第2話 MISAKI の住人

「唯那ちゃん、今から学校?」

「あっはい」



岬 唯那(みさき ゆいな)16歳。高校一年生。



両親が『MISAKI』 として小さいアパートを経営している為、私は一人の住人として住んでいる。


だけど、大屋さんとして、私を通じて住人の意見など、もう一人の管理人として存在している。


そして、今、声をかけてきたのは、相沢 美里(あいざわ みさと)さん。28歳。


漫画家を目指して大阪から上京してきた。



「行ってらっしゃい!気ぃつけてな」

「はーい。美里さんも頑張って漫画書いて下さい」

「漫画…それがな……全然……って…早っ!」



私は足早に去った。




「美里さん、漫画の事となると話が止まんなくなるから…」






そして学校へ向かう途中―――




ストッ


私の前に人影。



ビクッ


「きゃあっ!」

「あっ!悪い!悪気はなくて」

「そこ立ち入り禁止区域じゃ」

「堅い事言わない、言わない。バレなきゃ大丈夫っしょ?」


「いやいや」

「ねえ、君いくつ?俺と同じ位?」

「ごめんなさい!話す暇なくて失礼します!」



私は足早に走り去った。




ポトッ

道路に落とした事に気付かず私は、そのまま走り去った。



「岬……唯那……16歳。俺と同級生じゃー

ん」





その日の放課後。



「ねえねえ、正門にカッコイイ人いるって!」

「嘘!」



騒々しい生徒達。


私は気にも止めず帰って行く。




すると ――――



「あーっ!みーっつけた!」




グイッと私の肩を抱き寄せる。



ビクッ


突然の事に驚く私。




「きゃあっ!」

「はい!落し物。岬 唯那さん」

「あ、学生証。ありがとうございます」




ドキン




≪わあ…カッコイイ…芸能人みたいなイケメン君≫



「ねえねえ、君、可愛い系だけど彼氏いるの?」

「い、いません!初対面のあなたに話す事でしょうか?」


「いや…多分…初対面じゃない気がする」

「えっ?新しいナンパですか?」

「ナンパ?俺、嫌い!」

「じゃあ、何?」

「ねえ、真冬の海に君と話をした事あるはずなんだけど?」


「真冬の海?」

「俺、病院抜け出してて、君、俺が自殺するんじゃないかって…思ったのかは知らないけど……」


「あっ!」

「今年の冬だったから」

「…あの時の…?」


「悠木 速渡君でーす!♪」




ドキン

彼は人懐っこい笑顔を向けた。




≪これだけ、カッコイイ人から…そんな笑顔向けられたら……≫



「ねえ、俺と友達になってくれない?」

「えっ!? 友達?」

「そう!俺、引っ越し多くて友達つくらないんだけど、君とはもっと仲良く出来たらと思って」

「それは構わないけど」

「マジで!? やったー!」


「だけど、どうして…私? もしかしてあなたの友達つくりのやり方なの?」

「違うよ」

「えっ?」

「君とは…2度目だから……でも……もしかすると……それ以前にも会った事あるような…ないような……」


「………………」




歩み寄る男の子。



スッと片頬に触れる。


ドキン……




「君とは…初めて逢った気がしないから…気になるんだ……」



ドキン


ニコッと微笑む男の子。



ドキン




≪わあ…何?≫




ドキン




私の胸はざわつく。



「改めて宜しくね!」

「う、うん…」




これだけ人懐っこい笑顔を見せたら誰とでもすぐに友達になれそうなんだけど……


私達は、色々話をしながら帰る事にした。

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