葵の太平洋戦記
島風
第1話珊瑚海海戦1
珊瑚海海戦、1942年5月上旬に発生した帝国日本海軍と連合国軍間に発生した海戦。この戦いの重要な点は、世界で初めて空母対空母の戦いが発生、日本軍は軽空母祥鳳の喪失、米空母レキシントン撃沈、空母ヨークタウンの損傷。結果は大型空母1隻を屠り、1隻に損害を与えた日本軍の戦術的勝利、日本軍の戦略的目標であるポートモレスビー攻略を断念させた連合国軍の戦略的勝利に終わった。
日本軍は太平洋戦争において米豪遮断作戦の一環として、ポートモレスビー攻略を目指し、珊瑚海に空母機動部隊MO機動部隊、ポートモレスビー攻略部隊MO攻略部隊を投入していた。
そして、珊瑚海沖のMO攻略部隊空母祥鳳艦上に僕はいた。
5月7日午前8時00頃、空母祥鳳、輸送船団10隻、重巡洋艦青葉、加古、衣笠、古鷹、駆逐艦漣からなるMO攻略部隊は危機に瀕していた。既に敵索敵機B17に発見され、敵空母群2乃至3の攻撃力に空母祥鳳の防空力ではとうてい立ち向かえない事は明白だった。その為、北西へ退避を始めていた。僕はダメ元で上申していた。
「艦長、直掩機の零戦4機だけでは無く僕達魔法兵小隊の出撃を許可ください!」
「不知火少尉、悪いが我らは貴様の戯言など信じておらん。魔法だ等信じられるか! ましてや女子供に守ってもらう等、帝国海軍の名折れだ!」
「しかし、敵アメリカ軍の正規空母艦載機がこちらに向かっている事は間違いないではないですか? 少しでも航空戦力を投入した方が!」
「黙れ青二才! 戦術に口をはさむ等10年早いわ!」
「いい加減にしろ! 何が魔法兵だ。そんな物が信じられるか!」
「では命令下さい。空をかける人を見れば信じて頂けるでしょう!」
「この馬鹿者! ひよっこは黙っておれ!」」
ガシっ
僕は上官の航海長に殴られた。誰も僕の言う事を信じない。珊瑚海に派遣される最中、零戦と魔法小隊の模擬戦を希望したが、多忙を理由にかなえられかった。模擬戦を見れば、彼らも信じた筈だ。魔法…この昭和の時代、この世界でそんな物が信じられる筈がない事はわかっていた。だが、目の前で見れば、わかってもらえた筈だ。
「自室に戻って、黙ってお祈りでもしていろ」
冷たい航海長の少佐の指示に従い、僕は渋々自室兼魔法小隊指令室に戻った。
「どうなの? クズ?」
自室に戻るや否やかけられた第一声がそれだった。いつものレイのドS発言である。
レイ、正式名称零式艦上戦闘機一一型。魔法使い、召喚士の僕の使い魔だ。しかし、使い魔というより美少女擬人化兵器と呼んだ方がいいだろうか。レイは見た目は清楚系の長い黒髪が似合うクールな女の子だ。歳は18歳。何故かブレザー風の制服を着ている。僕の好みなんだが、もちろん戦う時には翼や20mm機関砲などが出て来て、とてつもない威力を誇る戦闘機少女だ。ややM気味の僕には、この毒舌ぶりはほぼご褒美だ。何せよレイは凄い美少女なのだ。尊いとすら思っている。
「上申は却下された。出撃は未だない」
「全く無能ね。無能にはお仕置きが必要ね」
「ちょ、ちょっと、待って、止めて!」
僕はレイに突き飛ばされた。レイはいつも唐突に乱暴にするんだ。尻もちをついてしまい、座りこんだ僕にレイは迫ってくる。
「いや、止めて! ていうか僕、指揮官だよね? 上官だよ?」
「ちゃんと理解しているわ。その物欲しそうな顔……お仕置きを要求しているのよね?」
「いや、だから違うから!」
レイは椅子に座ると、靴を脱ぎ、僕の方にその綺麗な脚を突き出した。脚を組み、ハイソックスに包まれた片足を僕に向ける。レイの足の先がもぞもぞと動くたびに、僕にはいけない快感がゾクゾクっとやって来た。女の子の足を舐めるのだなんて……うっ! ご褒美が過ぎる!
「葵少尉。恥ずかしくないの? 今、どんな気持ちか大声で言ってみなさい!」
「レ、レイ。そ、それはちょっと……っ! 一応、僕指揮官!」
「言えないの? では、もっとやって欲しいとお願いしなさい。この変態糞豚野郎!」
「ちょ、ちょっと! あっ、あぁぁっああああ!」
「もっとやって欲しいと言いいなさい! もっと強くするわよ? こんなのどう?」
「うううううん! ぐ、ぐりぐりが強すぎる~! や、やめてぇぇ……!」
レイは足で僕の顔をぐりぐりして来た。
「ふふっ。ホントは止めて欲しくなんてないくせに、だらしないオスね。情けない声で懇願するなんて……恥ずかしすぎるわ、この糞豚野郎!」
レイはそう言うと、満足したのか、ようやくぐりぐり攻撃を止めてくれた。やっとご褒美を満喫、いや、止めてくれてホッとすると、今度は、
「きゃぴーん☆先輩ーい!」
「……んん?」
レイに虐められたばかりの僕に、更に後輩が僕を襲う。いや、後輩じゃないんだ。彼女はレイと同じ美少女擬人化兵器、キュウ、正式名称九九型艦上爆撃機一一型。やはり高校のブレザー風の制服に背は低めの茶髪のセミロングの後輩的存在。何故か僕を先輩と呼ぶ。
そして、きゅうは 僕の背中に飛びついてきた。
「へへへっへへ☆せぇんぱ~い♪」
「ばっ、馬鹿、いきなり背中に抱きつくな! こんな処見られたら!」
ホント、こんな処、軍隊の誰かに見られたら、体罰位じゃすまない。レイのも同じなんだが…
「せぇ~んぱ~い☆私、今ブラしてないですよ」
「な、何をするの? 何を言ってんの?」
いつも以上にこの後輩はウザいが、なんかいつもより攻めが激しい。少しご褒美でもあるが、背中に胸を押しつけてきて、無駄にでかい胸が鬱陶しい。きゅうの胸はかなり大きい。前に擬視したら、あふれんばかりのたわわなでっかいふたつの果実がこれでもかと存在をアピールしていた。これでやたらとウザくて、僕の事、馬鹿にしてなければむしろ恋に落ちてもいい位なのだが、こいつはひたすらウザく、僕を馬鹿にする。だから恋愛対象にはならない。
「ふふふ、先輩可愛い。先輩を凌辱しているみたいで興奮しちゃいます」
「凌辱ってそんな言葉、どこで覚えてきたんだ?」
「先輩のコレクションの中ですよ」
「―――――――~~~~ッ!!!!」
「先輩のベッドの一番下に何故かあんな物が☆」
ベッドの下に僕はおかずを隠していた。あれが見つかったのか?
「息が荒いわね。女の子に辱められて凄い興奮しているようね?」
「五月蠅いわ! 女の子がこんな破廉恥なことしちゃ駄目だよ!」
「でも、女子高生制服のわななき……私達をそんな目で見てただなんて……」
「お願いだから、エロ本のタイトル言わないで? 僕も慣れたからといっても何でもスルーできる程A☆フィールド強くないんだ」
レイがキュウに輪をかけて僕を責める。
「そう言いながら、私達を目で犯しているのね、熱い視線がねっとり絡みついて気持ち悪いわ」
「目でなんて犯してないわ!」
「じゃあ、妄想で何度も犯しているのね、気持ち悪い」
「だから、ホント、目でも妄想でも犯してないから!」
「嘘をつきなさい、本当に気持ち悪い豚ね。死んじゃえばいいのに……」
それは本当なんだ。流石に長い付き合いの高校生風の女の子のレイやキュウに20歳の僕がそんな気持ちを抱いてはいけないと必死に我慢しているんだ。
「状況は?」
三人目の声だ。ユキ、唯一のまともな僕の使い魔。駆逐艦雪風。彼女も美少女義人化兵器だ。
「状況は芳しくない、敵の索敵機に発見された。おそらく史実通りにこの軽空母に敵空母ヨークタウン、レキシントンの攻撃隊が集中する」
僕が真剣な顔で言うとようやくキュウが僕の背中から降りた。キュウをちらりと見ると、制服のシャツのボタンを3つ位外してたわわな生の果実がせり出していた。でかいな! ホント! それにしてもホントにノーブラだったとは思わなかった。道理でいつもより柔らかさが3倍位になっていた筈だ。キュウは後ろを向いて器用にブラを前で留めて、くるりと回してブラを付ける。男の目の前でやっていい事じゃないよね?
「最悪命令無視する?」
レイが僕に言う。それは僕も考えていた。このままでは軽空母祥鳳は沈む。沈む位なら例え命令違反でも……無駄死にするよりは、
「……もう一度上申してくる」
「もし、却下されても私は行くわよ」
「……私も」
「……」
三人共、このまま犬死するつもりは無い様だ。僕もだ。だが、最後の上申を行うつもりだ。
「行ってくる」
士官室から艦橋へのタラップを登り、艦橋へ上る。
「また、貴様か?」
「お前に出番等ないぞ」
「米軍機ごとき、この祥鳳の戦力と艦長の操鑑で耐えるわ」
「既に20機以上の爆撃を凌いだわ」
そうか、既にレキシントンの攻撃隊が来襲していたか?
「敵戦闘機接近!」
この時、歴史が変わった。いや、既に僕がこの世界に現れた事で間違いなく、歴史は変わった筈だ。だが、おそらく歴史は更に変わった。米軍の戦闘機は被弾しており、機銃掃射しながら祥鳳の艦橋を目指していた。体当たりする気だ。
ガガガガッガガガッガガガガ
「「「うぉおおおおおおおおおお」」」
狭い艦橋に銃弾が飛び回る。激しい爆発音が聞こえた。戦闘機は海上に激突したのだろう。気がつくと、周りは血まみれになっていた。僕は伝声菅で、衛生兵を慌てて呼んだ。そして、気がつくと、一人の青年士官が僕に敬礼し、こういった。
「不知火少尉殿、艦橋付きの士官は私達を除いて全員負傷しております」
「どういう事だ?」
「私も少尉ですが、先任はあなたです。あなたがこの空母祥鳳の指揮をとってください」
僕は茫然としてしまった。
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