202011 ジャパロボ 56

渋谷かな

第1話 ジャパロボ56

「なんで!? お父さんが!?」

 ある日、祐奈の家に森田皇帝がやって来た。

「今日はお母さんの命日だ。」

 祐奈の父親なのだから、自分の家に森田皇帝がやって来ることは不思議ではない。

「家に入るな!? ここは私とお母さんの家だぞ!?」

 家に靴を脱いで上がろうとする森田。

「私の家でもある。」

 祐奈の静止は気にしないで家の中に入っていく森田。

「ええー!? 森田皇帝が私たちのおじいちゃん!?」

「私は知っていたわよ。」

 イリスとさとみも祐奈と父親の仲があまり良くないことを察する。


「チーン!」

 妻の仏壇にお線香をあげ両手を合わせお祈りをする森田皇帝。今だけは一人の人間であったのかもしれない。皇帝になった男はいったい何を願うのか?


「おまえたちが私の孫か?」

「はい。おじいちゃん。姉のイリスです。」

「さとみです。」

 森田皇帝が孫のイリスとさとみに会うのは初めてであった。

「いつも祐奈がお世話になっているね。ありがとう。」

「ええー!? 分かるんですか!? さすが親子!?」

「違うでしょ! さとみ! いえいえ、どういたしましてでしょ。」

「ワッハッハー!」

 孫がカワイイのか、森田が笑った。

「こんなに人間らしい気持ちで笑ったのは久しぶりだ。ワッハッハー!」

「皇帝が笑った!?」

 イリスのイメージでは森田皇帝は冷酷で笑わないイメージだった。

「おじいちゃんって呼んでいいの?」

 森田が笑うことによって、さとみは警戒感が薄れ親しみを覚えた。

「いいよ。祐奈の子供は私にとって孫だからな。」

「わ~い! さとみにおじいちゃんができた!」

 単純なさとみは皇帝がおじいちゃんだと喜ぶ。

「イリス、さとみ。お母さんの仇と仲良くしちゃあダメでしょ。」

「ギョ!? お母さん。」

 そこに冷たい目をした祐奈が現れる。

「そこの人、カレーを作ったけど食べる?」

「いいのかい?」

 娘の言葉に少し驚いた皇帝。

「お母さんの命日にケンカしたくないだけよ。」

 祐奈は父である森田の欲がお母さんを殺したと思っているので許せなかった。 


「まさか娘の手料理が食べれるとは思わなかったな。」

 食卓に移り祐奈の作った手作りカレーを食べる森田皇帝。

「どう?」

「美味しい! 美味しいぞ! 祐奈のカレーは!」

 初めての娘の手料理をすごい勢いで食べ尽くす笑顔の父親。

「ごちそうさま! 祐奈の料理は世界一だな! ワッハッハー!」

 幸せを感じている森田。

「どういたしまして。」

(お父さん・・・・・・。)

 これだけ見ていると、とても皇帝には見えなかった。

(どうして、こんな冴えないお父さんが冷酷な皇帝なんかに!?)

 森田は、ただの普通の一人の人間である。祐奈には不思議で仕方がなかった。

「ちょっと待って!? お母さんのカレーって!?」

「確かスゴイ不味かったんじゃ!?」

 イリスとさとみは祐奈の手料理が殺人料理だったことを思い出す。

「うううううーっ!? 苦しい!?」

 突然、森田皇帝が苦しみだした。

「おじいちゃん!? 大丈夫!?」

 それはそうである。祐奈の殺人カレーを全て食べれば、こうなるのは当然である。

「ゆ、祐奈!? ダメなお父さんを許してくれ!?」

「お父さん!?」

「ギャアアアアアア!?」

 森田皇帝は断末魔の悲鳴を上げる。

「お父さん!? お父さん!?」

 祐奈は久しぶりに父親に触れ体を揺さぶる。

「重い!?」

 森田の体は生身の人間の重さとは違い、別の生き物のように重かった。

「私じゃないんだ・・・・・・私ではない・・・・・・私はある日、暴走したAIロボットに体を奪われたんだ。」

 最後の力を振り絞る森田。

「なんですと!?」

 今明かされる驚愕の事実。

「祐奈のカレーを食べて、私の体を支配していたAIロボットの大正天皇の電子回路がショートして死んだんだ。」

 恐るべし、祐奈の手作りカレー。食べる勇気が君にはあるか?

 つづく。

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