時、カウンターに座っていた女子大生だかOLだか何だかの女に「臭えな」と言われた気がしたので顔面を思い切り殴った。

何だかの女は転倒した。店を出る。


この街は知らない街だけど服屋が多い。

コ〇キが着るような服がそこかしこに吊されていてどれも100円だったが買わなかった。

そぞろ歩きしていたら四人組の外人に話しかけられた。


「ハロー。ハワユー。素敵なシャツですねー」

「どうも」

「明日僕らライブやるんですけど来ませんか?」

「何時からやるのです?」

「朝七時からです」

「七時なら大丈夫。行きましょう」

「ワオ!ありがとうございます。チケットはあそこで売っています」

「ところであなた方はどこから来たのですか?」

「サンタナです」

「暑くていい所ですね」

「ワオ!ありがとうございます」


四人組に案内された場所はライブハウスで、普段はピンサロをやっている所だった。

ピンサロ「スイート倶楽部」の看板が古くて切なくなった。

僕はそこで2500円のチケットを購入した。

もうひとつ別のバンドがいて「ティナ」と呼ばれているボーカル担当のかわいいオレンジピンク色の髪の女が、


「ねえ。明日あたしたちライブやるんですけど来ませんか?」


と言った。

彼女は黒いワンピースを着ている。

僕より10歳くらい年下だ。


「何時からやるのです?」

「朝七時からです」

「七時なら大丈夫。行きましょう」

「ワオ!ありがとうございます。チケットはあそこで売っています」


またチケットを2500円購入した。


街を散策。

太陽は出てるんだか出てないんだかよく分からなかった。

どこからかミルクセーキの匂いも漂ってきた。


石みたいな岩みたいな肌をした背がものすごく低いコ〇キのおばあさんが歩いていて、


「この街は臭いねえ」


とか何とかつぶやいている。

何も食べてなくて、普段、多分、光合成だけで生きているような人だ。

僕はおばあさんに、


「これで缶コーヒーでも飲んであたたまって下さい」


と言って100円玉を勢いよく指で弾いて渡したら、勢いよすぎて100円玉は激しく高速スピンしながらおばあさんに衝突して、石みたいな岩みたいなおばあさんは破裂して跡にはこぶし大の赤い色をした石だけが残った。


心臓だろうか。


それを通行人に見られ、やばいと思ったので少し早めに歩いた。


前からビキニを着たグラマーな女が歩いてくる。

女は「ビキニ」と書かれた帽子を浅くかぶっている。

胸を僕の腕に押しつけてきた。


「ねえ。あたし漫画家なんだけど今あそこで同人誌の即売会をやっているの。よかったら買ってくれない?」

「いいですよ。いくらですか?」

「2500円」

「タイトルは何と言うのですか?」

「トゥッティーフルーツ」


即売会をやっている会場は、普段はピンサロをやっている所だった。

ピンサロ「スイート倶楽部」の看板が古くて切なくなった。

会場にはオタクたちが大挙してトゥッティーフルーツを求めて奪い合っていた。

人と人でギチギチの空間。

これじゃあ買えない。


あのムチムチとしたビキニを着た漫画家の女は色仕掛けで誰彼構わず声を掛けていたのだろう。

くそうめ。

顔面を殴ってやればよかったに!

僕の背景には炎が燃え上がっている。


結局一万円は使い切れなかった。



    第二夜に続く

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