第31話虚
「それで?何があったんだ?」
「わしゃの……」
「え?今何て?」
「わしゃの親友だったやつが今回の黒幕じゃ」
「それって……誰?」
「随分、間をおいたがわかないのじゃな」
「当たり前だ!歴史が得意でもないのに平安時代なんてそんな詳しくないよ」
「まぁ、良い。おぬし蘆屋道満という名に聞き覚えはないか?」
「それぐらいなら。確か晴明の1番の敵じゃなかった?」
「まぁ、そいつじゃ」
「親友だったのか!!」
「そう。親友だった……」
晴明は、これまで見たことがないほど切ない顔をしていた。
自分の昔の事はあまり多く話さなかった晴明。
まだ、俺は晴明の事を何も知らない。
「会ってみたいな……」
晴明の親友だった人。蘆屋道満とはどんな人だろう。恐怖よりもそんな好奇心が上回った。
「おぬし馬鹿な事を言うな!アイツは、わしゃから全部奪って行った。もう一人にはなりたくない……」
「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。晴明が親友と認めた人間がどんな人間なのかって思っただけだよ!」
「感動的?な所申し訳ないけど。この後どうする?」
「そうだよね。普通にやり合っても勝負にならないもんね……」
雪の言うとおりだ。陰陽師の双頭の一人だ。
何か対策を考えないと。
「今回はあの二人だけなのかな?」
「もう一人はどんな奴だった?菫じゃないよな?」
「違う」
顔の険しい晴明がポツリと言った。
そっちの方もかなり衝撃を受ける人物だったのだろう。
「そっか。これっていつぞか晴明が言っていた壊霊の組織?」
「結論から言うとその可能性はかなり低いであろう。そもそもそんな組織要らないぐらいの実力じゃからな。実際、平安の世を壊した程じゃ」
「晴明みたいに仮の肉体を手に入れてと言った感じなのかな?」
「どうであろうな?顔はそのままじゃったが……」
「そうなのか……余計辛いな」
「そんな事はどうでも良い。奴らの目的は一体何なんじゃ」
「また、何か仕掛けてくるかもしれない」
「事が起こってからでは手遅れになりますからね」
「そうだな〜雪の言う通りだ。こっちから仕掛ける事はできないかな?」
「目的が分からないから仕掛けられないんだよな……」
「そうじゃな。でも一つ気になる事がある」
「どうかしたのか?」
「何か計画しているなら今日でわしゃを始末した方が楽だったのではないか?」
「目的は晴明か……」
「そうじゃな。そして民が人質じゃ」
どうすれば良いのじゃ。道満の狙いだけでも分かれば対策を考えられるのに。
手に余る収穫で俺達の脳内回路は崩壊させられた。
現幻 神無月 皐月 @May0531
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