第5話 ジャパロボ5

「これより第5回全国ジャパロボ大会の各地方予選の報告会を行います。」

 麻衣がいつものように議事進行を行う。

「麻理子!? なんでおまえがいるんだよ!?」

「わ、私も祐奈教官の指導を受けるように言われました。」

 元々東京都所属だったマ麻理子。しかし東京都のジャパロボ開発機関やパイロット強化研究所が自衛隊に吸収されたことにより、麻理子は憧れの祐奈の元に所属することになった。

「祐奈教官は、おまえなんかに渡さないからな!」

「わ、私も負けませんよ!」

「おまえたちは何を競い合ってるんだ?」

 ライバル心を燃やす優子と麻理子。

「祐奈教官は私のものだ! なんたって私は祐奈教官の愛機、エンペラーの整備も担当しているのだからな。装備させた架空の兵器を全て強い意志で使いこなす! まさに祐奈教官はメカニックのためのおもちゃだ! ワッハッハー!」

「久美ちゃん、悪乗りしない。」

「こ、こいつ、殺しましょうか?」

「一緒にやろうか。」

 虚無の久美もジャパロボの話だけはやる気を発揮した。

「祐奈教官も何とか言ってくださいよ。」

「zzz。」

「・・・・・・やっぱり寝てるのよね。ガクン。」

 祐奈はこういう人間である。

「す、すごい!? こんな騒がしい環境でも体力回復のために眠り続ける!? なんという環境適応力なんだ!?」

 麻理子は祐奈の能力の高さに感動した。

「私はジャパロボの性能を4倍発揮できるように400パーセントまで引き出すことに成功したぞ! 私が祐奈教官をお守りするんだ!」

「な、なによ!? それがどうした!? 私だって、都庁01改から自衛隊04改に乗り換えたんだからね! 直ぐにあなたなんか抜いてやる! 強化人間なめるなよ!」

「久美、暇な時間に久美ちゃんジャパロボを作ったの。歌も歌えてダンスも踊れるの。可愛いでしょ。アハッ!」

 祐奈が寝ているので、自由奔放なチーム祐奈の隊員たち。

「欲しい! こいつらを黙らせて、会議を始められるだけの力が! 私は欲しい! 何かないか? 何か武器は何のか? あった! これだ! 伝説の武器だ!」

 メンバーたちにストレスの溜まった麻衣は伝説の武器を探し当てた。

「いでよ! 100トン・サンマー! くたばれ! おまえたちー!」

「ギャアアアアアア!? 人殺し!?」 

 麻衣は100トン・ハンマーではなく、100トン・サンマーを習得した。

「ピクピク・・・・・・。」

 優子、久美、麻理子は動かなくなった。

「ということで会議を始めます。全国を8ブロックに分けて、各県の代表者の報告、分析を行って行きます。」

 司会進行役の麻衣がいなければチーム祐奈は崩壊していただろう。

 つづく。


「それでは南の方の予選会の動画から見ていきたいと思います。」

 麻衣は全国ジャパロボ大会の各地の予選の情報と分析の発表を行っていく。

「zzz。」

 もちろん祐奈は寝ている。

「・・・・・・。」

 そして100トン・サンマーでボコボコに殴られた優子、久美、麻理子は虫の息。

「沖縄・九州ブロックからです。まずは沖縄県予選。参加者には首里城ジャパロボ、シーサージャパロボ、ゴーヤチャンプルージャパロボ、サーターアンダギージャパロボ、屋久島ジャパロボなどがいました。」

「こんな連想ゲーム47都道府県やってたら死んじゃうよ!?」

「そうだそうだ!」

 その時、ゾンビたちが声を飛ばす。

「チャチャ入れるなら寝とけ! それとももう一回サンマで殴ろうか!?」

「・・・・・・。」

 死体役に徹するゾンビたち。

「沖縄予選を優勝したのが竜のジャパロボでした。」

 沖縄県の形が竜に似ているからという理由である。

「パイロットの名前は・・・・・・追々、考えましょう。」

 麻衣は細かいことは気にしない。ただ会議を無事に終えることだけを考える。

「今考えろ!」

「先延ばしにするな!」

「そうだそうだ!」

 ゾンビたちにも意地がある。

「分かったわよ。やればいいんでしょ。やれば。」

 麻衣は沖縄県出身の芸能人の名前を調べる。

「意外に多いのね。沖縄出身の芸能人。これなら楽勝に5人くらいは作れるわ。アハッ! 沖縄代表のパイロットの名前は、新垣奈美恵!」

 名前付けの法則を習得した麻衣の勝ち。

「・・・・・・。」

 ゾンビたちは沈黙した。

「この調子でどんどん行くわよ!」

 麻衣の快進撃が始まる。

「鹿児島代表が桜島ジャパロボ。パイロットが上白石いずみ。」

「宮崎県代表が高千穂峡ジャパロボ。パイロットが浅香友里。」

「どんなジャパロボなんだよ!?」

「熊本県代表が阿蘇山ジャパロボと思いきや、くまモンジャパロボ。パイロットが水前寺千里。」

「長崎県代表がグラバー園ジャパロボ。パイロットは原田春奈。」

「佐賀県代表が吉野ケ里遺跡ジャパロボ。パイロットが優木典子。」

「大分県代表が別府温泉ジャパロボ。パイロットが古手川莉乃。」

「福岡県代表が福岡ドームジャパロボ。パイロットが蒼井リンダ。」

「終わった! 何とか全部できた! はあはあ・・・・・・ぜいぜい。」

 麻衣はかなりの体力を浪費した。

「名前はミックスをやめて、同姓同名です。特定されないので個人情報保護法は適用されませんでいこうかしら。バタッ・・・・・・。」

 頓挫しそうなくらい麻衣は疲れたのであった。

 つづく。


「はあ・・・・・・はあ・・・・・・疲れた。」

 麻衣は全国ジャパロボ大会の予選の沖縄・九州ブロックの代表者の情報を決めるだけで疲れ切っていた。

「何とか打開策を見つけねば!? このままでは私が滅んでしまう。」

 勝利の方程式を探す麻衣。

「zzz。」

 寝ている祐奈教官。

「ガオー! ゾンビだぞ!」

 優子、久美、麻理子はハロウィンの仮装パーティーに向けて練習中。

「やれる人間が私しかいない! 私が頑張らくっちゃ!」

 新たに決意する麻衣であった。

「次は四国ブロック。4県しかないから、従来のやり方でやってしまおう。その後に打開策を考えよっと。」

 任務遂行力の高い麻衣。

「愛媛県代表、道後温泉ジャパロボ。パイロットが真鍋奈々。」

「高知県代表、四万十川ジャパロボ。パイロットが島崎涼子。」

「香川県代表、讃岐うどんジャパロボ。パイロットが高畑明子。」

「徳島県代表、阿波踊りジャパロボ。パイロットが米津瞳。」

「できた! 4県くらいなら楽勝ね。」

 麻衣は任務を達成した。沖縄・九州の8県と四国4県を足して12県。47都道府県から引くと残りは35県である。

「地方に群れることは地方の地域活性化にも役に立つだろう。昔、東部警察大門という刑事ドラマは地方でロケを行って、日本全国的な人気を集め大ヒットしたそうな。そういう意味で東京だけでなく、地方や世界、宇宙を描くことは意味がる!」

 日本国がバブル景気でお金が余っていた頃の話である。

「でも、まあ、あれね。ジャパロボも有名観光地、山あり谷あり、イベント有り。遂には地方の名産品までジャパロボにしちゃった。」

「全て久美ちゃんジャパロボのおかげです!」

「黙ってろ!? ゾンビ!?」

「ガオー!」

 人間をジャパロボにする。イメージは巨大ブロックみたいなものか? それでもアイドルのコンサートなんかはできるし、久美ちゃん・ジャパロボというアイデアは多くの固定概念を覆した。

「パイロットも、あれだけ多くの芸能人がいるのに、全く有名な芸能人がいない県もあるのね。遂には名字を男で済ませてしまった。」

 今を輝く米津の名。

「でもこれはピンチじゃない! チャンスよ! 今まで恥ずかしかったり思いつかなかったりしてキャラクターの名前付けが最大の難関だったけど。今回、47都道府県の名前付けをすることができれば、きっと明るい未来が待っているはず!」

 47都道府県で名前を適当でもいいから作ることができれば、都道府県47なるアイドルモノの作品も作れることができるかも。

「よし! がんばるぞ!」

 ミッションに燃える麻衣であった。

 つづく。


「調子は良好。一気に中国地方を突破してやる!」

 麻衣は孤軍奮闘していた。

「zzz。」

「ガオー! ゾンビだぞ!」

「おかしくれー!」

「ハロウィンって面白い!」

 眠り姫とゾンビ3匹は寄っていなかった。

「山口県代表、河豚ジャパロボ。パイロットは道重知美。」

「島根県代表、しじみジャパロボ。パイロットは錦織美佐子。」

「広島県代表、カープジャパロボ。パイロットは綾瀬奈央。」

「鳥取県代表、砂丘ジャパロボ。パイロットは瀧本アヤコ。」

「岡山県代表、渋子ジャパロボ。パイロットは桜井ちえみ。」

「よし! できた!」

 麻衣は中国地方を制覇した。47都道府県完全制覇まで、残り30都道府県。

「それにしても地方の人が都会に来て芸能人になるのって、本当に難しいのね。」

 パイロッの名前を試行錯誤していて、現実を思い知らされる。地方出身の芸能人の少ないことを。都会に出るにはお金がいる。また都会のコネもないので、都会生まれのコネ持ちには勝てない。都会の強い者、強い芸能事務所、強い広告代理店、強いテレビ局、強いスポンサーに媚びを売らなければならない。

「少女なら嫌なサービスも汚いおっさんにしないといけないだろうに、それでもみんな、芸能人やアイドルになりたいのね。不思議だわ。」

 自衛官で国民を守っている麻衣からすると不思議な話である。

「zzz。」

「ガオー!」

「トリックオアトリート!」

「暴れまくるぞ!」

「こいつらも不思議だわ。」

 こういう行き場のない連中が渋谷のハロウィンで暴れているのだろう。

「1県1話なら、もっとストーリーを描けるんだろうけど、各県のジャパロボとパイロットを決めるだけで尺が精一杯だ。もしも、次に設定を決めるとしたら何かしら? 予選の対決ルールかな?」

 少し余裕があるので麻衣は創作の第三段階に移る。

「山口県なら、河豚刺しの出来を競うとか? 秋吉台のカルデラで暑い中最後まで耐えれた人が山口代表とか?」

 ジャパロボの山口代表を決めるだけでなく、これならアイドルの都道府県47を決める時にも使える・・・・・・たぶん。

「違うな呼称とかルールじゃないな。多感な10代だから、読者や視聴者の共感を得るためにも身近な日常を描かないとダメだわ。」

 麻衣は悩み込む。

「例えば、家にお金がなくて、ジャパロボ大会で優勝すれば賞金がもらえる。家族のために戦うとかかな。ボンビー話にレゾナンスして涙が出てくる。」

 意外に涙もろい麻衣。

 つづく。


「私は真っ赤なリンゴです! はい!」

 麻衣は一人で全ての都道府県の予選のデータを分析している。

「zzz。」

 教官の祐奈は寝ている。

「ガオー!」

「ドラキュラだぞ!」

「フランケンシュタインよ!」

 優子、久美、麻理子はゾンビごっこで話にならない。

「私がやらねば誰がやる! 次は近畿ブロック! いざ! 出陣じゃ!」

 一人気合の入る麻衣。

「兵庫県代表、甲子園ジャパロボ、藤原景子。」

「大阪府代表、たこ焼きジャパロボ、高畑あやみ。」

「京都府代表、舞子ジャパロボ、北大路里帆。」

「奈良県代表、大仏ジャパロボ、堂本奈緒。」

「和歌山代表、みかんジャパロボ、明石家冬美。」

「滋賀代表、琵琶湖ジャパロボ、西川けい。」

「よし! できた!」

 麻衣は近畿ブロック6都道府県を加えて23都道府県を制覇した。残り24都道府県。

「こいつらの動機も、日本一のたこ焼きを作るジャパロボになりたいとか、優勝してジャパロボで大仏を掃除するんだとかなんだろうな。なんで、そんな願いを叶えたいんだろう?」

 ただし本人たちにとっては真剣な願いである。

「・・・・・・そうか! 全国ジャパロボ大会には人々の夢や希望があるんだわ! だからみんな頑張ってジャパロボで競い合うのよ! ジャパロボ大会はみんなの夢と希望が詰まっているんだわ!」

 全国ジャパロボ大会の恒例の商品は優勝者は副賞として公務員になれる。自衛隊のジャパロボ・パイロットとして就職できるのだ。これで祐奈も自衛隊に入隊し、公務員として安穏と自堕落に眠って生活している。

「全国ジャパロボ大会の優勝者には100万円だったのを・・・・・・優勝賞金1億円! それか何でも一つだけ願い事が叶うにしよう。祐奈教官が知ったら怒るだろうな。3連覇しても300万円と3億円じゃ、2億9700万円も違うもんね。」

「zzz。」

「一生寝てろ。」

 そうとは知らずに眠り姫は眠り続けている。

「ガオー! お化けだぞ!」

「おまえたちには何も言わん。好きにやっていろ。」

「いや~ん!? なんとか言ってよ!? 放置プレイ反対!?」

「悲しい・・・・・・。」

 ゾンビたちは藻掻き苦しんだ。

「はあ!?」

 その時、麻衣は何か気がついた。

「しまった!? このままでは全ての都道府県のデータ分析が進まない!? 残業どころか!? 終電も終わって宿直になってしまうじゃないか!?」

 優秀な麻衣は残業はしない主義である。

「ここから飛ばして一気に終わらせるしかない! がんばるぞ! おお!」

 麻衣のハートに火が着いた。

 つづく。


「よし! いくぞう! 中部・北陸ブロックだ!」

 麻衣は仕事モード全開である。

「でやあー!」

 必死。

「どりゃあー!」

 必死。

「zzz。」

 寝てる。

「だだだだだー!」

 必死。

「ガオ!」

 ゾンビ。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラー!」

 必死。

「ハロウィンパーティー!」

 ゾンビ。

「ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!」

 必死。

「ジャパロボ・久美ちゃん・ハロウィン・バージョンー!」

 ゾンビ。

「人が必死に仕事してるのにチャチャを入れるな! くらえ! 100トン・サンマー! 天誅だ! 待てー! コラー!」

「待てと言われて待つアホはいない!?」

「ギャアアアアアアー!? 麻衣に殺される!?」

「ウラララー!」

 この騒がしい中でも麻衣は仕事と殺意に真剣に取り組むことで何かを悟る。

「私は事務系で、祐奈教官やみんなみたいにジャパロボに乗って一緒に戦うことはできない。だからみんなにはゆっくり休んでもらうためにも、ここは私が頑張らねば!」

 麻衣は必死になって仕事に取り組んだ。自分のできることをやることで、大切な仲間を助けられるならと。

「三重県代表、伊勢神宮ジャパロボ。パイロットが磯野美紀。」

「愛知県代表、鯱ジャパロボ。パイロットが松井咲。」

「岐阜県代表、白川郷ジャパロボ。パイロットが綾野智恵子。」

「静岡県代表、お茶ジャパロボ。パイロットが春風亭まさみ。」

「山梨県代表、富士山ジャパロボ。パイロットが田原真理子。」

「長野県代表、白馬ジャパロボ。パイロットが秋本りえ。」

「福井県代表、東尋坊ジャパロボ。パイロットが大和田愛。」

「石川県代表、兼六園ジャパロボ。パイロットが鹿賀こころ。」

「富山県代表、黒部ダムジャパロボ。パイロットが野際理恵。」

「新潟県代表、佐渡島ジャパロボ。パイロットが三田村れいか。」

「よし! できた! 一気にやることで時間を稼げたわ。宿題と一緒ね。アハッ!」

 麻衣は中国・北陸地方の10県を制覇した。これで制覇した都道府県の数が33。のこり14都道府県までに迫った。

「これで7、8、9で関東、東北、北海道をやれば完璧ね。」

 仕事が終わるメドがたった。

「これだけジャパロボ数とキャラクター数を作れば、オンラインゲームのガチャにも対応できるわ。今の法則にのっとれば、ジャパロボの機体もパイロットも無限に作れるから大丈夫! アハッ!」

 麻衣は課金ガチャの計算もしていた。まさに二手三手先を読む女。必死になって流した汗と血と涙の努力は裏切らない。

 つづく。


「よし! いくぞう!」

 麻衣は全国ジャパロボ大会の予選のデータ分析のラストスパートに入る。

「ヘイヘイホー!」

「おまえたちは悪の秘密結社か!?」

「ヒィー!」

 それはショッカーである。何をやっても飽きないチーム祐奈の面々であった。

「zzz・・・・・・もう食べれませんよ・・・・・・え? もう少しだけ・・・・・・すまんのう・・・・・・zzz。」

 もちろん祐奈は遂に寝言を言いながら寝続けている。

「よし! いくぞう! 関東ブロックだ! 東京都代表は5人? なんで東京都だけ本戦出場枠が多いのかしら? まあ、いいや。任務遂行あるのみ!」

 麻衣は細かいことは気にしない性格。

「風の精霊シルフィード・ジャパロボ。パイロットが広瀬さとみ。」

「火の精霊サラマンダー・ジャパロボ。パイロットが石原すず。」

「水の精霊ウンディーネ・ジャパロボ。パイロットが広瀬イリス。」

「自衛隊04改400%増・ジャパロボ。パイロットが竹内優子。」

「自衛隊04・ジャパロボ。パイロットが小池麻理子。」

 良く思えば全員、女子高生だ。戦う女子高生。全国ジャパロボ大会の出場資格は18才以下にしとこう。19才からは社会人だな。

「おっと!? いけない。何かを感じ取る前に関東ブロックを終わらせなければ!」

 もしかしたら麻衣も強い意志を持つ新人類で、ジャパロボのパイロット特製があるのかもしれない。決してニュータイプという言葉は使えない。強化人間は使っているんだけどね。アハッ!

「神奈川県代表、横浜ジャパロボ。パイロットが井上未来。」

「埼玉県代表、ダサいジャパロボ。パイロットが島崎陽菜。

「千葉県代表、ディズニージャパロボ。パイロットが長谷川久美子。」

「群馬県代表、前橋ジャパロボ。パイロットが篠原美幸。」

「栃木県代表、餃子ジャパロボ。パイロットが山口昌子。」

「茨城県代表、コキアジャパロボ。パイロットが渡辺博美。」

「よし! できた!」

 麻衣は関東7都道府県を終えて、40都道府県を制覇した。残すは7都道府県だけである。

「昔の大御所の方が名前が通っていて、最近の20、30代の若い芸能人って知名度が弱いのね。」

 メディアの多様化過ぎて、今の若手は名前が売れない。アイドルの数も多すぎるのかもしれない。

「昔、ゴジラが言っていたわ。バッターボックスで緊張するのは練習が足らないから。もっとバットを振るべしと。」

 麻衣は今まで逃げていたキャラクターの名前付け。芸能人の2人の名前を足して割るだけという作業だけでもっともらしいどこにでもいそうな名前になっている。

「これでアレルギーも克服ね! 千本ノックあるのみ! 打つべし! 打つべし!」

 麻衣は確かに成長していた。

 つづく。


「よし! いくぞう!」

 麻衣は東北ブロックに取り掛かる。

「・・・・・・。」

「あれ? ゾンビの声がしない。」

 しかしゾンビたちの掛け声が聞こえてこない。

「zzz。」

 騒いで疲れたゾンビたちは眠りについた。

「子供みたいに寝ちゃって・・・・・・。よし。あとひと踏ん張りするぞ。」

 麻衣はゾンビを起こさないように小さな声で気合を入れる。

「福島県代表、原発ジャパロボ。パイロットが伊東玲奈。」

「宮城県代表、伊達政宗ジャパロボ。パイロットが福原京香。」

「山形県代表、お米ジャパロボ。パイロットが新米掘子。」

「秋田県代表、なまはげジャパロボ。パイロットが渡部希。」

「岩手県代表、コロナ感染者が一番遅かったジャパロボ。パイロットが大谷エリカ。」

「青森県代表、りんごジャパロボ。パイロットが大間ケイ。」

「よし。できた。」

 麻衣は東北6都道府県を終え46都道府県を制覇した。残す都道府県は1つ。北海道だけである。

「ここまで長かった。誰も私の代わりにはやってくれない。いつも誰かが地道にやってくれていたんだ。今度は私がやる番だ。絶対に目標を達成するんだ。」

 ハートに最後の炎が燃え盛る麻衣であった。

「やはり東北や北陸、中国地方の日本海側とか東京に出てくることが中々難しいのね。まったくいないんだもの出身の芸能人が。」

 やはり大都会に近い県の方が出身者は多い。

「まさに、恨むんなら生まれの不幸を恨むがいいね。」

 芸能人になるのも大変。知名度をアップさせるのも大変。多くの人が売れもせず見えない所で悪い大人に遊ばれて消えていくのだろう。そんなこととは知らないで私たちは、そういう悪い人たちが作っているテレビ番組を見て笑っている。

「世知がない世の中ね。せめて私は私の手の届く範囲の人達ぐらいは守ってみせる。」

「zzz。」

 麻衣は寝ている祐奈と愉快なゾンビたちを見つめる。

「zzz・・・・・・もう食べれませんって・・・・・・これ以上は飲めませんって・・・・・・お客さん、お触りは禁止ですよ・・・・・・zzz。」

「祐奈教官は、いったいどんな夢を見ているんだ?」

 少し疑問を抱く麻衣。

「こんな人たちばかりだけど、みんなが私の仲間です。私は仲間のために自分ができることをやりたい。私はこれまでもやってきた。これからも私はやればできる子だ。おお。がんばるぞ。」

 麻衣は自身を鼓舞するのであった。

 つづく。


「よし! いくぞう!」

「へい! へい! ホー!」

 麻衣はいつの間に演歌歌手が大好きになっていた。ゾンビたちも合の手を入れる。

「それでは最後の都道府県! いってみよう! 生きることは戦いだ!」

 遂に最後の戦い麻衣は赴く。

「北海道代表、さっぽろ雪まつりジャパロボ。パイロットが北島泉。」

「お・・・・・・終わった。」

 麻衣は倒れ込む。

「私はやり遂げたんだ! うおおおおおおおー!」

 感極まった麻衣は叫ぶしかなかった。

「ふわ~あ・・・・・・よく寝た・・・・・・ジュルジュルジュル。」

 声が大きかったので祐奈が目覚めてしまった。

「やりましたよ! 祐奈教官! 全国ジャパロボ大会の予選のデータ解析ができました!」

「再びお休み・・・・・・zzz。」

 祐奈は二度寝した。

「そ、そんな!? 起きて下さいよ!?」

 麻衣が祐奈を揺さぶろうが100トン・サンマーで殴ろうが目覚めない。

(褒めてほしかったのにな。)

 イメージでは「よしよし」と頭を祐奈にナデナデしてもらってほくそ笑んでいる麻衣。

「祐奈教官の薄情者! こんなんだったら頑張らなかったのに!」

 機体の大きさに比例して激怒する麻衣。

「・・・・・・麻衣ちゃん・・・・・・よくできました・・・・・・zzz。」

 祐奈は寝言で麻衣を褒めた。

「うわ~い! 祐奈教官に褒められた!」

 心の底から麻衣は喜んだ。今までの苦労が報われた瞬間であった。

「zzz。」

 ただ祐奈は寝ているだけである。

「祐奈教官大好き! 自分はどこまでもお供します!」

 改めて忠誠を誓う麻衣であった。

「それにしても都道府県47アイドル物語構想もあったけど、47回キャラクターエピソードを創作するには47年はかかるわ。」

 途方も無い無謀な計画だった。

「よし。仕事も終わったしお家に帰ろう。」

 責任感の強い麻衣は自宅に帰ろうとする。

「祐奈教官には毛布をかけて。アハッ!」

 寝てしまった祐奈に毛布を掛けてあげる優しい麻衣。

「ゾンビたちには・・・・・・土をかけてあげましょう。」

 スコップで土を掘りゾンビたちにかけてあげる優しい麻衣。

「ゲホッ!? 生き埋めにする気か!?」

「あ、ゾンビが生き返った。」

 麻衣はゾンビたちを蘇生させた。

「みんな、帰るわよ。最後の人は電気を消してね。」

 一番に変える麻衣。

「あわわわわ!? 逃げろ!?」

「待ってよ!?」

 急いで帰るゾンビたち。

「あれ? 何か忘れてない?」

「忘れてないよ。」

「まあ、いいっか。」

 ゾンビの三人も帰って行った。

「zzz。」

 忘れ物は祐奈教官であった。

「今日もお母さんは帰りが遅いね?」

「また徹夜で麻雀でもやってるんじゃないの?」

「祐奈さんはお仕事が忙しいですからね。」

「お母さん、がんばってるな。帰ってきたら、さとみが褒めてあげよう。アハッ!」

 何も知らない祐奈の娘たちであった。

 つづく。

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