第5話 いや、何で自分からめんどくさい事に突っ込むねん?

私は、これからどうしようか、考えていたら、クラスメイトの田中 啓介(たなか けいすけ)が叫んだ。


「あーー!!もう!!不味くて食べらんない!!もっとろくなの出せよ!」


日本人なら誰もが思うだろう。食の叫び。


「「「そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!」」」


そしてわき起こる同意の歓声。



「え?え、え?」


そして混乱する私。


いやいやいやいや、何急に叫んでるの?びっくりしたよ。


「……そう言えば雑草。お前料理スキル持っていたよな?」


ギクリ


いや、何で私、隠密切ったし。私のバカ!


「そうだ!雑草に作ってもらえばいいんだ!」


「雑草は、家事だけは、ずば抜けて上手かったから、」


「料理も上手いはず!!」


「え?え?」


何これ?私パニック。


そんな騒ぎを聞いた王城の人達が集まってきた。


「な、何の騒ぎですか!」


あ、王様の次に話し出した人だ。


「勇者様方!どうなされたのですか?!」


「どうしたもこうしたも聞いてくださいよ!」


鈴木悠志(もうめんどくさいからユウシでいいや。心の中では。)が男の人に話し出す。


「この世界の料理は、こんなにも不味いんですか?!

僕らはこんな不味い料理食べたことありません!

スープは、野菜は火を通ってないし、こい塩味。肉はゴムのように固くて、これも塩コショウの濃い味。ロールパンは、何かパンでは、無い音してますよ!

どうか、この如月さんを厨房に立たせては下さいませんか?」


そう言ってユウシは、私の背中を押す。


え?やめて、やめて。人の前って無理だから。


男の人は、私を頭の先からつま先までじっくりと不敵な笑みを浮かべながら見てきた。


やだ、気持ち悪い


「では、いちど今出されているものを食べさせていただいても?」


「あぁ、どうぞ!」


男は、近くの料理にフォークを持って食べる。


もぐもぐもぐもぐ


「美味しいでは、ありませんか」


「……ということは、皆!この世界の料理は、絶望的だという事が決定した!」


「「「「「「「えーーーーーーー」」」」」」」


「ふむ、そのキサラギ様という者は、料理が出来るのですか?」


「ええ。僕らの世界では誰しもが料理をしていて、如月さんが僕達の中で1番料理が上手いんです。」


「では、そのキサラギ様が不味い料理を私に出したら、勇者様方は、この国に一生使えると誓えますか?」


「いいでしょう。誓いますよ。その代わり如月さんの料理が美味かったら、この国の人達に一生作らせない、レシピを教えない。も追加です。」


「では、そうと決まったら契約書にサインを」


そう言って懐から羽根ペンとインクを出し、紙にサラサラと書いていく。


「どうぞ。」


わ~私、文字読める……


サラサラ


……ユウシは、書けるみたい……あ、『言語理解』のスキルかな?


私は、紙を渡されたので、自分の名前を書いていく。


「契約は、完了です。」


「じゃあ、1時間後……ここで、料理を出しておけば良いですか?」


「分かりました。」


すると、宰相さんは、食堂の端にいるメイドさんに何か頼んで、何か書類のようなものを持ってきて貰っていた。


私は、気が付けばクラスメイト達に囲まれていた。


「え?え?え……」


「さて皆、この世界で作れそうな料理と言ったら?」


「プリン?」


……いやいやいやいや、私のスキル無かったら砂糖手に入んないし、そもそもご飯じゃないよ。


……そもそも冷やすまで時間がかかるのやに……


「いや、砂糖手に入んないだろ。」


お、中田 香澄(なかた かすみ)さんが思っている事言ってくれた。


「は?何様?こっちアイデア出して上げてるんだけど?」


いえ、出さなくて結構です。


「うっ、ごめんごめん。」


理不尽……


「まぁまぁ。じゃあシチューは?」


「ルー無くね?」


シチュー……確か


「牛乳と、バターと、小麦粉があれば……野菜、あるみたい、だし。」


「おお~じゃあそれで行こう!」


「まぁ悠志君が良いなら良いけど?」


「シチューだったらご飯欲しくなるな。」


「いや、ムリだろ。」


「そっか~残念」


「軽っ!!」


「え~♡ユウシ君は~軽い方がいーよ♡」


「そ、そうなのかな?」


「うん♡うん♡」


……おかしいな……『うん』の後に♡が見えた。これダメパターンだ。


私は、察せる女の子。うんうん。


「とりあえず、厨房に行ってみるね?」


「そ、そうだね。如月さん何か手伝える事あったら言ってね。」


「そんなことないわよね~?悠志君に雑用なんてさせないわよね?雑草が雑用やるのが普通なの。www」


「う、うん。」


悔しいけどその通り何だよな……



♪♪♪♪♪♪♪♪


私だけ1人厨房に移動して、作っていく。ちょうどいいときで、コックさんは、休憩中で居なかった。


ラッキー♪今のうちに作っちゃお。


あ、これ寸胴鍋……


良くお店とかである様な底が深いバカデカいお鍋と普通のフライパンを出して、作り始める。


お鍋に水を入れて、残ってる種火を薪で強くして沸かし始める。


その間に食料庫を探すけど隣の部屋だった。


じゃがいもの様な物と、人参の様な物、牛肉バラの様な物と玉ねぎの様な物を皮を向いていく。


順番は、じゃがいも→人参→玉ねぎの順番。


フライパンにさっき見つけた牛脂(どうやらこの世界に植物油が無いらしい。)をしいて野菜を炒める。


玉ねぎがいい匂いをして来たら、沸騰した鍋に野菜を入れてじゃがいもが柔らかくなるまで茹でる。


フライパンを洗わないでそのまんまの状態からルーを作る。


牛乳、バターがあったけど怖いので、綺麗にするもので余計な菌を除き、フライパンに入れ、軽くプツプツして来たら小麦粉(こちらの世界の小麦は、余計なのが混ざっていそうなので、自分で出しました。)を入れてモッツァレラチーズのような感じになるまで混ぜます。


いい感じに固まったら、ルーをお鍋に入れて、煮込みます。


ん~いい感じ♪というか、量多かったかな?


煮込んでいる間にお皿とスプーンを出して……


火を直ぐに止めて、人数分よそえば出来上がり!


……なんだけど、その前に……


「ふー


さて、味見味見」


スプーンを浄化してひと口。


「おっ、上手くできてる。」


ちょっと濃いめのシチューになった。うまうま


さてと、よそって食堂に持っていかないと……


食器を持って入口に行くとそこには、ユウシがいた。


え?いつからいたの?え?え?


「凄いね~如月さん美味しそうな匂いする。」


……何か変に顔が赤い。大丈夫か?この人。熱あんの?


「ど、どうも……」


「持っていくの手伝うよ。」


そう言ってユウシは、私の後ろのお皿を持って、一緒に厨房に向かう。


「皆!如月さんがシチュー作ってくれたよ!」


「「「「「「おお~!!」」」」」」


そっからは、流れに流れた。私は、1人で厨房と食堂を行き来して、ユウシは、私を虐めてる女子生徒に捕まってる。


何が手伝うのかな?って言いたくなったけど、めんどくさい事になりそうだから言わないでおく。


で、宰相さんが来る前に皆は、食べ始めてしまった。









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