幕間

 狂気の歯車は止まることを知らない。いや、知っていても、もう止まれない。それは少年が選択を誤ったから。一つの選択で全てが崩れてしまう。世界とはそう言うものだ。世界とはまるで、不恰好な形の積み木で積み上げられた塔だ。少し押してしまえば倒れてしまう。少し揺れてしまえば崩れてしまう。少年が歩む道もそう。一つの選択で、掴めたはずの未来はガラガラと音を立てて崩れ去ってしまう。


 狂気の歯車は加速する。終わりに向けて。そう、文字通り、少年の死に向かって。





 不穏な影が動き出す。そう、邪魔なものを排除するために。


 少女は薄暗い廊下をスタスタと歩きながら電話をする。


『えぇ、よろしく。手筈通りでお願い。うん、うん。先回りできるように車を手配して。えぇ、そうね。民間人は全員避難させなさい。理由は適当にこの辺りに殺人鬼が出回っているとでもいえば大丈夫でしょう。そはと、警察の方にも手を回しておいて。あとはその場の成り行きに任せるから。そろそろ校門に出るからお願いね。それじゃあまた後で』


 少女は電話を切り、ケタケタと笑う。


『これで、あなたは私のものよ』


 絶望はもう目の前に迫っていることを、まだ桜玖は知らなかった。


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