「このゲームは未成年には売れません」 00年(平成12年)

 時は来た。


 2月に受験が終わり、やっと勉強、勉強の日々から解放された私は、もう堂々とエロゲーを買える一八歳だったこともあり、鼻息荒く、ソフマップ新宿1号店に飛び込んだ。


 ちなみに、いまはもう、新宿1号店は存在しない。


 場所で言うなら、現在リンガーハットが入っているところになる。西新宿国際通ビルの1階だ。そこに、かつてはテレビゲーム館があった。


 待ち望んでいたライディをやっと買える。パソコンを持っていないから、プレイできるようになるまで多少時間はかかるけど、現物さえ手に入れればこっちのものだ。


 そう考えながら、ドキドキしつつ、Windows95版ライディのパッケージを手に取って、レジへと持っていった。


 人生初、エロゲー購入の瞬間を迎え、それまでエロ本はともかく、成人指定のビデオすら観たことが無かった自分は、心臓がバクバクと鳴っていた。


 ついに、自分も、大人の階段を……!


 ただ、実はこの時、私は大きなミスを犯していたのである。


 それは、あろうことか学ラン姿で行ったこと。


 いまから思えばかなりアホである。なぜ学校帰りに行こうと思ったのか。なぜ一回家で着替えてから出かけなかったのか。


 振り返ってみれば、当時はかなりテンションが高かったように思う。


 ノストラダムスの大予言の恐怖を乗り越え、無事迎えた00年。おまけに受験終了。


 その喜びが、正常な判断能力を失わせていたのだと思う。


「このゲームは未成年には売れません」


 カウンターのお姉さんは、スーパー塩対応で淡々と言い放った後、私の手から奪い取ったライディのパッケージを、後方のよくわからないボックスの中へと投げ捨ててしまった。


 そもそも、一八歳以上であっても、学生である自分に、成人ゲームを売ってくれるはずがない。焦らず、大学生になるまで待ってから、買いに行けばよかった。だけど、後悔しても、もう遅い。私は、しょんぼりと肩を落として、ソフマップを後にした。


 初めてのエロゲー購入は、まさかの失敗に終わってしまったのである。


 こうして、一回、ライディのゲットに失敗した私は、再び手にするまで、もうあと二年ほどの時間を必要としていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る