第四話
みなさんのおかげでラブコメ日間63位まで登って来れました。読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
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狂気の歯車は音を立ててゆっくりと進み始める。
side椿
私はカーテンの隙間から挿す陽光によって目が覚めた。
目覚めは良好。
「ん、んー」
私は両手を突き上げて伸びをする。
「今何時なのかしら」
私は目覚まし時計を見ようといつも置いてあるところを見る。今時目覚まし時計を使う人なんているの?って思う人もいると思う。けど私は一度、スマホのアラームで起きようと思ったけれど、何故か起きることができなかった。それ以来、目覚まし時計を使うようになった。
「あら?こんなところに目覚まし時計なんて置いたかしら?」
いつも置いている位置よりも少しずれたところにあった。別にそれがどうしたって思う人もいるだろうけど、私はとても几帳面なため、こういう細かいところも気にしてしまうの。
「まあ今はいいわ。それより何時かしら」
私はベッドから腕を目一杯伸ばして目覚まし時計を掴んでこちらに持ってくる。
「え?7:36?何かの冗談よね?」
確かに私は今日も6:30にセットしたはずだ。それなのにも関わらず、目覚まし時計が鳴らなかった。これは何かがおかしい。
私はベッドからバッと飛び起きて、とりあえず兄さんを起こしに行く。
入る前に控えめにノックをする。
「兄さん、朝になったわよ」
そう言いながら私はドアをゆっくりと開けていく。
「なっ!?」
すると、いつもはまだそこに死んだように眠っている兄さんがいるはずなのだが、今日に限っては間抜けの殻だった。
「兄さん!?一体どこに」
私は必死になって家中を探し回りました。トイレ、お風呂場、両親の寝室と。
「あと最後はリビングね」
私はリビングの扉に手を掛ける。
普通は先にリビングから見るだろって思った人も何人かいると思う。言い訳のように聞こえるかもしれないけれど、一応言わせて欲しい。今は混乱していてそこまで頭が回らなかったのよ。
昔、確かあれは幼稚園生くらいの時だったかしら。兄さんが一人で遊びに行ったっきり帰ってこないことがあった。その時はもちろん、お父さんとお母さんはかなり取り乱していたわ。でもそれ以上に取り乱していたのが恥ずかしながら私ね。その頃は何をするにしても大好きな兄さんの後ろをトコトコとついて行ってたわ。自分で言うのはちょっと恥ずかしいけれど、その頃から私は極度のブラコンだったと思う。それは今も変わらないのだけれど。幼稚園生だった私は兄さんがいないと知ると、ワンワンと大きな声で泣いた。それはもう目を赤く腫らして声が枯れるまで泣いたわ。泣き止んだ私は居ても立っても居られなくて、兄さんを探すために両親の言葉に耳を貸さずに家を飛び出たわ。私は走った。普段から運動をしていなかった体が悲鳴を上げても小さな体に鞭打って走り続けた。幸い兄さんは近くの公園のベンチで寝ているだけだった。もしもあれが何らかの事件に巻き込まれてるとかなっていたら、悔やんでも悔やみきれなかったと思う。だからその時に私は決意したの。
兄さんを守れるくらいに強くなって出来るだけそばにいようって。
色々話が脱線しちゃったけれど、結論を言うなら、兄さんのことになると急に頭が回らなくなってしまうってことね。特に今回みたいな急を要する場合はね。
私はリビングの扉を勢いよく開け放つ。それからズカズカと足を踏み入れてあたりを見回す。
「ん?何かテーブルの上にあるわね」
そう、テーブルの上にペンと紙が置いてあったのだ。これは昨日の夜、寝る前にはなかったものだから、おそらく兄さんが置いたものだろう。
私はそれを掴んでみる。
「これは兄さんの字ね。えーっと、『今日は早めに起きたから先に行くね。家のことも多分ほとんどやっといたから大丈夫。椿がゆっくりと寝られるように目覚まし時計も消しといてあげたからね』って。目覚まし時計は消さなくてもいいでしょ!私は好きで起きてるんだからぁ!」
誰もいないリビングで私の声が大きく児玉する。
「そもそも私が早く起きてる理由って、家のことをやるためでもあるけど他にも理由があるんだから」
私はパジャマのポケットからそれを取り出す。
「あーぁ、今日は兄さんに盗聴器付けれなかったわ。どこかで接触してつけないと、兄さんに何があるかわからないもんね」
自分を納得させるために誰もいないリビングでぶつぶつと独白する。
「よし!時間押してるから早く支度しようかな」
そこから私は手早く支度をして家を出た。
ちなみにこのあと兄さんに会ったのは放課後の部活だったため、盗聴器を付けることはできなかった。
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